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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

「77年後のあなたへ」

 8月6日、9日、15日。
 この日だけは、日本中が戦争を思い出す日。

 日本人は自らを「平和ボケ」と評することがあります。
 「平和ボケ」は、悪い言葉のように聞こえますが、危機管理や緊張感をなくすほどに、平和な社会になったともいえます。それはおそらく戦争を体験した方たちが願った社会。
 「平和」の実現は、世界中の多くの人が願っています。でもそれは、不思議なくらい難しい。だから何十年、何百年経っても実現せず、人類にとって平和は、ずっと“願い”続けるものになっています。

 なぜ人は人を許せないのでしょう。なぜ人は生まれた土地や肌の色、思想、宗教によって線を引きたがるのでしょう。77年前に、人は多くの大切な人、大切な命を失ったはずです。その記憶を語る人がいて、文献が残っていて、それを調べてきた人がたくさんいます。それでも人は争いをやめず、世界から戦争はなくなりません。

 私たちは、高齢者介護の仕事を選んだ。この時代に…。
 いま80歳のご利用者は、原爆が投下されたとき3歳だった。幼い我が子の愛らしい顔を思い浮かべながら目を閉じた父の気持ちを想像してください。
 いま90歳のご利用者は、終戦を迎える頃13歳だった。これから成長していくとき、一番大事なときに、そばにいてやれなかった母の無念を想像してください。
 親は77年後の子どもたちに、何を願ったでしょう。77年後の世界がどうあってほしいと願ったでしょう。
 私たちは、その親たちの願いを叶えることができるかもしれません。そういう仕事を選択したのです。

 終戦から77年が経ち、戦争を語れる人が少なくなりました。
 それもいいでしょう。辛い過去を振り返ることが、必ずしもよいとは限りません。

 平和ボケした日本人、若者を非難する人もいるでしょう。
 それも悪くない。それこそが戦争で命を落とした、愛する人を失った人たちの願いかもしれません。

 忘れてはいけないのは、ご利用者のこれまでの人生です。77年間、苦労して生きてきた方たちであることです。
 苦労はもうさんざんしてきました。もうこれ以上苦労はしてほしくない。

 私たちの介護は、どうあるべきか。
 介護は業務じゃない。作業じゃない。
 私たちは、ご利用者のこれまでの苦労が報われるような介護をすべきであり、それこそが尊厳を護る介護だと思うのです。

著書のご案内

山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。

現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!

介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8