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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

著書

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著(中央法規出版)

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)

第157回 まさかの道徳教育???~補助犬教育から見えてきた驚きの実態!~

 以前、このブログで、うちの子たちが補助犬たちから学ぶ多くのことをご紹介しました。(第87回「最もシンプルで、最も大切なこと?」)  その【補助犬】を通した教育の現場で、大変ショックなことがありましたので、皆さんと一緒にぜひとも考えていきたいと思います!

補助犬たちは、大切な事をたくさん教えてくれます・・・

 先日、小学校3年生になる娘の学校の担任の先生からお電話がありました。相変わらず、携帯に「○○小学校」「○○保育園」の文字が出ると、即座に「お熱? お迎え行かなきゃ!」と条件反射し(ワーキングママあるあるですね…苦笑)、焦りながら電話に出ると・・・

 先生「今度の授業参観で盲導犬のお話をするのですが、ぜひともお母さんにお話いただければ…」と、うれしいお言葉♪ 先生は、私が補助犬関係の仕事をしていることを、娘から聞いて知っていてくださった模様。
 私「ぜひ、お話させていただきます。ちなみに何分くらいでしょうか?」
 先生「授業の最後に5分くらいで・・・」
 私「(5分ですか…5分で何がしゃべれるかな?…汗)了解しました。準備して行きます。」

 と、その電話は終了。そして、前日に娘が先生からプリントを預かって来ました。
 それは、道徳授業の【教師用指導書】の該当ページでした。
 そこには、盲導犬のパピーボランティアをしている子どもが語る内容がありました。

 1年前、駅前で、白い杖をついていたおばあさんが、柱にぶつかっていました。そしてその後も、自転車、かべ、人と、あちこちにぶつかって、とてもいたそうで、なかなか前に進めません。

 なかなか、出だしから衝撃的でした。私は今まで、そんなに大変そうな視覚障害者は見かけたことがありません。白杖をついていながら、そんなにぶつかってしまうのは、完全に白杖歩行の訓練ができていない。これは大変なことだ! と違和感を感じながら、読み進めていくと・・・

 盲導犬になるには、つらく、たいへんな訓練を受けなくてはなりません。その訓練をがまんできるのは、小さいときに、ふつうの家庭であいじょういっぱいに育てられた犬じゃないと、いけないそうです。

 あ~、出ました。「盲導犬あるある」です。一昔、いや二昔前くらい昔、このように「厳しい訓練」という時代が、実際にあったこともあるようですが、今では、世界的に見て『犬の訓練』自体がほめてしつける訓練が常識的になっているので、今となっては化石のような話です。が、教科書に載っている…(涙)

 そして、パピーウォーカーをやろうかどうしようか? 主人公が葛藤する場面となります。
 そして、最後のまとめのところで、愕然とする記述が出てきます・・・

 「だれかが、がまんをしなければ、こまっている人は、ずっとつらいままなんだ。」

 私は、授業が始まる前の10分休みに、先生のところへ行きました。まだ先生になって2年目の初々しい女性の先生に、「今から衝撃的なことを言います。授業参観のためにご準備をしっかりして来られたと思いますが、申し訳ありません。このプリントに赤線を引いて来ました。この部分は読まないで進めていただけますか? 今どき、インクルーシブ教育で、『サポートされた人も、サポートした人もHappy』になる方法を考えよう! と指導する時代ですのに、「誰かが我慢をしなくては…」なんて、教えてはいけません! あとは、何とか私の方でフォローしますので!」と、伝えました。かわいそうに、先生はちょっとビックリしながらも、「わかりました。なんとかやってみます!」と頑張ってくださいました。

 ということで、授業の最後に、【補助犬】のお話をさせていただきました。「3種の働く犬たちがいる」こと。それぞれ、「障害のある方々にとって、とても大切なパートナーである」こと。そして、「僕達、私達にもできることがある」ということ。「何かお手伝いしましょうか?」の一言をかけられるようになってほしいこと! を伝えました。

 みんな熱心に聞き入ってくれ、途中、質問もあり、とても充実した時間になりました。
 先生からは「私の授業よりも熱心に子ども達が聞き入っていました。ありがとうございます!」そして、うれしかったのが、後ろで見ておられた保護者の方数名から「とてもわかりやすかった。親も勉強になった♪」と有難いお声がけをいただき、一安心でした・・・

 とはいえ、これが道徳教育の現状か~と、パンチを喰らった気分でした。うちの子のクラスは、たまたま防げたけれど、このような教育が全国で展開しているのかと思うと・・・どんなに障害者理解を進めるための発信を頑張ろうとも、さまざまな社会課題を知ってもらい、解決に向けて動き出せる社会づくりに力を尽くそうとも・・・小学校の教育現場で、この内容が教えられているのであれば、いつまでたっても変わりようがない! と思いました。まずは、出版社さんにお伝えするところから・・・です。出版者の方も、もちろん悪気があるわけではないので、「内容が古いですよ」「誤った解釈になっていますよ」ということを、お伝えする必要があると思います。1歩ずつですね・・・

 現在、文部科学省では、道徳教育の抜本的改善・充実という目標を掲げて、「特別の教科道徳」の設置を中心とする道徳教育改革に取り組んでいます。この改革に、真に正しい情報が組み込まれるよう、当会からもさまざまな発信は続けたいと思っております。

 さて、帰宅後、娘からは「5分って言われてたのに、10分だったじゃん!」と叱られちゃいましたが・・・(苦笑)ま、おおむね好評だったということで、良しとしましょう♪
 来月、都内の小学校で【補助犬授業】実施予定ですので、新しいプログラムを練って、また頑張ります!

補助犬イベントのお知らせ

http://www.jsdrc.jp/event/20161203_yokohama_koro_ev/

  • 日時:2016年12月3日(土) (1)11:30~12:30/(2)14:00~15:00
  • 会場:ららぽーと横浜 サウスコート1階 カリヨン広場(横浜市都筑区池辺町4035-1)
  • 主催:厚生労働省
  • 企画運営:NPO法人日本補助犬情報センター
  • 協力団体:(公財)日本盲導犬協会、(社福)日本介助犬協会、(一社)日本聴導犬推進協会
  • 内容:補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)デモンストレーション、補助犬ユーザーのトークショー
  • 備考:一般参加可、入場無料、手話通訳あり
  • ※ 3種の犬たちのお仕事とユーザーさんのお話が聞ける、貴重なチャンスです!
    皆さんの応援が、補助犬ユーザーさん&補助犬達の大きな力になります♪ ぜひ、遊びに来てください♪ 補助犬たちと待ってます♪♪♪

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
 皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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