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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

虐待防止のこれから

 先週の月曜日、東京都大田区の障害者虐待防止研修に講師として参加しました。大田区の虐待防止研修は、内容と研修会のあり方に工夫を重ねて開催しています。

東京都大田区障害者虐待防止研修-ミーティング

 大田区の研修は、初任者・中堅者・管理者の階層に分けて虐待防止研修を開催し、修了者にはステッカーを配布しています(2016年10月3日ブログ参照)。また、グループワーク・セッションを研修プログラムに入れ、虐待に発展しかねない不適切な支援への気づきから日常的な虐待防止の取り組みの実際を考えてもらう形にしています。つまり、アクティヴ・ラーニングを重視した進め方です。

 今年は、受講者がとても多いことから、グループワークにどうしても時間的制約がありました。それでも、支援者自身の日常的支援にある不適切事例をさまざまに出し合い、そこから支援の質を転換して虐待防止の具体的な実務とは何かを明らかにしていく研修会になったのではないかと考えます。

ミーティングを受けてのスーパービジョン

 このような研修会を実現するためには、準備作業に怠りない運営スタッフの努力があるものです。たとえば、初任者・中堅者・管理者の階層ごとの研修会のねらいをそれぞれに煮詰める検討を重ね、受講申込者に対しては研修会当日までにグループワークの発言準備を兼ねて、簡単なレポート作成を義務づけるなどです。

 「座学聞くだけの研修」から脱却して「アクティヴ・ラーニング型の研修」を作っていくためには、研修を企画する側に知恵と工夫が必要であることを示しています。講師「丸投げ」型の座学研修は、もはや時代錯誤の代物でしょう。

 さて、虐待防止研修の中で支援者から出される不適切支援の事例には、強度行動障害と愛着障害にかかわるケースが頻繁に登場します。すでに強度行動障害や愛着障害の状態像にある人への、適切な対処と虐待防止に向けた支援方針を明らかにすることはとても大切なことですから、それぞれの研修会の中でケースごとの方針はひとまず明らかにすることにしています。

 しかし、これからの虐待防止の取り組みには、もう一歩進んだ虐待防止に資する支援が地域全体の取り組みとして求められています。それは、強度行動障害や愛着障害の発生そのものを予防する取り組みです。

 この点にも関連して、今年度からの都道府県障害福祉計画・市町村障害福祉計画の策定と実施は、障害児福祉計画と一体のものとして進めることになったことに注目すべきです。これまで以上に、子どもから成人に至る切れ目のない支援の提供体制の整備を図ることが求められていることに、各自治体は留意する必要があります(平成29年3月31日雇児総発0331第7号・障障発0331第9号・府子本361「障害児福祉計画に係る障害児の子ども・子育て支援等の利用ニーズの把握及びその提供体制の整備について」)。

 強度行動障害や愛着障害は、障害特性とニーズの無理解に起因する不適切な相互作用の積み重ねの帰結として発生する「障害」ですから、これらの「障害」を予防するに足る「切れ目のない支援」の内容とシステムを構築することが重要です。

 くしくも、先週末の7月7日に埼玉県議会では埼玉県虐待禁止条例が成立しました。児童虐待への取り組みを条例で定めている自治体はこれまでに6府県ありますが、高齢者・障害者を含めた条例は全国初です(http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201707/CK2017070602000210.html)。

 条例を一読した程度の感想に過ぎませんが、この条例には大きく言って3つの可能性があると考えます。

 一つは、市町村における虐待防止体制の改善強化を推進する可能性です。

 子ども・障害者・高齢者に分かれた虐待防止法に基づいて、それぞれの領域ごとの虐待防止体制を構築することは、規模の小さい市町村ではとても困難が大きく、実質的には不可能とさえ思えるところもありました。全国のどこの都道府県においても、市町村のそれぞれが3領域にまたがる虐待防止体制を構築することには著しい困難があると受け止めてきたはずです。

 そこで、県が複数の市町村と連携を図り、例えば複数の市町村で運営される「○○地域虐待防止総合センター」を設置し、子ども・障害者・高齢者の別にかかわらず、必要に応じた迅速な虐待対応と地域全体の虐待防止策を推進できる体制整備を進めることが期待されます。

 もう一つは、子どもから高齢者までの虐待防止に取り組むことが、ゆりかごから墓場までの切れ目のない支援サービスについて、家族・親密圏のあり方との関連で明らかにしていく可能性です。若年期の虐待防止の徹底が進み、親密圏・家族の慈しみ合いの安定性を高めた度合いに応じて、高齢者虐待が減少していく可能性もあるでしょう。

 虐待防止に係る養護者支援の課題は、これまで福祉サービスの中で必ずしも重要視してこなかった「個人と家族の二重性」をもつ支援課題の総体を明らかにすることに通じています。養護者・家族支援の課題を含む介護・福祉サービスの量と質を明らかにすることが重要です。

 3つ目は、この条例が「児童又は高齢者に準ずるものに対する措置」を定めている点です。「児童又は高齢者以外の者であっても、現に養護を受けている者で、特に必要があると認められるものについては、児童又は高齢者に準じて必要な措置を講ずるよう努める」とあります。

 つまり、子どもから高齢者までのすべての人たちを対象に、障害のあるなしにかかわらず、「虐待を受けている」と認められるものについては、必要な措置を講じる可能性を拓いているということでしょう。人権保護に関する未成年保護と成年保護の切れ目のない一体的な取り組みがはじまる予感を抱かせてくれます。

 もちろん、これら3つの可能性は施策の立案能力と予算を伴う限りにおいて、はじめて実効性をもつことは言うまでもありません。それでも、工夫の仕方によっては、さほど大きな予算出動を伴わない施策の切り口から着手できるものもあるでしょう。今年は、埼玉県障害者施策推進協議会で埼玉県障害者支援計画の策定に私もあたっているため、熟慮してみたいと受け止めています。

川越氷川神社風鈴回廊

 関東はカンカン照りの蒸し暑い日が続くようになりました。川越氷川神社では恒例となった「縁結び風鈴」がはじまりました。風鈴は涼しげな佇まいで「風鈴回廊」に飾られているのですが、これらに願いを託した男女の熱気も伝わってくるようです。ああっ、暑い!

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