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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、昭和女子大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

少女よ、大志を抱け!

 私の大学での講義を聴講している留学生がいます。大学院生の彼女は、高齢者の介護サービスに従事する人々の養成に関心があるそうですが、とても熱心に学んでいます。私への数多くの質問がそれを物語っており、教科書や配布資料、ノートには何やらビッシリ書き込みがしてあり、思わず敬意を評したくなります。

 彼女によれば、母国の中国では、介護問題が顕在化しつつあり将来に備え介護体制を整える必要があるのだ、といいます。そこで、私も少し調べてみたのですが、かなりビックリしました。

 中国は2013年に65歳以上人口が2億200万人となり、総人口の14.8%を占めるまでに至っています。高齢者人口はとうに日本の総人口を超えているではありませんか!しかも、高齢化率は2025年から2040年に最も急激に進み、30年代半ばには3億人、2050年に3億7,000万人を超える見通しだそうで、中国の高齢者人口が米国の総人口を超えるのはもはや時間の問題です。

 これに対し中国政府は「9073」という目標を掲げています。高齢者ケアの場や担い手として、90%は家族で、7%は社区(日本でいう「地域コミュニティー」)で、3%は施設で、という意味ですが、日本でも「6割は家族、3割は在宅サービス、1割は施設」などと言われることがありますから、同じような発想なのかもしれません。

 もっとも、こうした中国の状況を示す驚くような数字以上に、20代で国の将来を思い、留学までして学ぼうとする行動力には胸を打たれますし、「お前だって、もっと主体的に物事に取組めるはずだ。頑張れ!」と、励まされているような気もしてきます。

 というのも、留学生の彼女のような人材は、日本の10倍ほどの総人口を持つ中国なら、相当数いるでしょうから、一見困難そうな課題であろうと必ず光明は見出していくだろう、と思えるからです。

 人間にとって先行きの見えないことはいかにも耐え難いものですが、先行きの明るさは大いなる力づけとなり、やる気は百倍です。この意味で、留学等による学問や科学技術の交流だけではなく、観光客と接することも触発を受ける絶好の機会になりはしないでしょうか。

 わが国の政府は、2020年には4,000万人の外国人観光客が訪れるようにするという目標を立てています。経済効果を狙う部分が大きいとは思いますが、わが国にとって実は、私たちが期せずして外国人から触発を受けることの方が、ずっと役に立つことなのかもしれません。何故なら、私たちが、いかなる困難をも乗り越えて何かを成し遂げる「大志」を抱くきっかけになるからです。

 大志を抱かない人しかいないのでは、国の行く末を憂えることになりそうですから、一億総活躍社会にあやかり、クラーク博士が札幌農学校の教え子に贈った言葉「少年よ、大志を抱け」に、「少女よ、大志を抱け!」を加えて、今回の記事を締めくくります。

姉「みんな、名前は『大志』だよ!」
弟「どうせ、そんなオチだと思った」