メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

第35回社会福祉士国家試験 問題の講評

特別編② 第35回社会福祉士国家試験 午後<専門科目>問題の講評

はじめに

 先週と今週の2回に分けて、第35回社会福祉士国家試験の講評を行っています。今回は、午後<専門科目>問題についてです。
 国家試験から約1週間がたちます。その後、何か新しい取り組みを始めましたか? そのための準備を始めていますか? 時間はどんどん前に進んでいきます。合格発表後から準備を始めていては遅いと思います。今から、次年度の準備、次年度の体制作りをしておくとよいと思いますよ。

 さて、午後<専門科目>の試験科目は以下の8科目で、試験時間は13時45分~15時30分までの105分(1時間45分)でした。

■ 社会調査の基礎(7問)
■ 相談援助の基盤と専門職(7問)
■ 相談援助の理論と方法(21問)
■ 福祉サービスの組織と経営(7問)
■ 高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)
■ 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)
■ 就労支援サービス(4問)
■ 更生保護制度(4問)

 第35回試験の午後<専門科目>問題は、例年通りの難易度だったと思います。よって、基本的な項目をしっかり押さえておけば、きちんと得点できた問題が多かったと思います。ただし、各科目で1問から2問は、やや難しい内容や聴き慣れない用語を含んだ内容が出題されていました。事例問題については、全体的に易しい問題が多く、相談援助系の事例問題では、社会福祉士(ソーシャルワーカー)の対応事例が出題されました。その他の事例問題は、知識と実践を問う応答問題が出題されました。

 それでは、各科目について、講評していきたいと思います。

基礎的な知識から応用的な知識まで幅広く出題

社会調査の基礎(7問)

 本科目は、昨年度同様の難易度で、基礎的な知識や内容を問う問題が多く、全滅(0点)という方は少なかったのではないでしょうか。例えば、社会調査の基礎としては、問題84の社会踏査や問題85の統計法などが問われました。こちらは、用語の整理と言えます。次に、具体的な調査については、量的調査では、問題86で標本調査や問題87で調査の測定と尺度、問題88で質問紙作成の留意点について問われました。内容的には非常に基礎的な内容です。また、質的調査では、観察法から参与観察について問われました(問題89)。なお、質的調査のデータ収集方法としては、大別すると①面接法(インタビュー)と、②観察法(参与・非参与観察など)の二つに分けることができます。これに、KJ法を参考とした地域ニーズ探索の事例問題が出題されています。

 なお、量的調査の難解な解析方法の出題はありませんでした。が、量的データ分析や解析の知識や技術はソーシャルワーカーにとって必須となります。例えば、クロス集計やt検定、因子分析など理解しておいてください。

相談援助の基盤と専門職(7問)

 本科目は、「相談援助の理論と方法」とセットの科目といえます。本科目は、社会福祉士やソーシャルワーカーの倫理、価値に重きが置かれ、社会福祉士にとって重要な原理・原則についても取り扱われます。これに、ソーシャルワークの歴史的変遷や相談事業や援助といった内容も含まれます。具体的には、問題91「社会福祉士(法規定)」、問題92「ソーシャルワークの定義(グローバル定義)」などからはじまり、問題93はソーシャルワークの形成や問題95はリッチモンドの業績について問われています。ここまでは、非常に基礎的な内容だと思います。この他、問題96では、福祉事務所に配置される所員の社会福祉法に基づく業務の具体例が、問題97出はやピンカスとミナハンの「チェンジ・エージェント・システム」について問われています。こちらの2問は前提となる知識が必要となるに内容でした。なお、「チェンジ・エージェント・システム」とは、「ワーカー・システム」とも呼ばれ、援助活動を担当するソーシャルワーカーとそのワーカーが属する機関や施設とそれを構成している職員(全体)を指すものです。

 残念だったのは、令和2年に改定された社会福祉士倫理綱領が全く触れられていなということです。本当に残念です。もう一回言います。本当に残念です。これから実践する皆さんは、新たな社会福祉士倫理綱領について、必ず一読しておいてください。