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認知症とは?
種類・症状に合わせたかかわり方のポイント

【認知症の初期症状】
物忘れが増えるのは認知症のサイン?

「最近、利用者さんの物忘れがひどくなってきている気がする」
「利用者さんがよく日付や時間を間違える」

高齢になると、物忘れが増えていきます。
不安なのは、それが「認知症なのではないか」ということです。

確かに、認知症になると新しいことを覚えられなくなったり、今日の日付がわからなくなったりします。
加齢による単なる物忘れならよいのですが、認知症であれば早めに対処することで、不安を減らし、過重な介護負担になるリスクを低くすることができます

そこで、本記事では認知症の初期症状について説明し、加齢による単なる物忘れとの違いについて解説します

この記事を読むと・・・
◆ 認知症の初期症状と加齢による物忘れとの違いがわかる
◆ 認知症の種類ごとの特徴がわかる
◆ 認知症のある人へのかかわり方がわかる
目次

認知症とは?発症の原因は?

認知症とは、脳の病気や障害などのさまざまな原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態のことをいいます。

認知症の原因となる病気には、多くの種類があります。

最も多いのは、脳の神経細胞が壊れてしまうことにより発症する変性疾患です。

変性疾患による認知症の代表的なものとして、アルツハイマー型認知症レビー小体型認知症前頭側頭型認知症があります。

また、脳梗塞や脳出血などによって血液の流れが途絶えてしまったときにも、脳の神経細胞は壊れ、認知症の症状が現れることがあります。

このような血管障害による認知症を、血管性認知症といいます。

「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」「血管性認知症」の四つは、認知症のなかでも代表的なものであり、四大認知症と呼ばれます。

脳の神経細胞が壊れて脳の萎縮が進むと・・・

認知症の初期症状とは?

認知症について、初期症状を正しく理解しておけば、ケアの方針を立てやすくなるほか、症状をやわらげることができる場合もあります

初期症状や進行のしかたは、種類ごとに違います。
ここでは、四大認知症について見ていきます。

アルツハイマー型認知症の初期症状

  • ・何度も同じことを言う、尋ねる
  • ・以前よりも怒りっぽくなる
  • ・活動への意欲が低下する
  • ・服装などの身の回りのことに無頓着になる
  • ・計画を立てられなくなる
  • ・人や物の名前を思い出せなくなる

このような症状から始まり、スロープを落ちるように徐々に進行するのが特徴です。

レビー小体型認知症の初期症状

  • ・便秘になる
  • ・嗅覚が低下する
  • ・人や動物、虫などの幻視がある
  • ・睡眠中に大声を発したり、暴れたりすることがある
  • ・気分が落ち込む
  • ・動作が全般的にゆっくりになる

このような症状から始まり、調子のよいときと悪いときなど症状に波があり、徐々に進行するのが特徴です。

前頭側頭型認知症の初期症状

  • ・同じ行動を繰り返す
  • ・社会性が欠如し人格が変わったようになる

40~50代から発症することが多く、スロープを落ちるように徐々に進行するのが特徴です。

血管性認知症の初期症状

  • ・計画立てて物事を進めることが難しくなる
  • ・物忘れが増える
  • ・動作が全般的にゆっくりになる
  • ・感情のコントロールが難しくなる

脳出血や脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病などの基礎疾患を伴うことが多いのが特徴です。


「加齢による物忘れ」と「認知症」を見分けるポイント

記憶機能は、加齢により低下していきます。

たとえば、「次回の通院はいつだっけ?」「どこに杖を置いたっけ?」と忘れてしまう利用者さんは多いのではないでしょうか。

こうしたことが一日に何度もあると、「もしかしてこの利用者さんは認知症なのかな?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、「加齢による物忘れ」と「認知症」は別のものです

ここでは、これらを見分けるための3つのポイントを紹介します。
見分けることが難しい場合も多々ありますが、一つの目安として活用してください。

ポイント❶ 体験そのものを覚えているかどうか

加齢による物忘れ 認知症

体験自体は覚えている

(例:夕食のメニューは忘れているものの、夕食を食べたことは覚えている)

体験そのものを忘れる

(例:夕食を食べたこと自体を忘れ、「ご飯はまだか」と尋ねる)

ポイント❷ ヒントによって思い出せるかどうか

加齢による物忘れ 認知症

ヒントによって思い出せる

(例:「○○を食べましたよ」と教えてもらうと思い出すことができる)

ヒントがあっても思い出せない

(例:教えてもらっても思い出すことができず、「食べていない」と言い張る)

ポイント❸ 忘れたという自覚があるかどうか

加齢による物忘れ 認知症
忘れたという自覚がある
忘れたという自覚がとぼしい

「認知症かも」と思ったら……

認知症は、早期に発見して適切な治療を行うことで、進行を遅らせたり、症状を緩和できたりする場合があります。

また、早期に診断がつけば、症状が軽い段階で今後の生活についてじっくり考えることもできます。

そのため、日々の介護のなかで、利用者さんの言動に「いつもと何か違う」「認知症かもしれない」と感じた場合には、ためらわずにすぐに医療職に報告・相談するようにしましょう

*   *   *   *

(監修)石川 容子 氏
 医療法人社団 翠会 和光病院 看護部長

日本看護協会看護研修学校認知症看護学科修了、認知症看護認定看護師取得。千葉大学大学院看護研究科修士課程修了。 認知症専門病院である、医療法人社団 翠会 和光病院にて、認知症看護のスペシャリストとして活躍。

石川 容子 氏

※この記事は、「おはよう21」2021年4月号増刊pp.8~23をもとに作成したものです。

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