石橋先生の受験対策講座
忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。
- プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)
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介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。
第35回 生活支援技術(1) ~居住環境の整備など~
こんにちは。今回から、「介護」領域の中心的な科目である、「生活支援技術」について学んでいきましょう。
生活支援技術では、介護福祉職が、日々の現場経験の積み重ねにより習得し、筆記試験に際しても、実務者研修などで再確認する、身体介護技術などを机上で押さえます。学生の皆さんは、学校で演習したことなどを振り返りながら、整理していってください。
生活支援について
介護は、生活そのものの支援ということができます。生活を支援するにあたっては、ICF(本講座第18回参照)などの視点や、自立支援(本講座第5回参照)などの理念(方針)が大切であることを、ここまでの学習でとらえてきました。この科目で改めて、それらに関して出題されます。
生活支援にかかる事柄を、以下に追加しておきます。
- ○生活支援を行うときの視点として、利用者の生活歴を理解して行うことが大切である(第26回に出題。第31回の本科目と「介護の基本」では事例問題として出題。第30回の「人間関係とコミュニケーション」では、利用者との関係を構築するためのコミュニケーションの基本として、利用者の生活史を尊重することが適切と出題)。
- ○介護予防は、心身機能の維持や改善、環境調整などを通じて、できる限り要介護状態にならないように支援することを目的とする。介護予防では、生活習慣病(本講座第15回参照)の予防および廃用症候群の予防が重要である。
- ○廃用症候群とは、病気やけがによる安静を含め、長期間の臥床や不活発な生活により、全身または身体の局所に生じる機能低下をいう。具体的な症状に、起立性低血圧、関節拘縮、筋萎縮、肺炎、褥瘡、知的能力や意欲の低下などがある。廃用症候群による心身機能の低下が、生活機能の低下につながる(第24回、27回に「こころとからだのしくみ」で出題)。
- ○ICFにおける「活動」は、日々の生活において特別な努力をしないで実行している活動(している活動)と、リハビリなどの場で発揮できる能力(できる活動)に区別できる。利用者の生活を支援するにあたり、将来するようになる活動(する活動)を目標に設定し、その目標に向かって「している活動」と「できる活動」を進めていく、目標志向的活動向上のための働きかけが大切とされている。
- ○利用者の自立を支援し、介護者の負担を軽減するためには、必要に応じて福祉用具を活用する。活用の視点としては、生活動作の動線全体を検討し、福祉用具貸与・販売事業所の福祉用具専門相談員などの助言を得ながら、利用者・介護者・環境との適合を図る(第34回では、胸髄損傷の利用者が1人で浴槽に入るための福祉用具〔移乗台〕について、事例問題として出題)。
利用者一人ひとりの生活とその支援に関して、第27回では、生活時間は、その人独自のものがある、第28回では、信頼関係に基づいて支援する、と出題されました。本当にその通りですね。また、第29回では、生活習慣病の予防や、要介護度が高く、日中もベッド上で過ごしている利用者の廃用症候群の予防について、出題されました。
自立に向けた居住環境の整備
福祉用具とともに、住宅改修などによる住環境の整備も大切です。以下のような、高齢者に配慮した住環境整備などについて、テキストや過去問解説集などで習得してください。
- ○バリアフリーは、障壁をなくすことをいう。高齢になると、2~3cmの段差でもつまずきやすく、転倒、骨折、そして寝たきりになることが多いので、段差を解消することは重要である。最近は、ユニバーサルデザインといい、初めから障壁のない、誰もが利用しやすい環境を整えようという考え方が広まりつつある。ユニバーサルデザインの7原則の一つに、誰にでも使える大きさと広さが確保されていることがある(第32回に出題)。
- ○歩行可能な高齢者において転倒を防止するため、また、車いす利用者の移動をスムーズにするため、必要に応じて、出入口の扉は開き戸よりも引き戸のほうがよい。高齢者にとって安全で使いやすい扉の工夫として、引き戸の取っ手は棒型にすることが適切である。トイレにおいて、開き戸のままの場合、内開きのドアは、トイレ内で倒れた際に開かなくなるので、外開きが望まれる(第24回、33回に出題。第28回では浴室改修について出題)。
- ○片麻痺などで移乗や移動時に転倒の危険性が伴う利用者において、必要に応じて、歩行時のために横手すり、立ち座りのために縦手すりを設置する(第29回に出題。第26回では事例問題として出題)。
- ○転倒を防止するために、玄関や浴室の床面などを、すべりにくい床材に変えることがある。また、視覚の低下に配慮し、夜間の移動のために、足元灯を設置することもある。トイレは、就寝時の寝室よりも照明を明るくし、寝室はトイレに近い場所が望ましい(第27回、34回に出題)。
- ○高齢者が寝ている場合、照明は間接照明が望ましい。また、暖房器具による一酸化炭素中毒やカビ、ダニを防ぐための換気や、急激な温度変化を避けるため、室内全体の温度を一定に保ち、冷房は外気温との差を5~7度以内にすることを目安とする。ヒートショック予防としては、入浴時、浴室・脱衣室と居室との温度差を小さくし、必要に応じて、トイレに床置き式の小型のパネルヒーターを置くことが適切である。嗅覚の低下に配慮して、ガス調理器に替えて電磁調理器を用いることもある(第24回、28回、33回に出題)。
住宅改修において、段差の解消、開き戸から引き戸等への取り替え、手すりの設置、すべりにくい床材等への変更、和式便器から洋式便器等への取り替え、これらに付帯する工事(壁の下地補強など)が、介護保険制度の対象になります(第25回、27回に出題。第32回では事例的な問題として出題)。
第25回の本科目と「認知症の理解」では、高齢の認知症の人に配慮した住環境整備について、出題されました。第28回の「発達と老化の理解」では、めまいや立ちくらみが時々ある高齢者への介護福祉職の対応として、転んでもけがをしないように部屋の片づけを勧めることが適切、と出題されました。第29回では、効果的な換気や、屋内での転倒を防ぐための安全対策について、第30回では、パーキンソン病の高齢者の寝室環境について、出題されました。また、第30回では、介護老人福祉施設における居室の環境整備で留意すべき点として、利用者が使い慣れた家具を置くことが適切、と出題されました。第31回では、防火を意識した調理支援、歩行が可能な脊髄小脳変性症の高齢者の転倒予防に留意した環境整備、杖歩行している高齢者の寝室の環境整備について、出題されました。
第26回では、熱中症は屋内でも発生することが、出題されました。節約のため、自宅でエアコンの使用を控える利用者などには、受容、共感した上で、熱中症予防という点で、声をかけていきたいものです。
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