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受験対策講座

保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
※毎週火曜日更新!

第3回 「教育原理」科目について

藤井秀一(ふじい ひでかず)
近未来教育変革研究所・所長。元私立高校国語科教諭。国家資格キャリアコンサルタント。
認定エグゼクティブ・コーチ。教員研修・PTA研修・学校改革支援などを手掛ける教育アドバイザー。国際ブリッジ学院・校長。

「教育原理」を学ぶ意義

 日本では明治時代から国民皆学を目標として教育施策が組まれてきました。国家・国民の未来が子どもたちの長期的成長によってその方向性を変えていくためです。いわば子どもたちは我が国の未来を左右する大切な人材なのです。
 人としてどのように成長してもらえるか、その基盤は乳幼児期にあります。園での生活を通して「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域を育むことは、将来の社会人としての素養を培う大切な基盤づくりというわけです。
 子どもたちはさまざまな可能性を秘めており、これを引き出し、将来において自発的に活用・応用してもらえるようにしていくことが教育の役割です。
 子どもたちが将来、健康に、安全に、自分らしく、それぞれの持ち味を発揮して、生き生きと生活できるようになるための大切な基盤づくりを皆様が担うこととなります。




「教育原理」の近年の出題傾向

 近年の傾向としては教育政策や現代的教育問題などに関する出題が多く見られ、教育へのアンテナを立てているかどうかが大切な要素となっています。
 大別すると下記の6分野からの出題がまんべんなく見られます。

  • (1)教育の理念、目的と実践
    主に「教育基本法」と「学校教育法」からの出題が多くなります。両者の制定目的の違いをしっかり理解してください。いずれも教育の機会均等や義務教育のあり方に関して「日本国憲法」の精神を引き継いで条文が構成されています。
    「教育基本法」では教育の目的を「人格の完成」とし、精神的に独立した社会人(自立と自律)へと育てていくことを重視しています。このポイントを押さえつつ、幼児期の教育に関する条文を中心に理解を深めましょう。
    「学校教育法」については法改正された内容に関わる出題が多く見られます。
  • (2)「幼稚園教育要領」と幼稚園の学校評価
    「保育所保育指針」とも関連性が高い資料であり、全文を通読しておきたい資料です。5領域に関する出題は当然のごとく頻度が高くなりますが、平成29年に大幅な改訂があり、その改訂された内容に関する理解を求める出題があります。
    特に「第1章 総則」は現代の教育的な諸問題を踏まえた改訂が多く見られ、中でも「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」や「指導計画の作成と幼児理解に基づいた評価」、「特別な配慮を必要とする幼児への指導」は十分な理解を求められることとなるでしょう。
    前文は「教育基本法」との関連性が解説されています。「日本国憲法」や「教育基本法」と同じ語句が複数使われており、こうした語句の意図を理解することは必須です。
  • (3)国内外の人物に見る教育の思想と理論
    出題の傾向は大きく分けて<西洋の人物>と<日本の人物>との2分野となっています。
    西洋の人物については、ソクラテスなど古い時代からラングランなど近代の人物までまんべんなく出題されています。
    日本の人物については主に江戸時代から明治時代にかけての出題が多く見られる傾向にあります。ただ、聖徳太子や空海など、古い時代の人物が出題されることもあります。
    出題の仕方としては、【人物・著作-関連思想・理論-関連施設名】を問うものが多いので、見やすく簡便な表を作成するなど工夫してください。
    過去問題を一覧すると、特定の人物が何度も出てくることがわかります。こうした人物を中心に表を作ったり、単語カードを使ったりして繰り返し確認することで正解率を高めることが容易になります。
  • (4)子どもの権利ならびに保護
    第2次世界大戦では多くの子どもたちの人権が軽視され、その反省を基に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が設立されました。「ユネスコ憲章」の前文は国際的な子どもの権利保護の基本となっています。
    出題が多くみられるのは「世界人権宣言」や「児童憲章」、「児童の権利に関する条約」です。それぞれの違いを明確に理解してください。
    なお、日本政府がとらえている子どもの権利の問題点を大まかに理解するには、次の資料の「はじめに」を一読してみてください。
    -文部科学省「人権教育の指導方法等の在り方について [第一次とりまとめ] 」
    (平成16年/文部科学省のホームページで閲覧できます)
  • (5)日本の教育行政・教育制度
    平成30年度から令和4年度までは「第3期教育振興基本計画」によって教育行政が推進されており、新しいテーマへの取り組みも目立ちます。
    保育士国家試験の傾向としては、近代教育の開始期(明治時代)の政策と、第2次世界大戦後の教育制度から多く出題されています。
    戦前では「学制」と「教育令」などの教育政策にかかわった人物などが、戦後では「日本国憲法」と「教育基本法」との関連性、「学校教育法」と「幼稚園教育要領」との関連性、義務教育の運用に関する問題などが出されています。
    中央教育審議会の答申からの出題も多く、法改正に関係した答申は特に出題頻度が高くなります。文部科学省のホームページで幼児教育につながる答申をチェックしておきましょう。
  • (6)現代の教育問題と教育の機会均等
    皆様も報道等で耳にされている通り、教育の周辺ではさまざまな問題が発生しています。子どもの権利の保護を妨げる事案も多く、深刻な社会問題の一つともなっています。
    保育士国家試験では特にいじめと体罰に関する法令や施策を問う問題が多く出題されています。
    教育の機会均等の面からは生涯学習と特別支援に関する出題が多く見られますので、関連する法令と法改正については必ず学習を深めてください。
    そのほかのキーワードとしては「ESD」・「SDGs」・「生きる力」などが要注意です。
    インターネットで「文部科学省-教育-幼児教育・家庭教育-幼児教育の振興」のページを閲覧しておくことをおすすめいたします。

「教育原理」の受験対策、勉強の進め方

  • (1)テキストの選び方
    「教育原理」では法改正に関する問題が多く出題されますので、それを反映した最新のテキストを使用しましょう。
  • (2)学習の工夫
    暗記問題が多くなっています。先述の通り作表や単語カードの活用などで記憶効率を高めましょう。特に人物についてはまぎらわしい事項が多く、正確に識別できるようになることが大切です。
  • (3)学習の流れ
    テキストで概要をつかみ、一問一答集で記憶の定着を図りましょう。あれこれと教材を買い替えるのではなく、一冊を使い込むことが理解促進・記憶定着のポイントです。
    過去問題に多く取り組み、試験によく出てくる人物、書籍、法令の条文などを見極めておきましょう。試験の直前になって新しい教材を買い足すなどの行動は避けましょう。