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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

「あの日見た夢の続き」

 22年前、介護の仕事を始めたとき、私は29歳でした。若かった。
 私も若かったし、当然、まわりの人たちも若かった。
 当時の私にとって、ご利用者は祖父母の世代。ご利用者のご家族は父母の世代でした。
 時が経ち、51歳になった私にとって、ご利用者は父母の世代になり、ご利用者のご家族は同世代になりました。

 17年前―。
 若年性アルツハイマーの女性ご利用者Aさんが施設に入居されました。Aさんはまだ60代前半。認知症がかなり進行しており、言葉や表情で気持ちを表現することが難しく、生活全般に介護を要する方でした。90歳になるAさんのお母様は、よく面会に来てAさんのお世話をしていました。20代の娘様は、母親が60代で認知症になったことを受け入れられないと、あまり面会に来ることはありませんでした。
 女性介護職のHさんは、娘様と同世代。「自分の母親だとしたら…」。そう思いながら介護をしていました。
Aさんのお誕生日。Hさんは、Aさんとリッツカールトンホテルに行って、エステを体験するプランを、お母様、娘様に提案しました。この提案に娘様は格別に喜んでくださり、実際にリッツカールトンホテルに行った後、同世代の娘様と職員のHさんはすっかり意気投合しました。

 ご利用者、ご家族の気持ちに寄り添うこと、想いを馳せることは、世代が違ってもできることだとは思います。ただ私自身、自分が歳を重ねることで、以前とは介護に関する見方、考え方が少し変わってきています。
 年齢を重ねたり、いろんな経験をすることで、人はさまざまなことを感じ、学び、共感することができます。

 私も、Hさんも、当時の仲間たちも、みんな年齢と経験を重ねました。
 22年前、ご利用者のご家族だった息子様、娘様が、いまは介護を要する立場に変わりつつあります。
 人生は若い頃想像していたよりもずっと早い。
 22年前、介護の仕事をはじめた頃、ご利用者の方たちに「長生きした甲斐があった」と思っていただきたいと心から思いました。
 時が経っても、あのときの想いだけは変わりません。
 あのときの仲間たち、そして新しい仲間たちと、あの日見た夢の続きを叶えたいです。

著書のご案内

山口晃弘氏の著書が弊社より発行されています。
テーマは、介護現場の「リーダーシップ」と「人材育成」です。

現場の職員から「一緒に働きたい!」と思われる人気者リーダーになるために、役立つ知識、使えるツール、心揺さぶられるエピソードが満載の一冊です。現場のリーダーからも「この本に出会えてよかった」「求められているリーダーについて深く理解できた」「実践にもすぐに役立つ」など、嬉しい感想を頂いています。ぜひ、ご一読ください!

介護リーダー必読!
元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダーシップの極意
定価 本体2,000円(税別)
A5判、218ページ
ISBN978-4-8058-8278-8

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