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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

従事者による高齢者虐待の事例検討(その3)

 今回は本テーマの「まとめ」として、これまでに紹介してきた事例に関するすべての検討ポイントを「虐待防止の指針」の9項目に振り分けてみました。事例に対応するための唯一つの正解というわけではありませんが、「虐待防止の指針」を作成する際は、すべての検討ポイントをカバーし、「スーパーバイザー」の役割を果たすことが望まれます。

※①~⑯は事例(その1その2)の検討ポイント(例)を表します

虐待防止の指針 イ 
虐待防止に関する基本的考え方
本事例同様の事例をカバーするような考え方が示されないと始まりません。
虐待防止の指針 ロ 
虐待防止検討委員会とその他事業所内の組織
 該当するのは、①基準の不遵守の疑い、②③④対応困難への対応、⑬標準的ケアの不遵守、⑭⑮虐待対応(認定・調査)、⑮⑱防止計画実施です。労務や人事にも関わることなので組織全体で取り組むようにします。
虐待防止の指針 ハ 
虐待防止のための職員研修
 該当するのは、②③④対応困難への対応⑬標準ケアの不遵守です。是非、これらは研修に盛り込みたいものですし、⑨⑩防止策の効果を上げるためにも、当該職員への個別プログラムの実施は必要不可欠です。
虐待防止の指針 ニ 
虐待等が発生した場合の対応方法
 該当するのは、⑤⑥情報収集(記録と証拠)ですが、スピードアップが必要ですし、⑦専門家に意見を求める必要も、⑧虐待対応(認定)の方法を見直してその精度を上げる必要もあります。また、⑨⑩防止策の効果を考え、配置転換や担当業務の見直しも、⑭虐待対応(認定・調査)の継続も必須ですし、⑪⑯行政への相談・通報⑫⑰警察への相談・通報の検討も漏らさず示したいところです。
虐待防止の指針 ホ 
虐待等が発生した場合の相談・報告体制
 該当するのは、⑤⑥情報収集(記録と証拠)のスピードアップです。また、⑪⑯行政への相談・通報⑫⑰警察への相談・通報のスピードアップも、⑪行政への相談・通報の「義務」の周知徹底も図りたいものです。
虐待防止の指針 ヘ 
成年後見制度の利用支援
 検討ポイントにはありませんが、ここでも実効性ある方法を考えたいものです。
虐待防止の指針 チ 
利用者等に対する当該指針の閲覧
 検討ポイントにはありませんが、行政により虐待認定された場合を想定して、表1などを参考に、告知の内容等を検討しておく必要があります。

表1 行政による指導や指示によるおもな事後対応策

被虐待者とその家族に対して 安全確保、回復、経緯説明、謝罪、補償、再発防止策等
虐待者に対して 管理面 内規による罰則の適用や配置転換等
教育面 先輩や上司による個別の再教育等
虐待者以外の従事者に対して 管理面 虐待防止のための指針やマニュアルの見直し等
教育面 先輩や上司による再教育、外部講師による研修等
虐待防止の指針 リ 
その他虐待の防止の推進のために必要な事項
 検討ポイントにはありませんが、介護相談員への協力や、外部の専門家の協力を得られる体制を整備するようにします。

「指針の作成会議を始め…」
「会議自体に指針が必要ねぇ…」