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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

メジャー・マイナー制で先んじる

 このブログは週1回更新されます。ですから私は、1週間のなかで出会った何かに触発されて記事を書いています。今週は、新潟の女児殺害事件です。本当に言葉を失いますが、事件が起きる前に、多くの不審者の目撃情報があったことが気になりました。

 もしこの目撃情報の多くが容疑者のことであるなら、事前に何とか手は打てなかったのかという思いにかられるからです。虐待の問題でも、発生予防は重要課題ですから、考え込まずにはいられません。

 発生予防に関するという点では、若者の自殺率が高いわが国で、自殺願望のある若者向けのSNSによる相談対応が増加していることも目をひきます。読売新聞(5月13日付朝刊)によると、神奈川県座間市の9人殺害事件を受け、若者に身近なSNSの活用が急速に拡大しつつある一方、多くの自治体がノウハウや人手の不足を課題に挙げているそうです。

 以前、NPO法人の活動をしていたときに、電子メールによる相談に携わっていましたし、今でも、電子メールによる相談を受けています。ですから、文字情報だけのやりとりは、非言語的なコミュニケーションが制限され、対面による相談とはかなり趣が異なるため、ノウハウの蓄積やトレーニングを必要とするのは頷けます。

 しかし、需要に追いつかないというのは残念ですが、明るいニュースもあります。それは、文部科学省が来年度から、メジャー(主専攻)・マイナー(副専攻)制を本格導入し、工学系の大学や大学院で工学を専攻する学生が、欧米同様、文系理系の枠を超えて幅広い分野を副専攻として学べるようにする、というものです(5月15日付読売新聞朝刊)。

 たとえば、主専攻で情報学を、副専攻で医学を学んでいる学生であれば、医療データ解析やAI医療の分野で活躍するようになれる、というわけです。そこで、医学の部分を、防犯や虐待予防にしたなら、犯罪や虐待のデータ解析やAI防犯・虐待予防の分野の人材が輩出できるのではないか、と期待は膨らみます。

 また、メジャー・マイナー制は、行政や福祉施設といった仕事組織にも導入すると良いように思います。というのも、そうした組織に所属する総合職(ジェネラリスト)と専門職(スペシャリスト)には、異なる特性があり、求められることも異なるからです。

 たとえば、「広く浅く」が求められるジェネラリストの養成では、数年ごとに違う分野に異動して、多分野での仕事を経験することになります。一方、「狭く深く」が求められるスペシャリストの養成では、一箇所に長く留まり、その分野を極めていけるようにします。

 そこで、メジャー(主担当)とマイナー(副担当)を持てるようにすれば、中ぐらいの広さと中ぐらいの深さの中間層をも担うことができる人材を養成することができ、両者の欠点を埋められるのではないか、というわけです。

 もちろん、仕事ですから、個人の好みに委ねるわけにはいきません。高齢者福祉課から都市計画課に異動になるときには、主担当は都市計画に、副担当は高齢者福祉にするなど、工夫は必要です。

 しかし、こうすれば、経験してきた分野を掛け合わせた創発が起こりやすくなり、個人としても、組織としても、一歩先を行ける気がします。

「主担当はおっかけ、妻は副担当!」
「夫は家事のスペシャリスト?」

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