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今月のおはよう21

おはよう21

介護専門職の総合情報誌『おはよう21』最新号の内容をご紹介します。

【人気御礼!特別公開】 読者参加型連載 おはトーク!「排泄ケア大好き介護職」

 『おはよう21』の読者から参加を募り、介護にまつわるテーマで語り合ってもらう読者参加型連載「おはトーク!」。今回は、そのなかでも読者から反響を読んだ「排泄ケア大好き介護職」をテーマとした回を特別公開いたします。(『おはよう21』2022年8月号より)

 「排泄ケア」という一般にはネガティブに捉えられがちな行為を、「大好き」ということは変わっていると思われるかもしれません。
 しかし、介護職の考え方や実践によって、その行為がポジティブなものに変わっていく様。そして、それが利用者の生活を豊かにしている様子が伝わります。参加者の方々のプロフェッショナルな仕事の流儀をより多くの方に読んでもらえれば幸いです。


参加者
成澤摩耶さん
特別養護老人ホーム 元気の家

西山 誠さん
グループホームひかり 新横浜新羽

野口文子さん
特別養護老人ホーム 花畑あすか苑

藤本典記さん
特別養護老人ホーム 多摩済生園

山口裕之さん
介護老人福祉施設 長生園

ファシリテーター
中浜崇之
株式会社Salud代表取締役
介護ラボしゅう代表

今回のトークテーマ
排泄ケア大好き介護職

 利用者が快適な生活を送るうえで、必要不可欠な排泄ケア。今回は、そんな排泄ケアが「大好き」という方々にその魅力などを語っていただきます。

排泄ケアのここが面白い!

 本日は、介護職のなかにも苦手だと考えている人が多い「排泄ケア」をテーマに、皆さんにお話を聞いていきます。さっそくですが、皆さんが考える排泄ケアの魅力を教えてください。

 排泄というと、一般的には「汚い」などのマイナスイメージをもつ方が多いと思います。しかし、介護職や看護職は、利用者様が排泄した際に、「よし、出た!」と喜ぶことができます。一般の方と違い、プラスイメージに捉えられるところが排泄ケアの面白さだと思います。

 面白いですね。山口さんも最初は排泄ケアにマイナスイメージがあったかと思うのですが、そのような考えに至るきっかけがあったのですか?

 介護を始めたての頃、認知症で介護拒否のある利用者様の排泄ケアをさせていただいたことがありました。そのとき、ふだん見せないような満面の笑みで「ありがとう」と喜んでくれたのがきっかけですね。それで、排泄ケアの面白さに気づきました。

 私も初めから興味があったわけではないのですが、施設内の勉強会で排泄の基礎知識やケアの方法などを学んだことが、魅力を知るきっかけになりました。それまでは排泄に関係あるのは、トイレでの姿勢や食べ物ぐらいだと思っていたのですが、勉強していくうちに、ストレスや天候、薬、心理状態など、さまざまなものが影響することがわかり、そこに面白さを感じました。
 また、先輩から教わった「排泄はすべての人の共通言語」という言葉が印象に残っています。利用者も職員も、身体で便をつくって出すという行為は同じなんだということに気づかされました。それ以降、自分の排泄に関する経験も基にしながら、利用者さんとコミュニケーションをとるようにしています。

 私も最初は積極的に排泄ケアがしたいとまでは思っていなかったのですが、経験を重ねてケアが上達していくうちに、利用者さんから「ありがとう」と言ってもらえることが多くなりました。それから、「この人たちのために排泄ケアを頑張りたい」という気持ちが強くなり、だんだん好きになりました。

 私たちが提供する排泄ケアの良し悪しによって、利用者様の生活の質は変わってしまいます。そのことに責任とやりがいを感じます。
 たとえば、おむつ交換の方法やタイミングは、利用者様がその後気持ちよく過ごせるかどうかに影響します。もしうまくケアができていなければ、皮膚トラブルや褥瘡が生じて、体調が悪化するばかりでなく、他者とのかかわりの減少にもつながってしまいます。排泄ケアは、生活の質に密接にかかわるとても重要なケアだと感じています。

 しばらく便が出ていない利用者がいると、すぐに下剤の処方を考える人もいるかもしれません。しかし、私たちは自然に便が出るように介護職側で何ができるかを看護師と相談しています。そして、食事・水分・活動量などを意識し、利用者にかかわることで排泄リズムが整うと嬉しく思います。
 また、それによって生活そのもののリズムも整うという点に排泄ケアの面白さを感じます。

やってしまった排泄ケアの失敗談

 皆さんがこれまで経験した排泄ケアの失敗談を教えてください。

 私の施設では、夜勤時の仕事として便秘に効果のあるセンナ茶をティーバッグでつくっています。私がティーバッグをお湯につけていたとき、ナースコールが鳴ったので、利用者への対応に向かいました。帰ってきてセンナ茶を見ると、いつもより少し色が濃かったような気がしましたが、時間になったのでそのまま勤務を終えました。休み明けに出勤すると「少し濃いのをつくった?」と同僚に言われ、何のことかと聞くと、複数の利用者がいつもの回数より多く排便したとのことでした。センナ茶の効果に驚きましたが、その後、施設では適切な濃さのセンナ茶のつくり方がガイドラインで示されるようになりました。

 前の職場でのことですが、1回の尿量が多い利用者さんがいて、パッドと大容量の紙おむつを着用していました。あるとき、尿が漏れておむつやパジャマ、マットまで濡れてしまったのですが、なぜかパッドだけが濡れていませんでした。不快にさせてしまった申し訳なさとともに、なぜパッドだけが濡れなかったのかという謎が残りました。

 同期職員の夜勤明けでのエピソードです。夕方からの勤務で朝方には眠気と疲れでフラフラのなか、朝は利用者の〝排泄ケアのラッシュ〟となる時間帯です。利用者をトイレに誘導して便器の前に立ってもらい、ズボンを下ろすということを何回も繰り返しました。その後、利用者さんが自室に戻りベッドに移るために、立ってもらったとき、条件反射的にズボンを下ろしてしまったそうです。利用者さんにはすぐ謝り、許してもらえたそうですが。

 排泄ケアについて勉強する前は、便が3日間出ないと、下剤か摘便が必要だと考えていました。けれど、勉強をしていくうちに、たとえ3日間出ていなくても、形や性質が適正な便が出れば、本人にとっては気持ちのよい排便であり便秘ではないのだと知り、ハッとしました。
 それまでは便が出ない期間だけを気にして、どんな便が出ているか、出すときに苦痛があるのかという視点をもっていませんでした。数字だけをもとに下剤が必要だと判断してしまったことを反省しました。

 今売られている尿取りパッドは片面に柄があったりと、裏表がわかりやすくなっていますが、昔は両面白地のものが多かったんです。私が入職して1年目の〝排泄ラッシュ〟のとき、眠気もあり集中力が落ちているなか、一人ひとりの利用者にパッドを必死に当てていきました。しかし、勤務が終わって帰宅した直後に電話があり、「全部反対に当てているぞ」と先輩からお叱りの連絡がありました。その後、職場では両面白地のパッドが廃止になり、柄付きのものが導入されました。

私が排泄ケアで大切にしていること

 排泄ケアでは利用者に気持ちよく出してもらうことが重要だと思いますが、そのために大切にしていることは何でしょうか。

 排泄ケアそのものの前に、積極的にコミュニケーションをとり、何でも話してもらえるような信頼関係を築くことを大事にしています。
 以前、職員に対して心を開いてもらえなかった利用者さんがいたのですが、あるとき、「〇〇さん、私と同い年ぐらいですよね」と話しかけ、何気ない会話をしたことがきっかけで、何かと私を頼ってくれるようになりました。特に、排泄の際には私でなきゃダメとおっしゃってくださります。
 いかにふだんのコミュニケーションが大事で、信頼を得るために欠かせないことなのかがわかりました。

 私は羞恥心への配慮を大事にしています。排泄ケアは経験を積んで慣れていくほど、作業的になり利用者さんの気持ちを忘れがちです。トイレに誘う際に大声で言わず、周りの人に聞こえないよう耳元で言うなど、配慮をすることが大事だと思います。

 同感です。ただ、言葉だけ優しくしても、介助者が思っていることは自然と利用者さんに伝わってしまいます。だから、ケアをするときはたとえ忙しくても、「恥ずかしくないようできているか」など、真剣に相手のことを考えて接する必要があると思います。

 私は自分にされて嫌なことはなるべくしない」ことを考えています。職員都合になると、下痢でもいいから無理に出してもらおうなどと考えてしまいがちです。そうではなく、トイレで自然に排泄する、布パンツを使うなど、自分ならどうしたいかと考えることを続けていきたいです。

 その場で利用者様に「ありがとう」と言われて安心するのではなく、その後に落ち着いて過ごせているかまで気にかけることを大切にしています。

ファシリテーターの言葉

 座談会中も、皆さんお互いに学ぼうとする姿勢がみられ、排泄ケアをよりよくしたいという志が伝わりました。排泄ケアを掘り下げると、最終的にコミュニケーションの重要性にたどりついたことは、利用者主体である介護の本質を感じました。

 以上は、『おはよう21』2022年8月号の「介護の本音を語ろう おはトーク!」の内容です。TwitterFacebookにて、毎月中旬にテーマとともに参加者を募集しておりますので、介護について話したい、意見を聞いてみたいという方は、ぜひご参加ください。


『おはよう21 2022年9月号』
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