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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

立ちはだかる壁!壁!壁!

 私の夢は、世の中の困っている人を片っ端から助けることです。
 もちろん、そんなことが一人でできるわけがありません。福祉、介護関係者がそれぞれの思想や利害を超えて大同団結し、みんなが困っている人に手を差し伸べる社会を創りたいと思っています。

 しかし、現実にはさまざまな壁が立ちはだかります。
 先日、私の勤務地の地域福祉部会に参加させていただきました。そこで議題にあがっていたのが、「65歳の壁」。
 障害がある方の支援は、障害者総合支援法によりサービスが提供されていますが、65歳を迎えると介護保険法に移行します。それに伴い、今まで受けていたサービスの内容、時間等に隔たりができてしまったり、利用することによる金銭的な負担が増えてしまったり、中には今までずっと生活してきた生活施設を退所しなければならなくなるケースもあります。
 すべてのサービスが介護保険法に切り替わるわけではありませんが、多くの障害がある方達と、その家族を不安にさせています。

 先日、私の勤務する特養に、母親の入居相談にきた娘さんがいました。
 お話を伺うと、両親ともに認知症を発症しており、今の生活を続けていくことは困難な状況です。父親は現在、老人保健施設に入所中。母親の入居できる先を探していました。彼女は施設見学を終えると、「素敵ですね。すぐにでもこちらにお世話になりたいです」とおっしゃいました。
 「そうですか。ありがとうございます」と私が入居申請の方法をお伝えしようとすると、彼女は「だけど、入居はできないのです。母は要介護2ですから……」と下を向きました。
 ここにも壁が存在しました。平成27年度の介護保険制度改正から、特養には要介護3以上の方しか新たに入居できなくなったからです。
 話を伺うと、母親のADLは高いですが、認知症はかなり進行しています。とても家に一人でいられる状況ではなく、遠方でご主人の両親を介護する娘さんがお世話することはできません。行政に相談すると、「もっと大変な人もいるのですよ」と取り合ってもらえず、有料老人ホームやグループホームを勧められました。しかし、それだけの金銭的な余裕はありません。

 立ちはだかる壁!壁!壁!
 世の中の困っている人を片っ端から助けるには、支援する側だけでなく、根本的な制度そのものを変えていかなければなりません。
 迫る平成29年は、新たな闘いに挑む所存です。


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