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受験対策講座

保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
※毎週火曜日更新!

第12回 「保育実習理論・造形」について

喜多﨑薫(きたざき かおる)
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ東京校非常勤講師、あさか保育人材養成学校講師

「保育実習理論・造形」を学ぶ意義(大切さ)

 保育士試験のための学習をしている方たちには、「美術が苦手です。」という方がけっこう多くいらっしゃって、造形表現に関わっている者としては残念でなりません。理由を伺うと「上手く描けないから」ということが理由のようです。
 私たち大人は、いつのころからか「美術=上手く描く」ことだと勘違いしてしまい、そのせいで他人の目を気にして「上手く描けない」ことが劣等感となり、子ども達の作品にも「優劣」の偏った見方をしてしまっています。
 「造形」を学ぶということは、保育に関わる大人がまずこの偏った「優劣」を忘れることが大切で、身の回りの自然や音や色などの様々な事象に興味を持ち、自分自身がどのように感じたかを「上手く描くこと」ではなく自分の感覚で素直に「表現」することの重要さに気づくことです。
 そして、子ども達に純粋な「造形表現」を促すためには、五感を刺激する画材や素材、表現したいと思う機会に触れさせることが重要です。美しい色彩の色画材、手触りの違いを楽しむ素材、光のきれいな風景など、身の回りには、子ども達の五感を刺激するものがたくさんあります。

 「表現」することの重要さを理解し五感の刺激を与える際、注意したいのが安全性です。
刃物などはもちろんですが、色のきれいな絵の具には、人体に有害な物質が含まれていることも多くありますし、食品を素材とした造形素材でもアレルギーの心配があることもあります。食事ではない場面でも手をなめてしまうことが起こりうる幼児期の子供達には、こうした有害物質や危険を含む造形素材の知識も必要になります。
 子ども達の自発的な表現には、ストレスを感じずに夢中になることが重要ですから、発育の状態に合わせた画材や技法、安全性を考慮した造形画材や環境を与えられる知識は、保育士にとってとても大切なことです。
 「保育実習理論・造形」では、子ども達に「表現」することの重要さや楽しさを安全で安心して夢中になれるための知識を身につけることです。




「保育実習理論・造形」の近年の出題傾向

 造形分野での出題傾向は概ね変化しておらず、(1)発達年齢と造形表現の特徴、(2)色彩の知識、(3)表現技法、(4)表現活動の材料、(5)形態と構成の理解となっており、中でも色彩、技法、材料については重要項目となっています。

(1)発達年齢と造形表現の特徴

 子どもの発達年齢によって現れる造形表現の違いや、特定の年齢にみられる造形表現について問われています。何歳といった細かい年齢は、個人差もありますのであまりこだわらず、4期の順序やそれぞれに対応した造形表現の名称、特徴を理解することが大切です。特に「図式期」は名称のついた表現が多いので、図と合わせて理解しておきましょう。

(2)色彩の知識

 表現には五感による刺激が互いに影響しあいますが、中でも視覚的な刺激は最も情報量が多く子どもの造形表現に影響を与えます。さらに形の認識以上にものの見え方に影響する色彩の基本的な知識として、三属性、三原色、色相環の理解を中心に、混色や対比、配色などの理解を深めましょう。




(3)表現技法

 目の前の事象を観察して描くのではなく、画材の触感や色の変化などの造形遊びは、子ども達に表現技法を通して美しさや楽しさを経験する機会となります。表現技法は、水性と油性、固形と液体などといった、画材の違いによる特性を活かしたものがとても多いので、(4)表現活動の材料と合わせて理解を深めておきましょう。さまざまな表現技法に対して、画材や造形素材の特性、制作の手

順などが求められます。

(4)表現活動の材料

 子ども達に純粋で楽しい造形表現の機会を与えるためには、画材や造形素材の特性としての多様性だけでなく、安心で安全な知識も必要となります。これまでの傾向では「パス、コンテ、パステル、クレヨン」などの描画材のみや、「洋紙と和紙」などの紙素材のみ、「粘土について」というように、ひとつの画材や造形素材についての出題となっていますが、「粘土」に関連して「土」を造形素材として活用する応用問題も出題されましたので、深い理解が求められています。

(5)形態と構成の理解

 立体造形では、「影絵」など角度によって見え方が変化することを楽しむものや、「ハンペルマン、やじろべえ、コマ」など動きを楽しむもの、「折り紙や積木」などのように形が変化するもの、組み合わせて変化を楽しむものなど様々な表現があります。こうした様々な造形表現の応用的問題として、形の変化や仕組みの理解や考察力が毎年求められています。

次回の試験に向けた対策、勉強の進め方

 造形の分野では、5つの項目についての基礎知識がもっとも重要ですが、実際の現場でもそうであるように、知識に基づいた複合的な応用力も求められ、保育士どうしが意見を出し合っている事例形式の出題も多くみられます。こうした事例形式の出題では、知識として学んだことだけではない事柄が含まれるので、実際に自分が保育士のひとりとしてその場の会話に参加しているつもりで、他の保育士の意見を読み解くと良いと思います。
 また、テキストを読み深めるだけでなく、絵の具を使って混色してみる、表現技法を試してみるなど、実際に制作が伴うと理解しやすくなります。
 立体造形の応用問題では、お菓子の箱を捨てる際にバラして展開図を見てみたり、身の回りのものを見慣れない角度から見てみたり、折り紙の折る前と後の形や関係を気にしてみるなど、日常的な観察も有効です。