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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第58回 Bさん

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動機について

 就労支援の事業所で働いています。この仕事に就いてかれこれ10年です。もともと定職を持たず、バイトしては辞めてということを繰り返していたところに、ちょっと手伝ってほしいと声をかけられ、無資格でしたが生活支援員の名でお世話になり始めたのが発端です。当初は精神障害のことなんてまったくわからず、かといってそういう人たちを特別な目で見る感覚もあんまりなく、厳しく時間管理されない条件面に気軽さを感じて、気づくとけっこう長いこと事業所の労働力になっていました。

 資格がなくても事業所に居続けられるのはわかっていて、所長も無資格でバリバリやってるくらいなので、何かに迫られての受験ではありません。受けてみたのは、ストレートに言って興味からです。何年か前、「精神保健福祉士」の人たちが大勢参加する大会にうちのような事業所がブースを設けて出展する機会があって、そこである人から、資格を取る予定はあるんですかと聞かれました。ないと答えたら、なくてもできますもんねと、たぶん話をあわせてくれたのだと思いますが、そのあと何か煮え切らない思いが残りました。なったら今と何か変わるのかとか、資格を持つとすごいのかなとか、その程度のものでしたが、資格を取るために勉強することを想像したら、自分にはありえない姿のように思え、でもそれがまた新鮮で惹かれる思いが出てきました。所長に話すと、うちではみんな一緒だからなと言われ、でも反対する様子でもなく、ならやってみようという軽い気持ちです。資格を取ったら、何かいいことがあるようにも思っていたと思います。

目指し方について

 うちの事業所は午後3時には利用者の人もほとんど帰り、仕事らしい仕事がなくなります。ただ、スタッフの人数は少なく、資格を取るなら通信教育以外は考えられませんでした。スクーリングがあると聞いたので、その期間は休むことを所長に話し、専門学校は家から遠くなり過ぎないところを選びました。受験資格を得るまでに2年かかるのは長いなと思いました。それと、どんな勉強をするのかよくわからないのも不安でした。勉強なんて学生時代からとにかくやらないで済むようにくぐり抜けてきたので、半分は自分なんかできっこないと思っていたフシもあります。このためにきちんと筆記用具を買い揃えたとき、試験に受かったような気持ちになったのは不思議でした。

日常の勉強について

 学校教材は教科ごとに1冊ずつあり、初めにこれを受け取ったときは、全部覚えれば合格できるんだなと変に意気込み、一日何ページと決めて丸暗記しようとしました。十何冊ある分厚い教科書を全部ソラで言えたら自分が一番だと本気で思い、2週間ちょっと続けたと思います。よくやったと思います。でも、全然覚えられなくて、途中からは暗記してはたして意味があるのかもよくわからなくなり、おまけに仕事から帰ってきたらやはりテレビとか観たいので、あっさりと断念しました。

 定期的に提出することになっていたレポートの作成は困りました。教科書のここからここまで書かれている内容がどうやら該当しそうだと当たりをつけたあと、そこに書かれている文章を少し変えてそれっぽくするのですが、そういう教科書の中でまとまりになっている箇所を次のまとまりにつなげる作業がうまくいかず、そこの体裁を整えるのに何時間もかけたりしました。自分の意見や見解を示せるように持っていくのも至難の業で、これはだめだと思ったら、関係なくても海外の事例とかインターネットから抜き出してきて、格好がつくように見せていました。不真面目に聞こえるものと思いますが、自分としては精一杯取り組みながら行き着いた方法でした。

試験対策について

 本屋で売られている問題集は、学校の1年目に買っていました。制度が変わったりして受験する年度にもう一回買い直さなくてはならないことを知っていたら買わなかったかもしれませんが、問題集や参考書は学校の教科書と違い、試験に出やすいテーマやその中の重要な語句が強調された作りになっているので、眺めているだけである程度頭に入ってくるメリットがあります。そうして見ていくと、覚えなくてはいけないものが自然と目に入ってきます。なかでは制度にとても苦労させられました。だいたい名称が長く、漢字だらけで似たようなものも多く、年を追って制度や事業の中身が少しずつ変わっていき、これでは頭にすんなりとは入りません。まあ、落とすための試験と考えれば、こういうところをハードルにするのは理にかなっているかもしれません。

 勉強でいちばん頼ったのは、過去問でした。実際に出題された問題をやって、それが解けているというのは、気持ちの面で落ち着きます。3年分くらい解くと、同じ問題は出ないにしても、こういうパターンで出てくるのだという心の準備が前もってでき、うまくいけば合格できるだろうと望みが出てきます。試験が近づいてきてからは、過去問を数回分コピーしておいて時間を計って繰り返し解きました。実際の試験に対するイメージがつくれ、回数を重ねるごとに得点も上がり、少なくとも前には進んでいるとの手応えをもっていたと思います。

私の秘訣=「速く解き、二巡目の直感にしたがう」

 試験本番はそれほど緊張しませんでした。落ちたらどうかなってしまうというわけではありませんでしたし、合格できたら儲けもの、くらいの感覚でした。専門科目のほうは、事例問題にかなり時間を使ってしまい、時間が足りなくなりました。あの長い事例をきちんと読みこなすにはある程度の読解力が必要です。あらすじをつかむのに手間取り、問題もどうとでも取れるような内容で、いずれもきちんとした根拠をもって回答できた自信はありませんでした。ただ、事例問題は、問いの出され方でこれはちょっと違うなと感じられるものがあるので、それを感じ取る感覚を頼りにするのも一つです。80問中24問が事例問題として出題され、事例問題以外でも事例形式で出題される問題があるわけで、事例をうまく攻略できると専門科目はだいたいいけるのかもしれません。

 共通科目は、取れた手応えがまるでなく、解いていくうちに一気にあきらめの気持ちになりました。ところが、早いうちにそういう精神状態になったことがかえってよかったようで、大して考えずにたぶんこっちとポンポン答えていき、それぞれの問題を2回目に見たとき、少しわかる感覚があり、それにしたがいました。

受かった可能性はあまりに低いと思い、答え合わせはせずに3月を迎え、思いがけず合格の通知が届いたときは、急に感極まって涙があふれました。感情のふるえ、喜びを自覚したとき、ああ自分はこの資格がほしかったんだと気づかされたくらいです。2年間がそれなりに厳しい道のりだったことの現れとも思います。

 今振り返って、試験の攻略法として言えることがあるとすれば、一つは長文の事例問題を短時間で読みこなす読解力をつけること、もう一つは自信がない問題ほど速く解いて一度答えを出してしまい、全問解き終わってから、二巡目でその問題を見たときの直感にしたがうこと、でしょうか。合格してしまったので、なんだかえらそうに聞こえたらあしからず。実際にはご紹介したとおりの劣等生です。

 資格を取って何かが変わったかといったら、何も変わっていないようです。でも一つだけ。チャレンジして目標を達成した。そうして手にした“自信”の分は、たしかに変わったようです。そしてこれはそれなりに大きい収穫のようでもあります。

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