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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

オンライン授業後半戦

 「今年の夏はことのほか多忙だったのに、後期の授業がもう始まるのか…」という呪いに満ちた私の呟きをよそに、今年度のオンライン授業後半戦がはじまりました。

 大学生にある「夏休み」は教師の夏休みでもあるという世間の誤解があります。大学全体が休業となる「お盆休み」を除けば、教師に「夏休み」は存在しません。会議や実務の仕事はあるし、教員免許状の更新講習やその他研修の仕事もこの時期に集中します。

 学生は夏休みで「授業」をしなくてもいいために、その分を自分の研究に時間を割くことができる期間だというのが、教師にとってのささやかな有難味に過ぎません。でも、その貴重な期間が別の仕事に費やされて、授業の後半戦を迎えることになりました。

 毎年、後期の授業の一つに、全学部の学生を受講対象とする科目を受け持っています。この授業はこれまで、多彩なゲストをお招きして講話を戴き、学生にグループ・ミーティングする形で進めてきました。この授業をオンラインでどう進めるかを思案しなければなりません。

 ここでオンライン授業ならではの恩恵があることに気づきました。Zoomを活用すると、遠方にお住まいで大学まで足を運んでもらうわけにはいかない人、モビリティの困難やCovid-19で重症化リスクの高い疾患のある人等を、授業のゲストにお招きすることができるのです。

 このブログですでに取り上げた「綾子とだっこのささやきトークショー」のお二人(7月27日ブログ)や松本哲也さん(9月7日ブログ)などを、授業のゲストとしてお招きすることができました。

 このような授業方法は、Covid-19問題の終息後も、対面式の授業の中でオンラインと組み合わせて発展させることができます。それは、大学の講義の内容と考察の深め方に新たな可能性を拓くものではないかと受け止めています。

 この授業のテーマは、社会的排除を乗りこえて共に生きる内実を家族・職場・学校・地域社会にどのように創出していくのかを考察することにあります。

 これまでは、さいたま市内在住のゲストを中心にお招きしてきましたが、通信環境の問題さえクリアしていれば、日本全国どこからでも参加できますし、場合によっては世界中からゲストをお招きすることも可能です。

 社会的排除と社会的包摂の課題、差別・虐待と共生社会の実現について、大勢の人たちとリアルタイムで現状を共有し考察を深めるセッションには計り知れない意味があります。

 キャンパス内の特定の教師の講義に「閉じられがちな知」のあり方は、常に、外部世界と大勢の人たちに「開かれて共有する知」であることをスタンダードとするようになるのではないでしょうか。

 また、この授業は、教育学部だけでなく、教養学部、経済学部、工学部、理学部にまたがる多彩な学生が毎年受講しているため、多様な専門領域に即した意見が出てきます。それぞれの学生の経験値と専門領域に由来する多様なアプローチからから、ソーシャル・インクルージョンを実現する理論と方法について迫ることが可能です。

 ホットな話題の一つに、大分県のJR九州の駅の無人駅化によって鉄道利用が事実上できなくなった問題で、障害のある人たちがこの9月23日に提訴したニュースがありました。この問題は、2年前から「さいたま市障害者の権利の擁護に関する委員会」でも取り上げて、国土交通省、厚生労働省及びJR東日本に対し問題の是正を申し入れてきました。

 問題の焦点は、「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(平成27年11月)」に、「車いす等を使用して列車に乗車する場合、段差にスロープ板を渡す等乗降時の対応にかかる人員の手配や車いす座席の調整等で乗降に時間がかかる」場合は、不当な差別には当たらないと示しているところにあります(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000063.html

 ローカル線で一日に数本しか列車が止まらない無人駅の問題と、都市近郊区間の数分おきに列車がやってくる路線の「無人駅化」によって、新たに発生している利用上の制約は問題の質が違います。通院や買物はむろん、就学・就労の目的での鉄道利用に制約が拡大していく問題は、差別解消に反する政策を社会的に容認する点で明らかに間違っています。

 ここで、文系の学生はどちらかというと「人員の手配」をもって問題の是正を図ろうと考えがちですが、理系の学生は物理的な環境改善の必要を指摘します。たとえば次のようです。

 「都市近郊区間で、エレベーターとホームドアの設置を前提条件としない駅の無人化によって鉄道利用が妨げられるとすれば、それは明白な差別であり、無人化=過剰な負担の発生とするのは間違っているのではないか」

 「ホームドアの設置時に、特定の場所-例えば5号車の4つ目のドア-は自動的にスロープが渡される仕掛けを鉄道事業者に義務づける。この程度の仕掛けに技術的問題などないし、ホームドアの特定の箇所に絞り込んで自動型スロープを設置すればいいのだから、さほどコストが増大するとは思えない(だから過剰な負担とはいえない)」

 Covid-19の問題から、前期のオンライン授業の生みの苦しみがはじまりました。今年度の後半戦では、オンラインだからこそお招きできる多彩なゲストと共に、多彩な専門分野の学生が未来のソーシャル・インクルージョンを創り出す知と力を切り拓く授業にしたいと考えています。

トラクターの後に集まったダイサギ

 さて、田んぼでは稲刈がすっかり終わって乾田になると、サギの仲間は餌に窮するようになります。田んぼを生活圏とするダイサギたちは、裏作のためにトラクターが土を耕しはじめると、掘り返された土の中から餌が出てくることをよく知っているのでしょう。ここぞとばかりに集まってきました。