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第35回社会福祉士国家試験 問題の講評

特別編② 第35回社会福祉士国家試験 午後<専門科目>問題の講評

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)

 本科目は、非常に基本的な項目が、出題基準から万遍なく出題されました。また、事例問題は、全7問中3問で、里親療育包括支援(フォスタリング)施設の相談員の対応事例(問題136)や婦人相談員の対応事例(問題137)、母子健康包括支援センターの相談員の対応事例(問題139)が出題されました。母子健康包括支援センターとは、子育て世代包括支援センターとも呼ばれ、根拠法は母子保健法になります。具体的には、保健師等により、妊娠・出産・子育てに関する相談に応じ、必要な情報提供や助言、保健指導を行います。なぜか? それは、虐待の早期発見や介入だけでなく、切れ目のない支援が可能になるからです。ここでは、「産後ケア事業」を一読しておいてください。

 この他、児童虐待法に関する問題が出題されています(問題138、142)。非常に基礎的な内容ですが、やはり、本科目では1問は、虐待に関する基礎知識や事例問題は出題される必要があると思います。この他、保育士についても問われています(問題141)。また、「児童福祉法」や「児童虐待」に関する内容をはじめ、「児童養護施設入所児童の家庭環境調整」や「児童相談の一時保護」についても問われました。

 出題されなかった項目としては、「要保護児童対策地域協議会」「児童福祉審議会」「市町村子ども家庭総合支援拠点」「地域子育て支援拠点事業」「子どもの貧困」「里親」「児童の権利条約等」「スクールソーシャルワーカー」などに関する問題です。この辺りは、社会福祉士にとって重要な項目ですので、各自復習をしておきましょう。

就労支援サービス(4問)

 本科目は、基本を問う問題形式でした。ここ数年、労働や働きに関する基本的知識や統計、障害者、生活保護受給者、高齢者、若者等の各就労支援サービスに関する知識が幅広く問われています。今年度の第35回試験でも、これらの内容が満遍なく問われていました。内容としては、問題143で「福祉と就労」、ディーセントワークについて問われています。また、問題144では、労働法規について問われています。こちらは基礎的な内容ですが、働き方の「多様化」に着目されているので、人々の生活と働きを支援するソーシャルワーカー(社会福祉士)にとって、様々な形態の働きを理解し、支援するための基礎的な知識が重要となります。今年度は出題されませんでしたが、障害者総合支援法の障害者の就労支援の理解も必要となります。具体的には、就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型/B型)、これに、就労定着支援事業について整理しておきましょう。

 この他、問題145は障害者雇用促進法が定める雇用義務と、問題146は福祉事務所の現業員(社会福祉士)の対応事例が出題されています。ちなみに、今年度出題されなかった内容としては、出題頻度の高い「障害者就業・生活支援センター」です。来年度に出題される可能性があるので必ずチェックしておきましょうね。このほか、障害者の雇用・就労に関する統計問題や、障害者や若年層の雇用に関する内容についてはチェックしておきましょう。

更生保護制度(4問)

 本科目で出題された項目は、例年出題されている項目同様に「保護観察」「少年院/仮退院における支援」「更生保護(就労支援)」「医療観察制度」でしたが、内容的には、過去の問題の知識+α、芋づる式の学習ができていないとやや難しく感じたかもしれません。更生保護制度とは、一言で、「施設内処遇」に対して「社会内処遇」を意味しますのでこの辺りが理解されていることが大前提となります。具体的には、①仮釈放、②保護観察、③更生緊急保護、④恩赦、⑤犯罪予防活動を取り扱います。

 今回出題されなかったものとして、更生保護の担い手(保護観察官と保護司)です。保護観察官と保護司についてはその役割の詳細を整理しておきましょう。同時に、保護観察制度についても、指導監督及び遵守事項(一般遵守と特別遵守)、補導援護などの理解が必要になってきます。また、出題頻度が高い医療観察制度については、その制度の仕組みとともに、社会復帰調整官の役割を理解しておく必要があります。具体的には、「生活環境の調査」「生活環境の調整」「精神保健観察」といった一連の流れを中心に、社会復帰調整官の役割を整理しておきましょう。本項目は、重要なので少し解説しておくと、本制度は、「心神喪失または心神耗弱等の状態で、殺人や放火などの重大な〈他害行為〉をおこなった者で、〈不起訴や無罪〉になった者に対して、その適切な処遇を決定するための手続きなどを定めることによって、〈継続的かつ適切な医療〉ならびに〈その確保〉のために必要な〈観察及び指導〉を行うことにより、その病状の改善及びこれに伴い同様の行為の再発の防止を図り、その〈社会復帰〉を促進すること目的」としています。本科目では、この他、少年法などについても、改めて整理しておくとよいでしょう。