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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第39回 A.Wさん

平成24年度試験合格

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プロフィール

 M大学看護学部看護学科卒。埼玉県出身。小学校高学年から中学時代にかけて身内から性的な嫌がらせを受け、見かねた母親に支えられ高校から一人暮らしをした。人にやさしく接する職に就きたいと思い、看護師を志した。大学の看護学部に進学し、卒業後に看護師の資格を取得。市立の総合病院に就職し3年間勤めるなかで、独居や高齢夫婦が抱えている生活問題にかかわりたいと考えるようになった。あわせて、職場での人間関係の悩みが高じて勤務が難しくなり退職。そのころ浮かんだのが精神保健福祉士の資格取得だった。初めに考えたのはケアマネジャーの資格だったが、実務経験年数が足りなかった。専門学校の精神保健福祉課程1年コースに入学し、翌年(平成24年度試験)に合格。いくつか紹介を受けた就職口のうち精神障害者のグループホームに入職したが、入居者とのトラブルと自身の体調不良も重なり1か月で退職。先々は高齢分野で復職したいと考えている。趣味は、歩きながら考え事をすること。好きなものはネコ。きらいなものはクモなど足の多い虫。「気持ちと体力が長続きしないのが課題です。自分にあう職場を見つけたい」とマイペースをモットーに将来を展望する29歳。

受験の動機

 看護師の資格については、一人暮らしを始めた高校生のわりと早い時期に考えました。身内のある人から受けていた性的な接触のことがずっと頭にあって、苦しんでいる人を支える女性の仕事は看護師という考えが初めにあったようです。今考えると相談職が該当しそうですが、まだそういう職業を知らない女子高生でしたから。

 看護師として病院勤めをするなかで、自分がやりたかったこととはちょっと違うなと思ったのと、人間関係につまずいたのとで勤務がつらくなりました。トラウマとは思っていないのですが、男性の威圧みたいなものを強く感じたり、汗などの匂いが耐え難かったりして体調を崩すこともありました。看護師の先輩や同輩ともぎすぎすした調子で、シフト勤務で急に休むと印象も悪くなり、ますます勤めづらくなりました。

 結局退職することになるのですが、外来をやっているととにかく高齢の方が多くて、その方たちの生活を気にしている自分に気づき、在宅での看護や生活面のサポートのほうに目が向くようになりました。一度ケアマネジャーの資格を考えましたが、実務経験が足りず、かといって、このまま今の環境で看護師を続ける自信もありませんでした。

 これから先のことをいろいろと考えるなかで目に留まったのが「精神保健福祉士」でした。相談業務には知識も経験もありませんでしたが、こういうのが自分のやりたい仕事なのではないかと思えるものがありました。当時、気分が滅入りがちな自分自身の状態も少し関係しているように思えて、受験を決めました。病院はその年の年内に辞め、翌年の春から専門学校に通うため願書を出しました。

 受験勉強は全体としてスムーズに運べたと思います。学ぶことの範囲は広いと思いましたが、それほど苦労したという実感はありません。特別に変わったことはしていないと思いますが、勉強内容をそのままお伝えしたいと思います。

入学前に体調を崩した

 病院を辞めてすぐ、専門学校に入学する前に少し自己学習をしておこうと、統合失調症や保健に関する本を買い集めました。ところが、そういう準備を始めて間もなく、心身の不調が顕著に表れるようになりました。

 初めは退職して疲れが一気に出たものと思っていましたが、朝起きられない、夕方までぼーっとしている、全身がだるい、体の凝りがひどい、食欲がない、文字を見るとイライラする、テレビも楽しくないなど、明らかにおかしいと思いました。病院の内科を受診すると、途中で急にぼろぼろ涙が出てきて、自分でもびっくりしました。精神神経科のほうに回され、処方されたのは抗うつ薬でした。この副作用に悩まれたこともあり、その後しばらくは自宅でふとんに入っている生活が続きました。2月後半くらいから楽になり、3月になるといつもの生活リズムが戻ってきました。

 その後は現在に至るまで、あのときのような悪い状態に陥ることもなく、あれは自分の体にとって必要な療養だったと今は感じています。ともあれ、4月には受験勉強に臨む状態に整ったのでした。

教科書を端から端まで読み続けた

 専門学校は1年間の通学コースでした。学校までの交通が不便な場所に住んでいましたが、精神保健福祉士に関する知識も何もない状態でしたので、日頃から学校という場に行って受験に関する情報にふれられるところにいる必要性を感じたということです。

 1年間で共通科目と精神専門科目のすべてを修めるだけあって、毎日の時間割は目いっぱい埋まっていました。土曜も含めて1日平均4コマの授業があり、前後期の実習も組み込まれていて、夏前に早くも就職相談面談が設定されていました。さすがに厳しいかもと初めは思いましたが、通学を始めると、いやそれほどでもないかなと思えるようになりました。仕事を辞めて勉強だけに集中できる環境があるということ、また元々こつこつと勉強をするのはわりと得意なほうだったこともあって、自分でも意外なほど順応していました。

 初めの時期に特に力を入れていたのは、教科ごとに渡されていた教科書をよく読むことでした。それをしなければいけないから読むというよりは、どういうことを知っておく職種なのかがよくわからなかったのと、それぞれの教科書に登場してくる事柄をほとんど知らないだけに新鮮で、興味をもって内容を吸収する気持ちになれて、基礎学習の効果を高めてくれたようです。

 このときには、その年の正月明けから苦しめられた心身の不調が嘘のように消失していたことも奏功しました。当時はあまり意識しませんでしたが、人間にとって日々の暮らしを営む環境がいかに大事であるかをこれほど明瞭に表した変化はないと思います。

夏前に基礎知識への手応えを得た

 夏休みに入る前には、教科書に書かれていることはある程度理解できている心持ちになっていました。教科書のボリュームが充実していたので、それだけに集中して他の知識にふれることがなかったのも、自分なりの手応えにつながっていたことを後で気づかされることにはなりましたが。

 8月から9月にかけて希望者に案内されていた学外の国家試験対策講座を受講し、そこで新たな教科書を購入することになりました。学校の教科書よりは薄めで、ポイントに重点が置かれた内容でした。そこで元々の教科書にはなかった知識を補強する形となり、その頃から教科ごとにポイントをノートにまとめることを始めました。このマイノートは、11月から12月にかけてぐっと厚みが出てきました。知識の習得が進んだからこそ引っかかってくる内容、周辺の重要知識というのがあって、それらを受験勉強の後半時期に獲得できたのは、試験の合否に大いに関係したと思っています。

過去問は実力試し、ワークブックは知識の補強

 学校で和気藹々と周囲と話をすることはあまりありませんでしたが、何人か話しやすい友達ができて、受験勉強の進み具合などをお互いに話すことはありました。学校の先生からも、教科書とは別に受験参考書をいろいろ紹介されました。

 そのなかで有力視されていたのは、ワークブックや過去問解説集などの国家試験対策本でした。いずれも学校入学時から推薦図書一覧の中に案内されていましたが、私は当時、それらは基礎的な勉強を行った後に取り組むものと考えているフシがあって、あまり意識に入ってきませんでした。

 しかし、友達との話や学校の先生からの話の中に、この内容はワークブックのどこに載っているとか、過去問で0点科目が考えられそうな科目をチェックとかいろいろ出てくるのがさすがに気になるようになり、9月後半になってワークブックと過去問解説集を購入しました。各出版社からいろいろなタイプが出ていましたが、いちばん分厚かった中央法規出版の参考書にしました。

 過去問解説集はとても役に立ちました。ちょうどそろそろ実力試しをしたいと思っていた頃で、学校で行っている小テストよりもっと広い範囲で科目全体の知識を確認できるものを求めていました。やってみると、試験の中だけに登場している知識があったり、内容がわかっていても出題形式によって回答しづらい部分を確認できたりと、得点を得るためのテクニックのようなものを意識する機会になりました。

 ワークブックは、試験に出やすい重要な事柄が出題基準ごとに整理されていて、ポイントや知識の抜けを確認する教材としてよくまとまっていると思いました。これをやり込むだけで、かなり知識を持てるように思います。ただ、ステップとしては、はじめに時系列的でまとまり的な基礎学習があった上で取り組んだほうが理解しやすいと思います。それぞれの項目で書かれていること同士の関係というのは、ワークブックだけではわからないので、きちんと理解しようと思ったら、教科書に戻って確認する必要が出てきます。

12月中にだいたい整った

 受験勉強に臨む体制としては、12月の年内にだいたい整ったような手応えをもっていました。学んでいないこと、知識として持っていないことはたくさんあって、それらと出合うたびにノートに書き込むことの連続でしたが、だいたい何がポイントで、こういうことが問題として出されるだろうというテーマやそこでの重要な事柄はまずまず押さえられている感触がありました。

 模擬試験も受けてみて、合格圏内にいることを確認できました。時事に関する問題が出やすい保健医療サービスは要注意とか、長文事例問題は事例の中身を理解するのにけっこう時間を要するとか、実際の試験でどんなふうに問題を解いていくかという、心の準備も徐々にできていったようです。

出来はよし

 試験本番の手応えは上々、とまではいかなかったのですが、当日に答え合わせもして、たぶん合格できたと思いました。看護師の試験を受けたときも、わりと淡々と臨んで結果を手にできましたが、試験直後の感触や気持ちのありようなど似ていたように思います。

 試験後は、3月半ばの結果発表を待たずに、就職先として内定をいただいていた法人のグループホームに勤め始めました。まだ専門学校のほうで後期実習の報告書作成なども残っており、慌ただしい1か月余を過ごしました。

 試験の結果はインターネットで見ました。合格を知ったときは、とてもうれしかったです。大丈夫とどんなに強く思っていても、実際に結果を手にするとすごくうれしいんですよね。

 計画的に取り組めば、受験そのもののハードルはそれほど高くない試験だと思います。皆さんもがんばってみてください。

経験は活きると信じて

 以下は後日談です。その後、グループホームは正職員として勤め始めて1か月ほどで辞めてしまいました。勤め先は、実習でいくつか見て回った施設種別のなかで、高齢の方が多いと感じ、また生活面を支えるイメージを持ったグループホームを選んだわけですが、ある男性入居者の言動が気になり、すぐに勤めるのが難しくなりました。私自身の弱さもありますし、ご縁が薄かったのだと思うことにしました。

 この先は高齢福祉に関係するところで仕事をしたいと考えています。精神保健福祉士の資格を目指す過程で得られる知識というのは、病気のことに関しても援助の技術に関しても領域を問わずさまざまな場面で活かせると思っています。どういう現場なら自分自身をよく活かせるのか、これまでの経験もふまえて見つけていきたいと思います。