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石橋亮一先生の受験対策講座・番外編~

“次回(第35回)”を見据えて
その2~合否を分ける「社会の理解」(後半)~

 こんにちは。今回は、「社会の理解」で出題頻度が最も高く、他の科目でも出題される、介護保険制度の基本的な仕組みについて説明します。基本を理解することで、より細かな事柄が分かり、様々な出題(第34回の問題10、問題22、問題116など)にも対応できます。また、同様の仕組みである障害者総合支援法の理解にもつながります。

介護保険制度の仕組み

  • 目的(介護保険法第1条):介護保険法は、加齢に伴って生じる心身の変化に起因する疾病などにより要介護状態となり、入浴、排泄、食事などの介護、機能訓練、看護、療養上の管理その他の医療を要する者などについて、尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう(すなわち自立支援の視点で)、必要な保健医療・福祉サービスにかかる給付(税金や保険料で補助すること)を行うため、国民の共同連帯の理念に基づいて介護保険制度を設け、国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

    ⇒介護保険は、加齢、すなわち老いて介護が必要な利用者が使える制度です。別の科目「人間の尊厳と自立」で学ぶ、利用者の尊厳保持と自立支援を明記していることも、知っておいて下さい。
  • 保険者:実施主体(制度の責任者)で、市町村及び特別区(以下、市町村)。保険給付に関する事務を行う。

    ⇒保険者は、制度の責任者であるとともに、制度の申し込み先と理解の上、市町村及び特別区(東京23区)と、覚えて下さい。都道府県は「×(誤り)」、国は「×(誤り)」です。
  • 被保険者:制度を利用できる者。市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者を第1号被保険者、市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者といい、住所のある市町村(保険者)の被保険者となる。

    ⇒被保険者は、介護保険料を支払っている人とも理解し、第2号被保険者は、「…医療保険加入者」まで、しっかり覚えます。介護保険は、40歳から使えるのですね。
  • 要介護(要支援)認定:市町村に申請。認定調査などを経て決定される要介護度は、7段階(要支援1・2、要介護1~5)。要介護認定の結果は、(保険者すなわち責任者である)市町村が被保険者に通知する。

    ⇒介護保険を利用したい利用者(被保険者)・家族は、住所のある(住民票のある)市町村(保険者)に申し込み(申請)を行います。受け付けた市町村は、認定調査といい、訪問による介護の状況調査を実施。あわせて、主治医意見書といい、利用者の主治医に連絡し、診断書のようなものを取得。それらの内容を検討の上、認定(要介護度を決定)します。皆さんの仕事が、介護保険制度下のサービスを提供している場合、利用者は、この要介護(要支援)認定を受けています。
  • 介護給付:要介護1~5に認定された被保険者が利用できる。都道府県が指定・監督を行う居宅サービス、施設サービス(介護保険施設ともいう)と、市町村が指定・監督を行う地域密着型サービスや居宅介護支援がある。
  • 予防給付:要支援1・2に認定された被保険者が利用できる。都道府県が指定・監督を行う介護予防サービスと、市町村が指定(開業・開設を認めること)・監督を行う地域密着型介護予防サービスや介護予防支援(地域包括支援センターで実施)がある。

    ⇒介護保険が適用されるサービスは、その売上の原則9割を、国民が支払っている税金・介護保険料からもらいます。税金などは、劣悪なサービスには使えません。そこで、良質なサービスを提供するよう、サービスを提供する事業所・施設に対して、行政(都道府県・市町村)が指導・監督を行っています。そして、この指導・監督業務は、都道府県と市町村で役割分担して行っています。地域密着型(介護予防)サービスが、市町村の担当なのは、地域密着型(介護予防)サービスの利用者が原則、市町村内に住所がある利用者(被保険者)を対象としているからです。
  • 利用者負担:原則定率1割自己負担。一定以上の所得がある第1号被保険者は、2割負担または3割負担。ケアマネジャーによる居宅介護支援と介護予防支援は、全額保険給付され、自己負担は無い。

    ⇒利用者(高齢者)の中には、利用料金の2割、3割を自己負担している方もいるのですね。
  • 居宅サービスには、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護などがある(介護予防サービスにおいても、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護などが同様にある)。地域密着型サービスには、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護など9つ、地域密着型介護予防サービスは、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護(要支援1は対象外)の3つがある。また、施設サービス(介護保険施設)には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設がある(要支援の者は対象外。介護老人福祉施設の新規入所者は原則として要介護3以上)。

    ⇒介護保険制度下の全サービスの一覧は、今後、受験参考書にて目を通してください。また、「介護の基本」では、各サービスの内容などについて出題されます。>
  • ○利用者(被保険者)の苦情(不服)について、事業者・施設によるサービスに関するものは、国民健康保険団体連合会で対応。一方、市町村(保険者)による要介護(要支援)認定などに関するものは、介護保険審査会で受け付けており、両者とも都道府県に設置されている。

    ⇒利用者・家族からの苦情については、まずは現場(事業所・施設)で対応します。一方で、現場で解決しないことなどについて、利用者・家族は、都道府県にある団体に言えるようになっています。
  • ○利用者の介護生活の相談にのり、必要なサービスを手配する介護支援専門員(ケアマネジャー)において、訪問系、通所系、短期入所系、福祉用具系などのご自宅に居る利用者向けのサービスは、居宅介護支援あるいは介護予防支援のケアマネジャーが手配。一方、施設サービス(介護保険施設)や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)に入所・入居・入院している利用者に対しては、その施設・ホームのケアマネジャーが、施設・ホームの介護職員等によるサービスを手配する。

    ⇒介護支援専門員は、ケアマネジャーの別名でもあり、ケアマネジャーという仕事をするために取得が必要な公的資格名でもあります。
  • 地域包括支援センターには、社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員を配置。包括的支援事業(介護予防ケアマネジメント業務、総合相談・支援業務、権利擁護業務〔虐待防止などにかかる業務を含む〕、包括的・継続的ケアマネジメント支援業務、在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の推進、地域ケア会議の推進など)を実施している。

    ⇒地域包括支援センターは、介護保険の被保険者やその家族が利用できる、「介護や介護予防などに関する何でも相談機関」と理解して下さい。要介護・要支援になる前から、相談できます。いよいよ支援・介護が必要になった際、介護保険の申し込み(申請)もできます。介護予防支援も行っています。

 いかがでしょうか。受験に際しては、早め早めに、法律とその学習に、慣れ親しんでいくことをおすすめします。介護保険制度をはじめ、出題頻度の高い法律については、4月から連載する「石橋先生の受験対策講座」にて、改めて一緒に学びましょう。