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高室成幸のケアマネさん、あっちこっちどっち?

高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

全国津々浦々、研修・執筆・アドバイザー活動を神出鬼没(?)・縦横無尽に展開する高室成幸さん(ケアタウン総合研究所)。
研修での専門職との出会いや、そのなかでの懇親的な現場を届けます。

プロフィール高室 成幸 (たかむろ しげゆき)

ケアタウン総合研究所所長。
日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』『新・ケアマネジメントの仕事術』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

ICFとCADL~主観的体験をアセスメント領域化~

 介護保険が導入された2000年の翌年の2001年に「ICF(国際生活機能分類)」がWHOで採択されました。今回は、ICFと私が提唱する「CADL」の関係性について書こうと思います。
 私が推薦したいのは、ICFについてわかりやすく書かれたブックレット「ICFの理解と活用」(上田敏著:きょうされん発行)です。


 ICFの前は「ICIDH(1980年)」でした。「国際障害分類」といわれ、障害のレベルを3つ((1)機能・形態障害⇒(2)能力障害⇒(3)社会的不利)に分類しました。これは100年近く続いていきた「ICD(国際疾病分類)」と比較すると画期的な分類として注目されました。


 しかし、発表後から批判と誤解があったと上田先生はいいます。
 矢印が「運命論的」である、矢印が「時間順序」のように見える、マイナス面ばかりに着目している、環境が考慮されていない、社会的不利の分類が少ない、障がい当事者が参加していない、欧米の文化が中心である、主観的障害が盛り込まれていない、などが指摘されました。

 そこで、1993年からWHOで改訂作業が始まり、8年後の2001年にICFが発表されます。写真のように用語と表記と矢印がまったく変わりました。


 上位概念に「健康状態」を位置づけ、それを支えるのが(1)心身機能・構造(生命レベル)、(2)活動(生活レベル)、(3)参加(人生レベル)とし、相互に作用しあう「双方向矢印」が使われているのが特徴です。
 そして私がとてもよいと思うのは、これらに大きな影響を与えるものとして「背景因子」を設定し、その1つが「環境因子」、もう1つが「個人因子」としました。

 つまり個人因子(個性)によって、不利な環境因子も克服できたり、あるいは活動や参加への困難性(障がい度)は異なるという考え方です。分類は将来の課題となっていますが、「年齢、性別、民族(日本なら県民性)、職業歴、学歴、家族歴、価値観、生活習慣、困難の乗り越え方など」の例が挙がっています。
 つまり同じ障がいの2人がいても、個人因子が異なっていれば、めざす生活や人生や満足感・達成感もことなるということが定義づけられたのです。


 しかし、画期的なICFも策定作業にかかわった上田先生にとっても「不完全だ」といわざるを得ないようです。それは「主観的次元」を盛り込めなかった点です。つまり主観的体験(主観的障害)は疾患・客観的障害の影響を受けるだけでなく、影響を与える、つまり相互に作用するものであると述べたそうですが、改訂作業に間に合わず、持ち越しとなったようです。


 文中では「ICFは客観的な分析には非常にいい枠組みだが、心の中をまったく考えてはいない、これでは問題の一面しかみていないことになる」と述べています。

 上田先生は「満足度」に注目しますが、それも主観的次元の一部であり不十分としました。そこで、総合的・包括的な主観的体験として次の3つを上げています。

  • (1)「人生の価値、生きる意味、生きる目標、生きる価値」(信念等)
  • (2)「身近な人との関係(愛する・愛される、感謝する・感謝される等)
  • (3)「集団への帰属感」(役に立つ、責任を担う、賞賛される等)
  • (4)「基本的生活態度」(自立心、困難への対応、自己決定等)

「みなさんが対象者を見るとき、その人の心の中にこういうものがあるはずだ、あるのではないかと思って見ることは非常に大事です」 と記述されています。
 まさに、私が提唱する「CADL(文化的日常生活行為)」は、(1)~(4)を包括するアセスメント概念としてキーワード化するものです。
 新著「新ケアマネジメントの仕事術」では、本人のCADLに着目し、その行為を行ううえで障害となっているのはなにか?を問い、その因子を「ADL,IADL、体力・体調、身体機能、精神機能(心理状態、意欲)、関係、環境」の各領域で分析し「サポートする手段と内容」を決定するプロセスを説いています。

 それまで「マイナス面重視」だったICIDHが「プラス面重視」のICFに進化したことは画期的な事でした。新たなアセスメント領域として提唱した「CADL概念」が現場で活用・実践されることで、ICFがさらに進化することが私の願いです。

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