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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

種をまく人を募集しませんか

 厚生労働省の「高齢者虐待法に基づく対応状況等に関する調査結果」によると、虐待者の続柄のトップ3は、平成18年以来ずっと「息子、夫、娘」です。

 そして、「虐待者は、心理的や経済的に被虐待者に依存していることが多い」と指摘されてきました。言わば、子どもの老親への「パラサイト」は、虐待発生の大きなリスク要因だと考えられてきたわけです。

 読売新聞朝刊(7月10日)『日本2020団塊の世代「子が年金パラサイト」』では、35歳から44歳で親と同居する未婚者のうち、65万人ほどは自立がままならず、多くは親の年金に依存する「年金パラサイト」とみられるそうなので、つくづく「虐待は、社会問題の最先端を写す鏡」だという気がします。

 何はともあれ、解決策を考えないといけません。

 そこで、注目したいのは、介護分野での人手不足です。2025年までには、あと100万人の増強が必要だと推計されていますから、ことは深刻です。

 私の知人である管理職や経営者も、異口同音に人手不足を嘆きます。「募集をかけても人は集まらないし離職率も高い」というのです。

 介護を専攻する学生ですら、相当数は異業種への就職を希望する、と言われるくらいですから、さもありなん、です。

 そのため、外国人や高齢者の雇用など、アイデアはいろいろ出されています。しかし、スンナリとはいきません。

 外国人のついては、日本語習得や厳格な在留条件など、高齢者の場合は、心身機能の低下への配慮と豊富な経験を活かすことのトレード・オフ、年下の上司や先輩との良好な関係の構築など、課題は少なくないからです。

 そこで、冒頭にご紹介した「自立のままならない65万人」にも、介護従事者を目指してほしいと、期待せずにはおられません。

 むろん、教育や支援の必要性は、高齢者や外国人の場合と同じ、あるいはそれ以上かもしれません。かかる労力や時間やお金は、経営を圧迫するので、まさに難題なのでしょうが、クリアすることで得られるメリットは、極めて大きいと考えます。

 というのも、介護の人手不足の背景にあるのは、要介護者の絶対数の増加だけではなく、多くの事業者は、目先の効率を優先するあまり、人を使い捨てにする傾向があるからだ、と思うからです。

 つまり、非正規雇用化が進み、待遇に恵まれないなら、介護職に魅力を感じなくて当然だが、「自分も活かして貰える」なら、それはとても魅力的なことだろう、というわけです。

 そして、教育や支援の関しても、ノウハウは養護者支援のなかで蓄積されてきていますので、ゼロから考える必要はありません。年金パラサイトはむろん、外国人や高齢者や障がい者は、いずれも虐待者として名を連ねているからです。

 何より、こうした多彩な人材は、必ずや「専門バカの集団」に陥りやすい介護現場に、改善や改革の種を蒔いてくれると思いますので、一件でも多く雇用が成立することを願ってやみません。

ジャン=フランソワ・ミレー「種をまく人」1850年