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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

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 子どもは好奇心旺盛で「どうして?」を連発するため、大人は度々答えに窮しますが、大人になると知識も増えるせいか、あまり「どうして?」を連発しなくなります。しかし私は最近、虐待に関する疑問が立て続けに湧いてきて頭の中で「どうして?」を連発しています。

聖職者の身に何が起こった?

 1つは、フランスのカトリック教会では、1950年以降の70年間に3000人余りの聖職者が性的虐待に関与していた、というニュースです(2021年10月11日付ニューズウィーク日本語版「被害者の大半は男の子で10代前半 仏カトリック教会、性的虐待「21万6000人」の衝撃」)。

 聖職者による性的虐待とその隠蔽の発覚が続いたために、独立調査委員会が設置されて調査にあたっていましたが、先ごろ調査報告書が発表されたといいます。そして、教会関係の被害者は推計33万人で、8割が少年であること、多くが10代前半に被害を受け、聖職者による被害者は推計21万6000人に上ることが明らかになったそうです。

 「まさか聖職者が」という驚きと、小児性愛の聖職者が長年存在し続けられた制度的、文化的な仕組みついて、まさに「どうして?」を連発したくなります。一体、聖職者の身に何が起こったというのでしょうか。




介護現場の従事者の身に何が起こっている?

 2つは、厚生労働省老健局高齢者支援課の委託を受けた認知症介護研究・研修仙台センター様の「高齢者虐待防止に資する体制整備の状況等に関する調査」が開始されたことです。調査の背景には「居宅サービス等の事業の人員、整備及び運営に関する基準の一部を改正する省令」(令和3年1月25日厚生労働省令第9号)があります。

 全介護サービス事業所に、虐待の発生や再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者の設置が義務づけられたからですが、大規模な悉皆調査は本邦初なので、調査結果を見て「どうして?」を連発する己の姿が目に浮かびます。

 他にもあります。10月11日付け福祉新聞「厚労省が福祉団体に労災防止を要請 介護施設での死傷災害が急増」によると、2020年の福祉、介護施設での死傷災害(従事者が死亡または4日以上の休業)は1万3267人で、前年から32%増え、増加率が他業種より突出して高いそうです。まさに「どうして?」です。

 福祉、介護施設の従事者の腰痛、転倒は以前から問題でしたが、5年前と比較すると5670人も増えているといいます。従事者による虐待も増加率自体が増えており、死傷災害と虐待との関係は不明だとしても、従事者の身に一体何が起こっているのか、大いに気になります。

 もっとも、「どうして?」と問うだけではなく、答えを導き出さないといけません。そこで真っ先に思い浮かぶのは、医療や介護の分野や、児童虐待や学校のいじめ問題への取組みにおいて、行政とIT企業が連携して判断や評価の精度向上を試みていることです。

 ビッグデータとAIをキーワードにすることが多いようですが、虐待問題全般について同様の試みがなされるよう願ってやみません。石川啄木ではありませんが「ぢっとデジタル庁を見る」心境です。

「本当は、怠け者で女性にも…」
「それは言わないお約束…」

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