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石橋先生の受験対策講座

石橋 亮一(いしばし りょういち)

忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。

プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)

介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。

第16回 認知症の理解(1)~原因疾患別の認知症の特徴~

 こんにちは。暑さも厳しくなっています。利用者だけでなく、皆さん自身も、感染症とともに、熱中症などに気をつけながらお過ごしください。

 前回まで、「発達と老化の理解」を学習しました。今回から、「こころとからだのしくみ」領域の、「認知症の理解」という科目を学びましょう。

 2025(令和7)年には約700万人と推計されるほど(第32回に出題)、認知症高齢者が増えている今日、認知症の理解については、介護サービスの現場だけでなく、身近な暮らしの中でも重視されています。そうした状況を受けて、第24回国家試験(筆記試験)以降のカリキュラムでは、「認知症の理解」が独立した科目として設定されました。

 認知症を正しく理解し、利用者、そして家族の支援に役立たせていきたいですね。

認知症とその症状

 認知症は、「いったん正常に発達した知能が、何らかの理由で持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」をいいます。その症状である中核症状と行動・心理症状(BPSD)について、よく出題されますので、把握しておいてください。

  • 中核症状:多少の差はあるものの、認知症になると誰でも認められる障害をいい、記憶障害、見当識障害、判断力の低下、失行(洋服をうまく着られなくなるなど目的に沿った動作ができない状態)、失認、失語、実行機能障害(計画を立てて段取りをすることができない)、注意障害(周囲から物音が聞こえてくると、食事を中断したままになる)などに相当する(第24回、25回、27回、29回、31回、33回に出題。第26回、31回では見当識障害について事例的に出題)。
  • 行動・心理症状(BPSD):妄想や幻覚、興奮、徘徊、感情失禁(感情を抑えられない)、不眠(十分に眠ることができない)、昼夜逆転などをいい、介護者側の対応(ケアの方法)が適切ではないために起こることもある。どのような場面でみられるのか、日常の様子を十分に観察し、認知症の利用者の言動に対して、その理由や目的を検討するとともに、受容的な態度で接することが大切である(第25回、26回、27回、28回、32回に出題。第30回、34回では事例問題として出題。第34回の「こころとからだのしくみ」でも、もの盗られ妄想について事例問題として出題)。

 第31回では、加齢による物忘れと比べたときの、認知症による物忘れの特徴として、物忘れの自覚はないことが、出題されました。また、第30回の「こころとからだのしくみ」では、行動・心理症状の一つである夕暮れ症候群について、事例問題として出題されました。

原因疾患別の認知症の特徴

 認知症は、さまざまな疾患(病気)によって引き起こされます。認知症の介護は、原因疾患の特徴をふまえることが大切で、国家試験でも出題されますので押さえておきましょう。以下に、認知症全体の約8割を占める、アルツハイマー型認知症と血管性認知症について記します。両者については、例えば、アルツハイマー型認知症は女性に多く(有病率も男性より女性が高い)、血管性認知症は男性に多いなどの違いも、テキストで整理してください(第25回、33回に出題)。

  • アルツハイマー型認知症は、脳の大脳皮質の神経細胞が減少し、脳の萎縮が進行するアルツハイマー病によって起こる認知症をいう。記憶障害(同じことを何度も繰り返して言う、先ほどの出来事をすっかり忘れる、〔初期の段階では〕自分で片づけたことを忘れて誰かに盗られたと思い込み介護者に疑いをかける「もの盗られ妄想」など)、見当識障害(「時間→場所→人」の順で障害されていく)、失行、失認、失語のほか、思考と判断の障害(調理の手順がわからなくなるなど、物事を理解して適切な判断ができなくなる)などがみられる(第24回に出題)。
  • ○運動機能が保たれた状態で、本人の自覚症状がないまま、障害が全体的に、ゆっくりと確実に進行していく。軽度のアルツハイマー型認知症では、炊事の自立困難などがみられる。初期における認知機能障害の特徴として、エピソード記憶(特定の日時や場所と関連した個人的経験に関する記憶)が障害される。途中、徘徊や興奮などの症状が現れることもあり、平均8年くらい(3年程度から20年くらいまでと幅がある)で自発性が低下し、寝たきり状態となる末期に至る(第29回、30回に出題。第28回、33回では事例問題として出題)。
  • ○日本における認知症の原因のうち、アルツハイマー型認知症の次に多い疾患である血管性認知症は、脳出血やくも膜下出血、脳梗塞など脳血管疾患により、脳の神経細胞や組織が障害されることにより生じる認知症をいう。記憶障害や見当識障害などのほかに、感情失禁、抑うつ、意識障害の一種であるせん妄などの症状や、言語障害、知覚障害、片麻痺などの神経症状を伴うこともある。判断力は比較的保たれ、人格の変化も少ない(第31回、33回に出題。第28回では事例問題として出題)。
  • ○血管性認知症では初期の段階で、もの忘れやめまいなどの自覚症状があり、よくなったり悪くなったりしながら進行していく傾向がある。また、障害の現れ方にはむらがあり、「まだら認知症」とも呼ばれる(第25回、29回に出題)。

 第29回では、アルツハイマー型認知症の薬物療法や、軽度のアルツハイマー型認知症のもの盗られ妄想への対応に関する事例問題、第30回では、血管性認知症の危険因子(メタボリックシンドローム)や、認知症の人への基本的な関わり・日常生活上の支援について、第31回、34回では、軽度認知障害、第32回では、認知症の初期症状や、認知症の発症リスクを低減させる行動(集団での交流活動に参加する)、第34回では、行動・心理症状に対する抗精神病薬を用いた薬物療法でよくみられる副作用(誤嚥のリスクが高くなる)などついて、出題されました。また、第26回、34回では、リアリティ・オリエンテーション(日付や季節、天気、場所などの情報をふだんの会話の中で伝えて認識してもらう認知症ケア)、第28回では、認知症の人に豊かな情動をもたらすことが期待できる回想法について、出題されました。

 なお、上記にあるせん妄という症状は、薬剤や高熱によって引き起こされることもあり、認知症と比較した場合、日内変動を認めることが多いと、第25回、26回、27回、32回で出題されました。

 次回も引き続き、「認知症の理解」を学びましょう。


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