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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

著書

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著(中央法規出版)

『よくわかる 補助犬同伴受け入れマニュアル』共著
(中央法規出版)

第83回 補助犬都市伝説:補助犬ってかわいそう???

 5月なのに、台風が来たと思ったら、急な夏日……身体がついていかないですね。皆さんも体調にはお気をつけください。

 そんななか、当会が事務局を務める、5月22日の『ほじょ犬の日啓発シンポジウム』の開催に向け、現在急ピッチで準備を進めております。様々な分野の方々にとって、有益な情報提供ができますよう、関係者一同努力してまいりますので、ぜひとも、1人でも多くの方に足をお運びいただきたく思っております。ぜひこの機会に、補助犬たちと一緒に、【障害者差別解消法】と【動物福祉】について考えましょう!!!

5月22日(金)
  • 11:00~12:30 第一部 「障害者差別解消法と補助犬」~合理的配慮を考える~
  • 13:30~15:00 第二部 「動物福祉の世界基準」
手話通訳・要約筆記あり。事前申し込み不要。正面玄関にて【通行証】を受け取りお入り下さい。
会場 : 衆議院第一議員会館 国際会議室
※千代田線、丸の内線「国会議事堂前」駅より徒歩1分
・半蔵門線、有楽町線、南北線「永田町駅」より徒歩5分
・銀座線、南北線「溜池山王駅」より徒歩1分
周辺図

補助犬は、スーパードッグなんかじゃないんですよ~♪

 さて、いまだよく聞く「補助犬ってかわいそうよね~」というセリフ……本当にそうなのでしょうか? このブログでは何度かこのテーマに触れてきました。が、まだまだ多くの方が、そんなふうに感じておられる現状は、変わっていません。皆さんの周りの方にも、ぜひ一度聞いてみてください。「補助犬(働く犬)のイメージ」を。。。特に犬好きの方には多いかもしれませんね。

 あらためて皆さんに知っていただきたいのは、「補助犬」とは、「無理やり働かされている犬たちではない」ということです。そのように感じておられる方の多くは、「厳しい訓練なんでしょ~」「仕事がストレスで、長生きしないんでしょ~」ということを言われますが、これにはまったく根拠がありません。

 まず、寿命に関しては、学術的な報告がされています。「ペットよりも短命」ということはありません! これは明言できます。
「盲導犬の平均死亡年齢について」水越美奈(日本獣医生命科学大学)

 強制的な厳しい訓練で、強制的に仕事をさせられれば、犬も人間と同じく「仕事=ストレス」になるでしょう。しかし、補助犬たちが思っている「仕事」は、人間が感じている「仕事」とは、少しニュアンスが違うと思っています(あ、人間でももちろん仕事大好き!な方はたくさんいらっしゃると思いますが……(笑))。

 よく街中で、補助犬ユーザーさんと行動をしていると、「(働かされて)かわいそうに……」と言われることがあります。また、直接的な言葉ではなくても、「お利口ね~偉いね~」と一見褒めてくださっているような言葉をかけられますが、その声色や表情からは「働かされて大変ね」という印象が伝わってくることもあります。それは、同行中の私でも感じるくらいですから、当事者であるユーザーの皆さんには、もっと深く心に突き刺さってしまいます……

 補助犬の訓練は、各補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)によって作業内容も違いますし、適性も違ってきますので、それぞれ専門の施設で専門のトレーニングを受けます。ほとんどの訓練事業者さんで、1歳まではパピーボランティアさんの家庭で「人間が大好き♪」に愛情いっぱい大切に育てられ、訓練センターに入所します(※犬年齢1歳半=20歳くらい)。

 そこから専門のトレーニングに入ります。トレーニングは遊びの延長で、GAME感覚でいつも「何をしたら、一番大好きなこの人にほめられるだろう?」と考えるようなトレーニングをしていきます。

 たくさん褒められて、「人と一緒にお仕事して、褒められるのが大好き♪」な犬に成長していくのですが、その途中で、補助犬になるための適性を厳しく判断していきます。ここでいう『厳しく』とは、決して犬に対して厳しい何かをすることではなく、厳しい眼で適性の判断を行うということです。

 この時の判断を誤ると、犬に無理をさせることになり、それがストレスとなって集中できなくなったり、それこそ体調を崩したり、ボイコットしたりするようになってしまいます。これは最終的にユーザーとなる身体障害者の方のリスクとなりますので、この判断は、訓練事業者さんにとってはとても重要な決断となります。日々の様子を見ながら、時に課題克服のための工夫をしながら、それでもダメな場合は、「キャリアチェンジ」となります。

 私たち補助犬関係者は、決して「補助犬になる犬は、選ばれしスーパードッグである」とは思っていません。「補助犬になることが、その子にとって最もHAPPYな選択である!」と確信できるかどうかが大切です。ですので、補助犬になれなかった犬は、「補助犬になれなかったかわいそうな劣等生」ということでもなく、「家庭犬」として暮らすことが最もHAPPYだったり、「PR犬」として活躍することがHAPPYであると判断され、それぞれの道を歩むこととなります。

 ぜひ、そんな目で、補助犬たちを温かく見守っていただきたいな~と思っています。そして、ユーザーさんが困っていそうだったら、「何かお手伝いしましょうか?」の一言を♪ その1歩が、障害者の方の自立と社会参加に、大きな力となるのです♪♪♪

※キャリアチェンジ犬の「新しい家族」になっていただけるご家庭がございましたら、ぜひ、そんなボランティアにもご協力いただけると有難いです♪ お近くの訓練事業者さんでは、随時募集をされています。

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
 皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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