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石橋亮一先生の受験対策講座・番外編~

“次回(第35回)”を見据えて
 その3~午後の勝負所は「障害の理解」~

 こんにちは。「番外編」と称して、3回に分けて記させていただきました。今回が、最終回となります。

医学関連の知識を中心とした午後の試験の中で

 介護福祉士は、国家資格ということもあり、その取得にあたっては、国家試験(筆記試験)で出題される、介護に関する知識・技術・理念について、まんべんなく理解し、正答することが求められます。
 一方、満点を取る必要はありません。私たちの人生で直面する他の試験と同様に、「8割正答する」ことを目指しましょう。ただし、前々回(その1)にお伝えした通り、介護福祉士国家試験では、どの科目とも“0点”は避けなければなりません。そこで、「午前」に出題される「社会の理解」は、十分に気をつけて早め早めに学習することを、前回(その2)までに助言しました。
 ところで、筆記試験当日の「午後」は、こころとからだのしくみ領域から4科目・40問、医療的ケア領域から1科目・5問、そして総合問題として4事例・12問が、例年出題されます。午前からの負担がつのり、疲労感が増す午後において、難しく感じる医学関連の知識を中心とした試験時間では、集中力が途切れそうな瞬間もあることでしょう。
 そのような中で、勝負所として留意していただきたい科目が、「障害の理解」です。

「障害の理解」のポイント

 この科目では、障害者総合支援法の利用者にかかる、若くして介護の原因となる、様々な障害とその特徴などについて出題されます。学習範囲が広く、障害者分野よりも高齢者分野のもとで実務経験を積む介護福祉職が比較的多いこともあり、苦手と感じる受験者が多いです。“0点”になる可能性も否定できません。
 ついては、「障害の理解」で出題される事柄を、以下に列挙します。今後、受験勉強を再開する際に、一つひとつ学んでいきましょう。参考までに、第34回国家試験(筆記試験)で出題された箇所も示します。

障害者分野の法律など(「障害の理解」問題87)

□ 障害者基本法
□ 障害者総合支援法(「障害の理解」問題94、95)
□ 障害福祉サービス(障害者総合支援法が適用されるサービス)
 (「社会の理解」問題12、13、「総合問題」問題122)
□ 身体障害者福祉法
□ 知的障害者福祉法
□ 精神保健福祉法(「総合問題」問題117)
□ 発達障害者支援法
□ 手帳制度(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)
□ 障害者の権利に関する条約
□ 障害者差別解消法

障害のとらえ方・障害者分野の理念

□ ICF(国際生活機能分類)(「介護の基本」問題20)
□ ノーマライゼーション
□ リハビリテーション(全人間的復権)

身体障害

□ 視覚障害とその原因となる病気
 ・網膜色素変性症
 ・糖尿病性網膜症
□ 聴覚障害
□ 言語障害とその原因となる病気
 ・脳血管疾患(脳卒中)(失語症)

□ 肢体不自由(上肢、下肢、体幹の障害)とその原因となる病気
 ・脳性麻痺(「総合問題」問題123)
 ・脊髄損傷(頸髄損傷、胸髄損傷、腰髄損傷)(「生活支援技術」問題36)
 ・脳血管疾患(脳卒中)(片麻痺、半側空間無視)
 (「生活支援技術」問題49、「障害の理解」問題88)
□ 内部障害とその原因となる病気
 ・不整脈など(心臓機能障害)
 ・慢性腎不全など(腎臓機能障害)(「生活支援技術」問題45)
 ・慢性閉塞性肺疾患(COPD)など(呼吸機能障害)
 ・大腸がんなど(直腸機能障害)
 ・エイズ(AIDS)(免疫機能障害)

精神障害

□ 内因性(統合失調症、躁うつ病など)、外因性(アルコール依存症など)、
  心因性(神経症など)
□ 統合失調症(陽性症状・陰性症状)
□ 躁うつ病(躁状態・うつ状態)
□ 高次脳機能障害

知的障害(「障害の理解」問題89)

□ 知的障害とは(知的な発達が全般的に遅れているもの)
□ 生理型、病理型(ダウン症候群など)
□ 合併症(てんかん、難聴など)

発達障害

□ 自閉症スペクトラム障害
□ 限局性学習障害(SLD)
□ 注意欠陥・多動性障害(ADHD)

難病

□ 脊髄小脳変性症
□ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
(「障害の理解」問題90、「総合問題」問題120、121)
□ 関節リウマチ
□ パーキンソン病(「障害の理解」問題92)

その他

□ 中途障害者の障害受容の過程(「障害の理解」問題91)
□ 介護する家族に対する支援・レスパイトケア(「障害の理解」問題96) など

 上記を見ると、障害に関する知識などは、「障害の理解」以外の科目でも出題されています。「障害の理解」を学習することにより、他の科目でも得点できるようになります。

日頃から時事問題にも関心をもつ

 最後に一つ、“次回(第35回)”を見据えて、助言をさせていただきます。

 日頃から、インターネットや新聞記事などに目を通し、「時事問題」にも関心をもちましょう。

 第34回の国家試験(筆記試験)では、以下のような事柄が、設問に盛り込まれていました。

  • ・問題2(事例問題):8050問題(80代の親が、ひきこもっている50代の子どもの生活を経済的に支える家庭状況と、そこで引き起こされる問題)
  • ・問題15:保健所(コロナウイルスなどによる感染症の予防や対策などを行っている行政機関)
  • ・問題17(事例問題):性同一性障害(産まれもった身体の性と心の性が一致しない状態。LGBT〔性的少数者〕の一種)
  • ・問題21(事例問題):ヤングケアラー(本来大人が担うことが想定される、家事や家族の介護などを日常的に行っている18歳未満の子ども)
  • ・問題26:ハラスメント(相手の意に反する行為によって不快な感情を抱かせることであり、「嫌がらせ」を指す)
  • ・問題71:人生100年時代(寿命が今後100歳前後まで伸びていくにあたって、国や組織、個人が、そのあり方や道筋の見直しが迫られているという状況)

 実のところ各設問は、時事問題について詳細な知識を持っていなくても、受験勉強の積み重ねや、介護福祉職としての望ましい対応などを思い起こすことで、正答することができます。そうであっても、時事問題について関心をもち、多少ともその知識や情報などを得ておけば、戸惑わず冷静に余裕をもって、解答することができるでしょう。

 前述した「障害の理解」に関しても、昨年・今年に開催されたパラリンピックは、時事問題の一つといえ、様々な障害の理解を高める機会になるかと思います。

 ここまで、お読みくださりありがとうございました。三寒四温が伴う季節の変わり目につき、引き続き、体調に気をつけておすごしください。