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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

木は木、金は金

 このタイトルは、「物事の区別ははっきりさせなければならない」「ごまかしをしない」ことのたとえで、井原西鶴の『日本永代蔵』にも使われた成句です。

 障害者支援施設は障害者支援施設です。このような成句を改めて書き起こすのは、新型コロナウイルスの感染症発生時における障害者支援施設の対応について、ドサクサにまぎれて肝心なことが有耶無耶にされている問題があると考えているからです。

 千葉県の北総育成園で新型コロナウイルスのクラスターが発生し、利用者と職員に大勢の感染者が出ました。

 このような障害者支援施設における感染事例を受けて、この5月4日に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課は、自治体の衛生主管部(局)および障害保健福祉主管部(局)宛ての事務連絡「障害者支援施設における新型コロナウイルス感染症発生時の具体的な対応について」を出しました。

 あくまでも「窮余一策」とする事務連絡であれば理解できなくもありませんが、この対応方針が今後も継続するとすれば、看過することは到底できません。

 新型コロナウイルスの感染症は、1月28日の閣議決定によって感染症法にもとづく2類に指定されることになり、SARSやMERSと同レベルの指定感染症に分類されることになりました。これによって、感染している人は「隔離入院」することが原則となったのです。

 この隔離入院の原則は、感染症法を何ら改正していないのですから、現在でもそのまま生きています。無症状者・軽症者(以下、「軽症者等」)を自宅療養と宿泊療養で対応するのは、軽症者等の同意にもとづいて、医療崩壊を防止する観点から現実的な対応を余儀なくされているだけのものです。

 これらが現実的対応として容認されるのは、医療崩壊を回避して重症者治療のためのベッドや人工呼吸器等を確保するという止むを得ない事情があり、軽症者等で「感染防止にかかる留意点が遵守できる者」で入院の必要はないと医師が判断した場合に限られます。ただし、高齢者、基礎疾患がある者、免疫抑制状態である者、妊娠している者は該当しません。(令和2年4月2日厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」)。

 それでも、感染拡大の防止のために入院とは異なる形での「隔離」を自宅又は宿泊施設で実施するのです。このような手立ては、感染症法の求める対応の本旨を「窮余の一策」として、かろうじて貫くためのものと解することができます。

 それでは、5月4日の厚労省事務連絡が示した感染症発生時の具体的な対応にいう「障害者支援施設」とは、法的に一体いかなるものなのでしょうか。

 自宅ではないし、宿泊療養施設でもありません。自宅療養と宿泊療養の前提条件は、(1)軽症者等であること、(2)感染防止にかかる留意点が遵守できる者、(3)入院の必要はないと医師が判断した者の3点です。

 障害者支援施設における「具体的な対応」では、「軽症者等に該当すると医師が判断した場合には、当該障害者の障害特性を踏まえ、必要な準備や感染症対策を行った上で、施設内で療養することも考えられること」と記されています。

 この事務連絡は、障害者支援施設の利用者については、感染症法の示す「原則隔離入院」ではなく、「自宅または宿泊施設での隔離」でもなく、「障害特性」を踏まえると、障害者支援施設の中の「ゾーニング」で対応すること「も考えられる」と、いかにも歯切れの悪い表現をしています。

 障害者支援施設の利用者の中に、感染症法の第2類に該当する感染症者が居続けること自体が本来は違法な状態であるはずです。障害者支援施設への入所には利用者が感染症に罹患していないことが条件となっていますし、障害者支援施設で実習する学生に対しても、感染症に罹患していないことの証明を含む健康診断書の提出を義務づけてきたのもそのためのものです。

 障害者支援施設の利用者に新型コロナウイルスに感染した者が発生した場合は、感染症法にもとづいて隔離入院することが原則であり、それは現在も変わるところはありません。障害者支援施設の法人・職員・利用者は、利用者に感染者が発生したからと言って、障害者支援施設を「ゾーニングだけの宿泊療養施設」にする法的義務はどこにもありません。

 それでも、「窮余の一策」として障害者支援施設を「ゾーニングだけの宿泊療養施設」として活用するためには、二つの前提条件が満たされている必要があると考えます。

 一つは、感染症法第5条2項に定める「病院、診療所、老人福祉施設等」の感染防止の取り組みを果たすための対策がいかに手当されてきたのかという点です。

 障害者支援施設等で感染症が発生した段階からは、サージカルマスク、防護服、消毒薬等の手当てを都道府県の責任で実施するとあるにも拘らず、感染症の発生する以前の感染防止の取り組みのすべては、それぞれの障害者支援施設の努力に丸投げされている実態があります。

 現在までの支援現場の苦境は、マスクは足りない、消毒薬はない、感染している恐れがあるから予防的判断で防護服を使いたい場合でもそれはない。このような事態を放置しておいて、いざ感染者が出来すれば、感染症法の定める隔離入院の原則を放り投げて、「軽症者等」と「障害特性」を理由に障害者支援施設の内部で対応すること「も考えられる」というのは、責任の一切合切が有耶無耶ではありませんか。

 障害者支援施設における感染防止の取り組みを徹底して支援するための対策を実施することにこそ、感染症法にもとづく国・都道府県の第一の責務があります。

 その上で、障害者支援施設を「代理病院」または「代理宿泊療養施設」に臨時指定するための法整備を図ることが絶対に必要です。社会福祉施設は社会福祉施設だからです。

 もう一つは、自宅療養又は宿泊療養には患者本人の同意が必要であるのと同様に、障害者支援施設での療養を実施するためには、施設長や理事長の権限や判断ではなく、それぞれの利用者の同意を都道府県が得た場合に限られるということです。

 障害者支援施設を「ゾーニングだけの宿泊療養施設」として使用することは法的根拠がないだけでなく、そのような利用方策をとることについても、施設長や理事長の権限は一切ありません。「窮余の一策」をとる場合にも、障害者権利条約の定める利用者の意思決定支援が絶対的な原則です。

 障害者支援施設は障害者支援施設です。新型コロナウイルスの感染拡大への現実的な対応が必要であることをいいことに、辻褄の合わない有耶無耶を重ねることは禍根を残すだけです。北総育成園の取り組みは、決して対応の「雛型」ではなく、反省の材料であるべきでしょう。

北海道の黒カレイ

 先日のブログで「国破れて鮮魚あり」と書きましたが、今日もそれが続いています。頭から尾まで30cmものの北海道産黒カレイで、一尾なんと398円。「平時」なら1480~1980円が相場です。煮つけにして、謹んで頂戴いたしました。旨っ!