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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

21世紀未来社会実感時代


 2015年 今年もよろしくお願い申し上げます。
 早いもので、21世紀に突入して14年にもなるんですね。
 1955年生まれの僕にとって21世紀は「未来」そのもので、鉄腕アトム・スーパージェッタ―・鉄人28号などの科学アニメを通して、ロボット、海を走り空を飛ぶ車、コードのない電話などに「遙かかなたの時代」を夢見たものです。

 学生時代に、僕の親父は親父の家系で一番長生きして42歳だったことを聞き、自分がそれ以上生きるなんて考えてもみませんでしたが、「憎まれっこ世にはばかる」とはうまいこと言ったもので、おかげで「遙かかなたの時代」を「今」として生き、アニメの世界でしかなかった「夢だった未来」を実感できています。

 すでに移動の道具としては、水陸両用車は実用化されていますし、空を飛ぶ車も登場しています。水素で走る車が市販され、時速500キロ・車輪のない鉄道も射程圏内、宇宙飛行だってツアー化されてきていますが、もっと身近な日常にまで「未来」が迫ってくることでしょうし、それがハンディを負った状態にある人たちを「支援する具」として実用化されてくることでしょう。

 この春、国立長寿医療研究センターが、高齢者の介護、福祉ロボットの開発と普及を目指す「高齢者生活活動支援ロボットセンター(仮称)」を新設すると報道で見ました。

 その直後テレビでは、車が瞬時に直立ロボットに変身する映画の「トランスフォーマー」そのもののミニチュアロボットが、198万円で売り出されていると伝えていましたが、技術的には僕が夢見た未来が実現されており驚きました。

 すでにバネの力を使って歩行を助ける無動力の「歩行支援機」が18万円で売られており、生産が追い付かないほどの反響だそうです。

 また、移乗介助ロボットが今春には、軽自動車並みの価格で販売されるとも報道されていました。

 こうした報道を見ていて思うのは、いずれも「生活支援機器:自助具」で「メガネ」と同じだということです。

 つまり、こうしたロボットは、できることをロボットが代わりにする家政婦型機器ではなく、もともとできていたことを取り戻すための自助機器だということで、代行業のお手伝いさんではなく、まさにリハビリテーション機器なのです。

 前述の「移乗介助ロボット」の開発者は「本人の立ち上がろうとする意思や動きを手伝うロボット」だと紙面で語っていましたが、介護職はロボットやロボット開発者に見習わなければならない・教わらなければならない逆転の時代がくるやもしれませんね。

 これからの時代、メガネと同じように「日常生活自助具」のひとつとしてロボットが活躍することでしょうが、このロボットも一歩間違うと「介護職員など人が関わらなくたって、ロボットが関われば落ちついているから」になりかねず、かつての回廊式廊下のように「認知症対策」にされかねません。

 日常生活自助具としてのロボットが、鉄腕アトムのように感情をもって「人として生きることを支えてくれる自助具」となることを願ってやみませんが、それもそう遠くないかもしれないですね。

 僕ら介護職も「生活活動支援職」にならねばですが、国の機関もロボットだけでなく、「生活活動支援職養成センター」でも設置して、相も変わらずの「してあげる介護」を本気で脱する対策を講じてはどうでしょうかね。

写真

 岩国錦帯橋のそばに展示してあった木炭車。  僕は、現役で活躍する木炭車を記憶していませんが、車体後部に設置してあるボイラーで木炭を燃やしてガスを発生させ、そのエネルギーでエンジンを動かして走らせるというもので、あのガソリンが市場から消えた震災の時なら「超ハイテク車」だったことでしょう。
 この車は公道を走れるようで、これしか現存していないようです。元の車は三菱のジープです。
 最新テクノロジーも悪くはないですが、かつて最新テクノロジーだった代物も、見限って捨てるにはもったいないと僕は思いますがね。

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