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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

家族の気持ちに出会えるか

 先日、私の勤務する特養で、家族懇談会を行いました。
 入居者全体の約半数の家族が参加して、施設側から組織のビジョンや今後の事業運営について説明をしました。

 自分のお父さま、お母さまを特養へ入居させるということ……おそらく葛藤があったことかと思います。
 自分を愛し、育ててくれた大切なお父さま、お母さま。誰だって、できれば一緒にいたい。最後の時までそばにいてあげたい。そう思うものです。
 しかし、さまざまな事情があり、それが叶わなくなります。家族は考えます。悩みます。苦しみます。そして、やむを得ず施設への入居という選択をするのです。

 私たち職員は、そのような家族の気持ちに出会えているでしょうか。

 特養という所は、比較的大規模な所が多く、私の勤務する特養も80名の入居者が生活しており、年間20名近い方の入退居があります。平均すると、月に1人以上の方と出会い、別れるのです。
 80名内の1人の入れ替わり。もちろんそうですが、この世には1人として同じ人はいません。それぞれが違う環境で育ち、それぞれに生きてきた歴史があり、家族がいます。

 90歳の方が新しく入居されました。戦争が終わった時19歳でした。人生の一番楽しい時期を戦争と戦後の混乱のなか生きてきました。仕事、結婚……子育ても大変だったことでしょう。懸命に働いて、家を守って、激動の時代を振り落とされることのないようしがみつくように生きてきたのです。
 時代は変わりました。昔のように大家族で生活する時代ではありません。国の情勢も変わりました。家族と同居するには、今の時代あまりにも条件が厳しいです。  しかし、いくら時代は変わっても、親が子を想う気持ち、子が親を想う気持ちに変わりはありません。離れるのは辛い。ずっと一緒にいたい。だけど、残酷な現実にそれが叶わなくなるのです。
 そして、私たちは出会います。

 目の前にいるお年寄りは、最初からお年寄りだったわけではありません。誰かの大切なお父さま、お母さま。そんな家族の想いを知って、介護にあたりたいです。
 そのためにも、家族がもっと施設に話をしやすい関係を、要望を言える信頼を――私たちは、家族の気持ちに出会えているか。常に考えていたいです。