【介護リスクの予防】繰り返される誤薬事故を防ぐには、どうすれば良いのでしょうか?
【介護リスクの予防】繰り返される誤薬事故を防ぐには、どうすれば良いのでしょうか?
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もっと詳しい状況は?
私の所属する特別養護老人ホームでは、毎年誤薬が数件発生しています。要因は手順通りの実施が遵守されず、事故後の対処も個人の自覚の問題として済まされることが多くなっていることです。
元々、利用者が薬の置き場所に手を伸ばされるリスクはなく、誤薬は人為的ミスであり、ゼロにする必要があることは日常的にスタッフに周知しています。
それでも起きてしまう誤薬事故。どのようにすれば防げるのでしょうか。A 護リスクは「個人の自覚の問題」として捉えるのではなく、「チームの構造的な問題」ととらえ、組織的な対応をしましょう。
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【ポイント】
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- ●ヒューマンエラーは必ず起こるエラーです
- ●個人の自覚の問題ではなく、組織対応しなければいけない問題ととらえましょう
- ●組織対応にはP-SHELLm分析というものを利用して問題を構造的にとらえましょう
【先生の解説】
誤薬事故は「よくあるリスク」であると同時に、起こると場合によっては取り返しのつかないことにつながる「重大なリスク」でもあります。
チームリーダーとしては何としても防ぎたいですが、一方で、どんなに周知徹底をしても煩雑な業務の中では必ず数件は起こってしまうリスクではないでしょうか。誤薬リスクは周知徹底などによる「個人の意識」に訴えても防ぎきれない一面があります。そこで、誤薬リスクを介護職個人の「ヒューマンエラー」と捉え、そのエラーをどうなくしていくのかを考えていきたいと思います。
ここでご紹介するやり方は、誤薬リスク以外のリスクにも使えるものですので、ぜひ挑戦してみてください。
それでは、今回の誤薬事故が起きた詳細な状況を見てみましょう。
具体的な事例
昼食後(12:45ごろ)、薬を服用してもらおうと配薬箱から介護職Aが利用者Bさんの薬を取り出した。違う利用者の薬と気付かず、そのまま薬の封を切って利用者Bさんの手にのせ、口の中に入れられたと同時に、別の利用者の薬と気が付いた。
すぐに看護職に連絡し、状況を説明する。薬は下剤であり、こまめに様子観察するように指示がでる。その後、変化なく経過する。
【発生理由】
セッティングは通常通りであったが、いつもと同じ動きの中で慣れとなり、自分は間違うことはないと思い込み、服薬手順の一連の流れを怠った事が要因であった。
それに対し、周囲のスタッフも気付いていなかった。ヒューマンエラーは必ず起こる
ヒューマンエラーとは、ちょっとした手違いなど人間のミスが原因となって起こる、さまざまな問題のことです。これには「意図しないエラー」と「意図されたエラー」の2つがあります。リスクや事故はそのどちらから起こっているかをまずは把握しましょう。
この2つのエラーが起こる原因はそれぞれ以下の通りです。
事例では「違う利用者の薬と気付かず、そのまま薬の封を切って利用者Bさんの手にのせた」ことから、意図しないエラーの「思い込みによる勘違い」や「手順の見落とし」によるものと言えます。
「リスク」は「管理」する
そもそも、人間は認知機能を頼りに業務を行うため、このような間違いは必ず起こります。
そのため、個人にいくら意識づけしても、それだけでは不十分で、リーダーが組織的に「管理」する必要があります。
そこで、F.H.ホーキンズという人が提案した『S H E L Lモデル』というものを用いて原因究明と対策を立てましょう。
これにより、問題を構造的に整理でき、どこを改善してよいか客観的に分析することができます。SHELLとP-SHELLmモデル
S H E L Lモデルは、人の行動が次の4つの要因によって規定されることを想定してします。
さらに、看護分野ではP(Patient)患者(利用者)とm(management)管理的要素を加えてP -S H E L Lmとしています。
L(自分)の精神状態や体調は変化し、また自分を取り巻くP -S H E Lも変化します。そこで、全体を取りまとめるm(管理的な要素)が必要になってきます。事例では、「事故後の対処も個人の自覚の問題として済まされることが多くなっている」とありますが、ここで大切なのは、自分が間違いを起こすことを前提に、自分と要因のマッチングを常に図っていく必要があることです。
それは個人の問題ではなく、職場あるいは法人全体の問題として取り組まなければならないということです。事例の振り返り
P -S H E L Lmを用いて、この事例を振り返ってみましょう。
これらの分析に対して、具体的な取り組みとして施設では以下の通り、対策を取りました。
継続的に取り組むための方法
ヒューマンエラー対策はP -S H E L Lm分析のうえで、チームで取り組む必要があります。そこで、イージーミスを防ぐためのC R M(Crew Resource Management)という、チーム員をマネジメントすることを日頃から取り組みましょう。
【CRMの5つの方法】
⑴ コミュニケーション
情報の提供、確認の声出しをする、周囲はそれに反応する⑵ チームづくり
意見や質問しやすい雰囲気を作る⑶ 状況の正しい認識
「だろう」でなく「かもしれない」と危険予測する⑷ 意思決定のプロセス
情報収集、活用、判断、伝達、評価のプロセスをショートカットしない⑸ ワークロード管理
業務の優先順位、業務の配分を見直し、ムリ・ムラを防ぐヒューマンエラーは業務にあたる人と環境の特性にあります。その2つをうまくマッチさせるためには個人の努力には限界があります。
私たち介護の業務は利用者の生命にかかわるものです。黙々と業務をこなすのではなく、業務が同僚につながっていることから、お互いに注意喚起しあえるチームづくりを目指しましょう。質問をしたのは私です
友次勝彦(ともつぎ かつひこ)
社会福祉法人空心福祉会
法人本部 元事業部/地域連携支援部 統括長この記事は私が書きました
宮島渡(みやじま わたる)
日本社会事業大学専門職大学院特任教授
全国認知症介護指導者ネットワーク代表介護や福祉のチームマネジメントをもっと学びたい方はコチラ
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