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150人の多彩な執筆者による解説


 こころの問題を幅広くカバーするのが本白書で、毎年晩秋に刊行しており、今年で10年目になります。

 統合失調症、うつ病、アルコール依存症といった精神疾患から、自殺、いじめ、危険ドラッグ、ネット依存、生活困窮者といった、いま話題となっているメンタルヘルスの問題まで、さらに、福祉・司法・就労支援・文化・教育等に関係する広範囲な領域から150項目ほど取上げ、各項目1頁でコンパクトに解説しています。

 執筆には第一線の著者をそろえ、厚生労働省の担当官や研究者・実践者のほか、精神保健福祉センター長会、保健師長会、臨床心理士会、精神科看護協会、精神保健福祉士協会といった各団体の会長や理事、それに国立精神・神経医療研究センターの総長からお笑いコンビの松本ハウスまで、約150人の多彩な執筆者によって解説されています。

 本書の内容を具体的にお伝えするため、「うつ病」の項目を紹介しておきます。

 うつ病の原因は不詳で、いろいろな仮説がありますが、最近提言された栄養学的仮説では、糖質過剰摂取、グルテンに対する過敏性、脂質摂取のアンバランスなどの脳への影響が指摘されています。これは、20世紀後半の「緑の革命」(高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の大量増産が可能となった)以降の炭水化物に依存した現代の食生活によるところが大きいと言えるとのことで、およそ1万年前に農耕が始まって以来、現代人に引き継がれた遺伝子はいまだ炭水化物(穀物)に適応していないと言えるかもしれない、と記しています。

 治療は薬物療法が主となりますが、うつ病患者のおよそ3人に1人は薬の効果がはかばかしくありません。非薬物療法や生活習慣調整も組み合わせた包括的治療が重要になってくるのですが、最新の治療法として、副腎への鍼灸や脳への電気刺激(rTMS:反復性経頭蓋磁気刺激法)を紹介しています。

 本書は、テキストよりコンパクトに、辞典よりは詳しく、最新の情報を収載しています。精神科医療や精神保健福祉・メンタルヘルスに興味のある方、この領域を学ぶ学生の方、また実際に臨床や現場で実践されている方や、自治体などの行政関係の方にも、現状を知るために、さらに今後の展開を考えていくために、資料として毎年活用できる白書です。

(中央法規出版 第1編集部 澤誠二)

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