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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

カ行づくし


 新型コロナウイルスで、生活の状況が大きく変わった人がたくさんいることでしょう。
 僕もそのうちの一人ですが、僕は職を失うほどの打撃を受けたわけではなく、人前で話す機会がなくなったこと、東京の行き来を減らすため、まとまった日数で滞在するようになったこと、毎月行っていた所へ行けなくなったことぐらいで、生活は変わりましたが生活観が変わるまでの変化には至っていません。

 僕の北海道の友人であるナオト(僕の年下の親友なので、あえて呼び捨てとしますね)は介護事業を経営しながら、北海道内の研修講師等で毎日あちこち飛び回る生活をずっとしてきていましたので、飛び回る機会がなくなり大きく生活が変わったことは想像できていました。

 先日「生きてるのかな」と思って久しぶりに連絡を入れたら、ナオトの場合は生活が変わっただけではなく生活観まで変わるほどコロナの影響を受けていました。
 ナオトいわく「コロナのおかげ」だと。

 自宅や地元に滞在する時間が圧倒的に増えたナオトは今、ホームセンターでもらったカブトムシを飼いはじめ、「まんまとひっかかった」と言ってましたが、もらったカブトムシが雄だったので、結局メスまで買って飼育に必要なモノまで完璧に揃え、ふ化させることが楽しみとなったそうです。

 そもそも北海道はカブトムシの生息域ではなく1930年代に本州から人為的に持ち込まれ、1970年代に本格的に定着した外来種のようで、今でもカブトムシを外に放たないように呼びかけられているそうなので、子どもの頃にカブトムシにかかわった経験がないのかもしれませんから、余計夢中になっているのかもしれないですね。

 「実は和田さん、カメを買ったんです。リクガメ」
 「カメも飼いだしたん、長生きするから後継者がいるで」

 聞くと珍しいカメのようでン万円もしたそうですが、飼育しきれなくなると引き取ってくれるほどのお宝カメだとか。


 あとは元々介護職なので介護の現場にどっぷりつかっているようですが、カブトムシにカメ、コロナに介護と「カ行づくし」の生活の今からこれまでを振り返って「今まで自分は何をしていたのかな」と思うときもあるようで「もう、後戻りはできないかも」と話していました。

 実践力も発信力もあるナオトがカブトムシ・カメの飼育に留まるのは惜しいし、周りもほっとかないでしょうが、コロナで違った人生の価値を見出したことの意味は大きいように思いました。

 これはナオトに限らず世の中全体で起こっているように思いますし、コロナは世のあり様を大きく変えていっているのではないでしょうか。
 観をも変えるコロナ、これまた「カ行づくし」でしたね。

写真

 三人掛けの机を一人座りにして行ったある会の様子ですが、この会もこれまでなら一度で開催できる規模でしたが、こうして距離を保つことで二度開催としました。

 研修会や講演会の開催を再開する地域でも、定員を半分にしたりオンライン参加を加えたりと工夫を凝らしており、僕も「開催日の〇日前まで東京滞在ですがいいですか?」と聞きますし、最低10日間は空けられる日程でお受けするように、日程も身体もきついですが車で移動するように配慮させていただいています。

 予防・治療薬が出てくるまでは「これまで通り」には戻らないでしょうね。