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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

介護や福祉の現場で働く人たちはもちろん、異業種で働く人たちのなかにも、福祉の世界で自分の想いを形にしたいと思っている人は、実はたくさんいます。そして、今、それを実現できるのが福祉の世界です。超高齢社会を迎え、これからますます必要とされるこの世界では、さまざまな発想や理想のもとに起業していく先達が大勢いるのです。そんな先達たちは、気持ちだけでも、経営だけでも成り立たたないこの世界で、どんな思いで、どんな方法で起業・トライしてきたのか、一か月にわたって話を聞いていきます。行政への対応や資金集めなど、知られざる苦労にも耳を傾けながら、理想を形にしてきた彼らの姿を追います。


●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃったら、
terada@chuohoki.co.jp
までご連絡ください。折り返し、連絡させていただきます。

花げし舎ロゴ

花げし舎ホームページ:
http://hanagesisha.jimdo.com/

プロフィール久田恵の主宰する編集プロダクション「花げし舎」チームが、各地で取材を進めていきます。
久田 恵(ひさだ めぐみ)

北海道室蘭市生まれ。1990年『フイリッピーナを愛した男たち』(文藝春秋)で、第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
著書に『ニッポン貧困最前線-ケースワーカーと呼ばれる人々』(文藝春秋・文庫)、『シクスティーズの日々』(朝日新聞社)など。現在、読売新聞「人生案内」の回答者、現在、産経新聞にてエッセイを連載中。

第52回④
介護タクシー ケアサポートドライブ代表 寺田貴裕さん
介護タクシーの認知度を上げ
たくさんの人に利用してもらいたい

介護タクシー ケアサポートドライブ代表
寺田貴裕さん
東京生まれ。会社員時代に、知り合いから介護タクシーの仕事の魅力を聞き、興味を持つ。その後、一念発起し、準備期間を経て、2022年に、介護タクシー ケアサポートドライブを起業。

 取材・文 石川未紀

―前回は、開業後のご経験を語っていただきました。

―今年起業したばかりですが、当面の目標などはありますか?

 前回もお話しした通り、今年度は、まずは、自分自身のスキル、経験値をあげていきたいと考えています。
 介護タクシーの仕事は需要が多いのに供給はまだまだ追い付いていません。また、介護タクシーという存在そのものが世間には広く認知されていません。認定患者等搬送事業者を有する介護タクシーのドライバーは、介護の面でもプロです。単に車いすごと乗れる、ストレッチャーごと乗れる車というだけではないのです。そういった面をもっと多くの人に知ってもらい、必要な人に届けたいと思っています。
 また、介護タクシーは、高齢者・障がい者の方だけでなく、傷病者・歩行困難者も利用できます。障がい者手帳や愛の手帳があれば、運賃から10パーセント割引で利用することができますし、各地域から提供されるタクシー券を利用することもできます。

―都内では車を持たない方も増えているので、需要はありそうですね。

 はい。多くの人にまずは、介護タクシーの存在を知っていただきたいですね。
 来年度以降は、これまでのスキルやノウハウを今後に広げていくべく、本格的に活動していこうと思っています。現在はHPからご依頼いただくこともありますが、もっと一般の方からアクセスしやすいようにしていきたいと考えています。
 これからも施設や病院などにも足を運んで、介護タクシーグループアイラスの認知度を上げ、どの様な方からも依頼を受けられるようなサービスを充実していきたいと思っています。
 多くの方にこうしたサービスがあること、またできる限りアクセスしやすい環境を作っていくことも使命の一つだと考えています。
 私自身は東京の城南地域、品川区、大田区、港区、目黒区、世田谷区あたりを中心に動いているのですが、小旅行や冠婚葬祭など、多様なニーズにこたえられるようにしていきたいです。

―介護タクシーの仕事を通して、感じられたことなどありますか?

 現在、介護タクシーを利用される方の多くは高齢者です。普段、高齢者と直接接する機会がなければ、体が少しずつ不自由になり動かなくなっていくという過程を知ることも、見ることもありません。私自身、この仕事をするまでは、ほとんど接する機会がありませんでした。しかし、当たり前のことですが、どんなに偉い人でも、著名な人でも、人は誰でも老いて、体が動かなくなっていきます。その過程をそっと寄り添いながら支えていく。うまく言えませんが、その時間は私にとって様々なことを考えさせてくれます。ご利用者の方からの感謝の言葉をいただくのは、もちろんうれしいのですが、人生の折り返し地点でこのような時間を共有させてもらっている、これは、私にとってもほんとうに貴重な、いい時間なんじゃないかなと感じています。
 起業した当初、不安を感じていた家族も今はよかったねと言ってくれています。まだ、始まったばかりですが、たくさんの気づきがありました。これを今後に生かして、広めていき、利用者と介護・福祉と医療の三角形の架け橋になりたいと思っております。

ありがとうございました。

介護タクシーの認知度を上げたい

【インタビュー後】
 しっかりと現実を見つめつつ、ご自身でできることを着実に行動していく姿は頼もしく感じました。介護タクシーの認知度を上げるという社会的な使命を背負いつつ、ご利用者の方とのコミュニケーションも丁寧な印象を受けました。今後ますますこうしたサービスが、社会的にも必要となってきますが、寺田さんのような心持ちのドライバーの方が増えてくればいいなと感じました。
【久田恵の視点】
介護タクシーの起業を成功させた寺田さんの実践事例は、同じ思いを抱く方たちへの大きな力になりますね。
まさに「思いを形にしていった」プロセスを通して自ら仕事の意味を発見し、深めていく姿勢に心が打たれます。