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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第61回 Eさん

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動機?

 「舞い戻ってきた組」というのがあるのかわかりませんが、大学は社会福祉系の学部出身です。もともと勉強はできなくて、中学から高校の偏差値は40台前半。進学したいとは特に思っていないものの、高卒で就職するほどの気概もなく、親はといえば大学は出ていてほしいということで、自分でも入れるところとなると福祉関係の学部でした。学校名は控えます。そこは卒業するときに福祉士の資格が複数取れることを売りにしていて、親は大賛成でした。入学してみると、授業のカリキュラムも全体としてそのように組まれていて、周りの学生たちも福祉に興味があるというよりは、国家試験に出るか出ないかで自分にとっての重要度を測るようなムードがありました。社会福祉の思想などはもっぱら不人気で、私自身も「先生それは試験に出るんですか」と授業中に聞いたりしていました。おっと、一つ飛ばしました。入学試験はほとんど書けなかったので落ちたと思ったのですが、合格でした。大学全入時代を越えて定員割れ時代ですから、受験者にとっては試験前から大きなアドバンテージがあるということでしょう。

 順調に社会福祉士と精神保健福祉士の受験資格を手にし、2つの資格の現役合格を目論みましたが、結果はどちらも不合格でした。試験前の学内試験や模擬試験など一連の成績は悪く、それにしてもいやに難しい試験に感じられたのをおぼえています。しかし、就職については試験の前年に決まっていました。ちょっとしたコネがあり、卒業後は某住宅メーカーの営業職として働き始めました。ところが1年後にリフォームの部署に異動すると、そのほとんどが住宅新築後のクレーム対応で、来る日も来る日も謝り続けているうちに精神的にまいってしまいました。うつ病とかそういうのではなく、感情的な反発です。家が建ったらコンセントの位置が違っているとか、浴室に入っているジェットバスの種類が違うとか、そんなのばかりです。オレがやったわけじゃないのになんでこんなに言われなきゃなんないんだと、不条理を感じる気持ちが膨らみ、バカらしくなりました。転属希望は認められず、周囲の話を聞くと少なくとも2年はここで耐えないといけないとわかりました。2年耐える前に命が絶えるのはたもったもんじゃないと、ボーナス月を待って退職しました。

 さてどうしようと思って、すぐに考えついたのが社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得でした。リベンジです。どちらの試験もほとんど得点できなかった記憶が鮮明で、自信はもちろんのこと、資格取得への強い意思もありませんでしたが、資格を目指すと言えば、とりあえず実家に身を置けそうだったので、その間にじっくり身の振り方を考えればいいと思いました。すでに受験資格は持っているので、学校に入り直す必要もありません。会社を退職したのが就職2年目の12月だったため、翌年1月の受験申し込みは締め切られていましたが、そんな短期間の勉強で合格できるとも思えず、1年かけて学力をつけていけば期間的にもいい按配だろうと考えました。

たっぷりあったはずの時間、とっぷりと日は暮れる…

 ところが、肝心の試験勉強はまったくすることなく、始める気配も、そして微塵の焦りすらもないままに夏が過ぎ、秋も深まり、12月になりました。そもそも受かりたいとか、資格を取ってこういうところで働きたいとか、目的意識をほとんど持っていない人間がもともと好きでもない勉強に取り組むというのは至難のわざでした。この間に身の振り方を熟考するなんてのも、体のよい言い訳だったようで、そのことを最終段階に入りつつあるなかで自覚しました。

 私はこう考えました。正月が明けたらがんばろう。そう思って、正月三が日を最後の晩餐にたとえて、ドンチャンしました。実は参考書と問題集は持っていました。大学にいたときに、中央法規のワークブックや問題集2冊(過去問解説集、模擬問題集)、ポケット版の参考書(らくらく暗記マスター)など、資格が取れることを売りにする学校らしく、フルタイトルを案内され、こちらも揃えました。それらをしっかりやれば合格できるものと考え、今回も購入しました。受験申し込みの手続きを期限ぎりぎりに行ったときですから、9月か10月初旬です。資格の種類は、合格率が高い精神保健福祉士のほうにしました。不謹慎に聞こえるかもしれませんが、自分にとってはどちらの資格でなければいけないというのはなく、もし合格できたら、資格の条件で就職できる中から探そうと考えました。

まさかの「90点」!

 正月明けからついに勉強が始まりました。最初はワークブックから読み始めましたが、専門科目と共通科目の2冊が強烈に分厚く、こんなの読んでたら間に合わないよと、共通科目の1科目めの途中で断念しました。しかし、1つ意外だったのは、学生時代に勉強したような記憶が少し残っていたことです。

 ふいに、今問題を解いたら何問正解になるのだろうと試したくなり、過去問の最新試験を実際の試験時間で解いてみました。すると、驚いたことに90点取れていました。163点中90点。えっ、これってもう合格圏じゃないの? なんだか急に体の底のほうから力が湧いてくる感じがして、その前の年の試験を解いてみました。時間どおりに測って2回分を続けてというのは、すごく疲れるはずなのにそれは感じず、いつしか私は必死でした。今度は36点でした。まったくお話になりません。当たり前の結果、それなのに、そんなはずはないと思いました。だって、さっき初のトライで90点取れたじゃないか。よし、もう1回だと、さらに前の年の試験問題を解きました。ぶっ続けで3年分。食事もせず、夜中の2時を回りました。45点。今度もダメでした。でも、最初にやった最新試験では本当にズルもしないで90点取れた、取れたんだ。その事実は私の中の何かを揺るがしました。小学校から中学、高校、大学まで文字どおりの劣等生を生き、自分にできるわけないと、自覚はなくてもいつも心の底で確信していました。その自分が2年も勉強をしていないで、いきなり合格圏に届く得点を出した。もしかしたら、受かるのかもしれない。そう自分が思っている気持ちをこの瞬間に信じました。

朝から晩まで、同じ問題と真っ向勝負

 この出来事を経験したのが1月の5日か6日だったと思います。それから試験日までの約3週間かけて、私はこの3年分を全部163点にすることを目指して、何度も何度も何度も何度も、問題を解き続けました。繰り返すとマルかバツかは覚えてしまいますが、そんなの関係ありません。点数が上がれば、全問正解になれたら、私は合格圏をねらえる人間として試験を受ける資格があるはずだと思いました。何もしてこなかった自分を一瞬悔やみ、でもそのことはすぐに頭から消えました。そんな後悔にかまっているひまがなかったんだと思います。ある日、一所懸命にやっているとき、急に、同じように合格を目指してがんばっている人に申し訳ない気持ちになりました。なんて自分はバカだったんだろうと思いました。頭もバカだけど、その前に人間としてバカだと思いました。なぜ、急激にここまでの変化が自分の中に起こったのか、よくわかりません。あの「90点」がスイッチになって、自分が自分のことを少しだけ、でも本気で信じられたときに、今まで感じもしなかったことが感じられるようになった、そんな感じです。

わからなくたって可能性は高まる

 スタートから2週間を待たずに3年分すべて163点にできました。答えを正解にするだけなら、そこまでもかからないよと言われそうです。でもそのときの私は率直にうれしく、可能性みたいなものを感じていました。何回繰り返したかはおぼえていません。すべて実際の試験時間どおりに設定して、一から解くことをしました。

 解説は答え合わせのときに読みました。頭に入った程度は定かでなく、そこに書かれていることだけはできるだけおぼえておこうとよく読みました。最後までよくわからず、出題のされ方が変わったらもうわからないだろうと思うものもたくさんありました。でも、何もしない状態で90点をとれたことがいつも頭の中に立ち現れ、あの状態よりさらにやっただけ可能性は高まるのだと思うと落ち着き、読んでいてたとえわからなくてもあまり気になりませんでした。

間に合うからがんばる!

 試験がやってきました。手応えはよいのか悪いのかわからず、つまりはよくわかっていなかったということだと思いますが、2日目の共通科目が終わってから自己採点すると103点でした。試験を解いたときには、明確にわかってそれを選んだわけではなかったのに、結果として正解を手にしていた問題が多く、実力相応の得点だとは決して言えません。それでも、うれしさとやりきった感覚とがない交ぜになり、今まで経験したことのない幸せな気持ちになりました。誰に対して言えばいいのか、感謝の気持ちが湧いてきて、ありがとうと口にもしたと思います。

 その後、正式に合格の通知を受け、精神保健福祉士の登録もすぐに行いました。私は精神保健福祉士です。ただ、精神保健福祉士としては働いていません。合格発表の後、4月から別の会社で同じく営業職として勤め始めました。人にかかわる仕事が好きというときれいですが、好きというよりは得意といったほうが正確で、昔から人をうんと言わせるのが上手だったようです。またそういうときにやったあと思う気持ちも強かったと思います。

 この記事が公開されるのは1月ということですから、私が試験勉強を始めた時期と重なります。コツコツ勉強してきた人は現時点の成績が悪くても、同じ時期の私などよりずっと可能性はあります。今年はあきらめて来年だと思っている人も、いやいや案外わかりません。なにしろ私という実例があるんですから。

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