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【チームの閉寒感の解消】施設長が生産性の向上を現場に求め続け、チームの雰囲気がよくありません。どうやってこの状態を抜け出せばよいでしょうか

Q、【チームの閉寒感の解消】施設長が生産性の向上を現場に求め続け、チームの雰囲気がよくありません。どうやってこの状態を抜け出せばよいでしょうか

もっと詳しい状況は?

 有料老人ホームで現場統括をしている鈴木といいます。この一年、入居者の医療依存度が高くなり、看取りや入院が続き、稼働率が大幅に低下しました。施設長は稼働率を高めて生産性を向上させなければと考え、「力のある君たち現場チームならできる」と新規入居者の確保、残業時間の短縮、業務効率化について、矢継ぎ早に細かな指示を出しました。現場チームも頑張って対応し、数値は改善しました。
 ただ、現場は疲弊しています。助け合う雰囲気もなくなり、ギスギスしています。先日の会議では、「ミスの多いメンバーの尻拭いも限界です。やってられません。そもそも、利益が出てうれいしのは施設長だけでしょ」と複数の介護職が施設長に直訴しました。的確な回答ができなかったこともあり、施設長への不信と失望が広がってしまいました。
 そもそも、施設長と私とでは、現場チームに対する認識が違っているようです。でも、どのように違うか、うまく説明できません。事態も好転させたいのですが、方法が思いつきません。どうしたらいいでしょうか?

A、チームの状態をアセスメントした上で、「生産性の向上」の視点を法人目線から支援目線に切り替え、対策を伝えましょう。

【ポイント】
●チームの状態をチームの振り返りシートでアセスメントしよう
●チームについての認識を関係者で一致させよう
●生産性は利用者の暮らしの改善と紐づけて説明しよう

【先生の解説】
 チームとしてうまくいっていないことは確かだけど、どこに原因があるのか分からない。私と上司とではチームに対する評価が違う。でも、どう違うのかをうまく説明できない。そんなことはありませんか?
 現場で利用者をアセスメントするのと同じように、チームもアセスメントすることができます。チームの状態を客観的に評価できれば、効果的な介入方法がみえてきます。この一連の流れは、利用者のアセスメントを行い、ニーズを明らかにし、ケアプランを立案し、具体的な支援に移し、改善を加えていく、そのことと本質的には同じです。
 どんな手順で対策を講じていくのが王道なのか。確認していきましょう。

●チームはアセスメントできる

 皆さんは、ウェストという心理学者が開発したチームの振り返りシートというツールをご存知でしょうか。
 チームの振り返りシートは、チームをタスク社会性の二つの側面で評価するアセスメントツールです。
 タスクとはチームが目標の達成に向けてどこまで機能しているかについての項目です。利用者の豊かな暮らしの実現という目標に向けて、がんばっている程度と考えて下さい。
 社会性とはチームメンバーがお互いを尊重し、協力していく度合いについての項目です。メンバーの人間関係の良好さの程度と考えてください。

 タスクと社会性は、それぞれ以下の8項目から構成されています。各項目を「全く当てはまらない」1点~「とても当てはまる」7点でチェックし、タスクの合計点と社会性の合計点を出します。



●チームには4つのタイプがある
 タスクの点数と社会性の点数の組み合わせによって、チームは4つのタイプに分類することができます。弾力的なチーム、自己満足なチーム、駆り立てられたチーム、機能不全チームです。
 弾力的なチームがベストな状態で、自己満足なチームは仲はいいけれど目標達成が疎かな状態、駆り立てられたチームは目標達成は頑張っているけど殺伐とした状態、機能不全チームは両方ともダメな状態、ということになります。


●鈴木さんと施設長のチームの評価のすり合わせ
 現場チームの評価を鈴木さんと施設長で行ったところ、評価は全く違っていました。
 施設長の評価はタスク50点、社会性35点で、弾力的なチームでした。施設長は「成し遂げる力があるから、力のある君たち現場チームならできる、と鼓舞したんだ。実際に成し遂げたじゃないか」と主張します。

 鈴木さんの評価はタスク35点、社会性15点で、駆り立てられたチームでした。鈴木さんは「確かに施設長からの叱咤激励が始まった当初はそうでした。施設長が言うならって頑張ったけれど、時間的な余裕がなくなって、メンバー間の関係が悪くなったんです。そもそも、施設長も社会性は35点で、決して高くはないですよね」と主張します

 施設長は「そうだな。個々の力はあるけれど、職員同士で話し合いを重ねて、信頼関係を高め、助け合っている、そういう雰囲気は高くはないよね。僕は社会性の項目の「困難な状況の時にはお互いに支え合う」「仕事がストレスフルな時もサポーティブである」「仕事がストレスフルな時にも協働する」「メンバーは、いつも友好的である」は4点だけど、鈴木さんは2点をつけている。この前の会議の様子からみても4点は違うようだ」。

●チームのアセスメント結果を踏まえて改善策を検討
 施設長と鈴木さんの間でチームに対する認識のズレが少しずつ修正されていきました。点数として可視化されたことで冷静に話し合うこともできましたし、各項目の文章を手掛かりに評価のポイントを焦点化することもできたようです。

 施設長は「この評価シートは使えるね。現場チームに対する見解が違うんだけど、どう違うかがうまく説明できない、そんな時に有効だと思う」と感想を述べました。
 二人のチームの評価は一致しました。次は改善策の検討です。

 生産性とか利益という言葉がチームの目標なのはおかしいのではないか、現場は利用者の暮らしがよくなることなら頑張ろうと思うのではないか、このまま日常のチームで何かに取り組むよりプロジェクトチームを立ち上げたほうがいのではないか、そんなことを深夜まで話し合いました。

●現場職員への説明とプロジェクトチームの立ち上げ
 翌週、施設長と統括は現場職員を集めて、切り出しました。

 「みんな、僕が悪かった。成し遂げる力があるからと思って負荷をかけすぎた。職員の関係性まで悪くなってしまって申し訳ない。それと、もうひとつ。生産性とか利益って言葉、今後は使わない。利用者の暮らしをよくするために自分達の支援を見直す、結果的に生産性があがる、それが利用者、現場、経営層、みんながハッピーのことだから。統括と相談したんだけれど、プロジェクトを二つ立ち上げようと思っている。詳しいことは統括の鈴木さんから説明があるので、希望者は是非、参加してほしい」

 率直な態度をみて、施設長に対する現場の不信は和らいだそうです。

 その後、二つのプロジェクトチームが立ち上がりました。一つは業務フローの見直しや業務チェック表の再作成を行うチーム。もう一つは技術マニュアルの見直し、OJTシートの再作成を行うチーム。
 統括が指名した職員に希望者も加わり、それぞれが動き出しました。プロジェクトは弾力的なチームとして動きだし、日々の支援にあたる現場チームは負担が軽減されたことに加えて、各職員が関係性の修復を意識したことで雰囲気がよくなったそうです。

●その後…施設長もチームの一員
 そんなある日、鈴木さんは常々感じていた疑問を施設長に投げかけました。「技術マニュアルとかOJTシートの見直しって利益とか生産性の向上につながらないですよね?なんで、施設長は立ち上げようと考えたのですか?」

 施設長は答えました。「業務フローの見直しや業務チェック表は労働時間の削減になるから、生産性に直結するよね。でも、技術マニュアルとOJTシートの再作成だって、それをもとに支援の質が少しずつ上がるよね。同じ労働時間を投下して支援の質があがるのなら、それも一つの生産性の向上だと僕は思うんだ。どうかな?」

 その言葉を聞いて、鈴木さんはうれしかったし、施設長もチームの一員なんだなぁと感じました。

この記事は私が書きました

井上由起子(いのうえ ゆきこ)

日本社会事業大学専門職大学院教授

質問をしたのは私です

吉田 徳史(よしだ のりふみ)

有料老人ホーム施設長(現在、日本社会事業大学専門職大学院に在籍)

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著者:井上由起子、鶴岡浩樹、宮島渡、村田麻起子
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