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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

画期的な判決

 旧優生保護法(1948~1996年)の下で不妊手術を強いられた障害のある人たちが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が、2月22日大阪高裁と3月11日東京高裁であり、両判決は除斥期間の適用を制限し、国に賠償を命じました。

 これらの判決は、旧優生保護法は日本国憲法第13条(個人の尊重)および第14条(法の下での平等)に反し違憲であると指摘しました。

 また、旧法による人権侵害があまりにも強度であった事実に照らし、除斥期間をそのまま適用することは「著しく正義・公平の理念に反する」として、その適用を制限すべきであると判断しています。

 旧優生保護法は、日本国憲法の下で、国会の全会一致で成立した法律です。わが国の国会とすべての党派が背負うべき重い十字架があります。

 旧法は、優生上の見地から不良な子孫の発生を防止することを目的として、特定の障害や疾患のある人たちを一律に「不良」と規定し、不妊手術を強制してきたのです。

 今回の判決で裁判所が指摘した「強度の人権侵害」は、国家権力にもとづく本当に酷い行為だったことは明らかです。

 強制不妊手術は、本人の意思決定や同意を取らずに実施されました。手術をやるためには、身体拘束、麻酔薬の使用、だまし(何らかの病気を治療するための手術だと偽る等)など、何でもありだったのです。

 本人が何も知らない間に不妊手術が実施されているケースは決して珍しくありませんから、形式的な除斥期間の適用は、日本国憲法にもとづく市民の良識から言えば、言語道断です。

 また、東京高裁の判決では、学校教育の場においても教科書で優生思想を正当化する内容を記載し続け、特定の障害・疾患のある人たちに対する偏見・差別を助長し浸透させたと指摘しています。

 私が小学校の高学年か中学生の時代に、音楽家を輩出しているヨハン・セバスチャン・バッハの家系図と精神疾患と犯罪者を輩出している家系の図を対比する「保健体育」の教科書のあったことを鮮明に覚えています。

 そうして、遺伝的に「不良な子孫」を根絶やしにしていくことを国家的に、全国民的に正当化してきた歴史があるのです。

 その上、遺伝的な要因ではなく、何らかの事故や疾患によって受障した人たちに対しても、強制不妊手術を実施した事例まであります。このようなケースは、旧優生保護法の対象とする遺伝的な要因に基づく特定の障害・疾患ではありませんから、犯罪だったといっていい。

 旧優生保護法の成立した当時は、優生思想のイデオロギーが社会全体に強くあったかもしれません。しかし、その法律が、基本的人権を保障する日本国憲法の下で、20世紀末まで半世紀近く放置されてきたことに恐ろしさを感じます。

 誤った優生思想にもとづく教科書の内容を、ただ漫然と全国の小中学校の教師が子どもたちに教え続けてきたという事実。

 障害のある子どもたちの児童福祉施設(児童養護施設にも軽度の知的障害のある子どもたちがいて不妊手術を強制された事例があります)や障害者施設の利用者について、施設職員や障害のある人の親・家族の「協力」や「同意」があって、強制不妊手術が実施されたという事実。

 後天的な事故や疾患によって発生した障害であることは明らかであるにも拘らず、不妊手術の実施に加担してきた医師がいるという事実。

 私の学生時代にも、ある障害者施設の若い女性利用者に彼氏がいることが明らかになったとき、施設職員と家族が「不妊手術を実施することは止むを得ない」と話し合っている場面に遭遇したことがありました。その施設の旗印は「障害者の権利保障」です。

 このように、障害のある人たちの権利を擁護すべき教育・福祉・医療の関係者が、旧優生保護法にもとづく強制不妊手術の実施に、あるいは積極的に、あるいは消極的に協力し加担してきたのは紛れもない事実です。

 障害のある人をとりまく身近な関係者が、場合によっては家族を含めて、旧優生保護法にもとづく強制不妊手術を正当化してきたのですから、本人自身が自分の受けた侵襲がとんでもない人権侵害であると自覚することには、特別の困難があったものとみるべきです。

 これまでの同種の訴訟において、除斥期間を理由に国の賠償責任を退ける判決を下してきた裁判官こそ「不良」です。

 旧優生保護法にもとづく強制不妊手術については、歴史的な極めつけの人権侵害であることを国と全国民が認め、速やかな権利救済を実施すべきであると考えます。

インスタ映え狙いの神社ビジネス

 この神社は、数年前まで絵馬でトンネル状にした回廊だけがありました。それが近年、カラフルな風車や風鈴でトンネル状の回廊も設定し、「映え」狙いの集客に力を入れる神社ビジネスを展開しています。おそらく、裏にはコンサルがついているのでしょう。

 高度経済成長期の後半から、商品の中身や使用価値とは別に、デザインの良さを独り歩きさせて売り上げを伸ばす商法が問題になりました。ルッキズムを助長する資本主義と言っていい。

 それが今や、「インスタ映え」に乗っかって、街の景観や飲食物にも、内容とは無関係の「画像に切り取って幻想をふりまくことのできるポイント」を意識的に追求するようになってきたと思います。そうして、川越の観光地は「映えポイント」だけは氾濫するように増えながら、地域住民にとっては住みにくい地域になっているのです。