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特別講義 第35回社会福祉士国家試験の正誤を分けたFork In The Road

特別講義 第35回社会福祉士国家試験の正誤を分けたFork In The Road

特別講義、開講です!

 特別編「問題講評(共通・専門科目編)」から約一か月、そして先日合格発表がありました。
 まずは、合格されたみなさま、本当におめでとうございます。努力や苦労が形になった瞬間ですね。今の「この気持ち」を大切に、素敵な社会福祉士になってください。そして、後輩の社会福祉士を牽引して行ってくださいね。そして、私たちと一緒に社会福祉士の未来を支え、広げていきましょうね。
 残念ながら不合格だったみなさまも本当にお疲れ様でした。1点に、数点に泣いたという方も多いのではないでしょうか。いろいろと反省、敗因などご自身で分析し、気がつかれているかと思います。次年度はそれを踏まえて、早め早めに対応し、ぜひ合格しましょうね。絶対に、諦めちゃダメですよ。

 さて、本日は、スペシャルコンテンツ(特別講義)「第35回社会福祉士国家試験の正誤を分けたFork In The Road」と題して、「どのあたりが正答と誤答との境目だったのか」について解説したいと思います。つまり、正誤を分けた分岐点ですね。この分岐点は、英語で「Fork In The Road」と言います。なお、今回取りあげる問題69、問題137は、いずれも事例問題です。

事例問題を解くコツ

 問題を開設する前に、《事例問題を解くコツ》について整理してみると、以下のようになります。

事例問題を解くコツ
  • ①設問文から「何を問われているのか」を読み解く
  • ②事例から設問文で問われている内容に関する【キーワード】を見つける
  • ③そのキーワードと関連する[知識や技術、制度や政策、価値や倫理]を引き出す

 この3点を踏まえて、実際の問題を見ていきましょう。

生活保護や他の生活困窮者に対する支援制度を理解できていたかが分岐点

 問題69は、〈生活困窮者〉に対する〈自立相談支援機関〉の〈相談支援員(社会福祉士)の支援・対応〉を問う事例問題でした。
 【キーワード】としては、「会社の寮からの退去」や「インターネットカフェでの寝泊まり」といった【居住に関する問題】と、「所持金が少なくなって不安である」といった【生活費に関する問題】が挙げられるのではないでしょうか。そして、この先の(中長期的)問題としては、「次の仕事が見つからない」といった【就職による生活の安定といった自立支援】ということになります。つまり、来談者Cさんの喫緊の問題としては、【居住】と【生活費】であることがわかります。
 ただし、「次の仕事が見つからない」といった【就職による生活の安定といった自立支援】も抱えており、こちらは、喫緊の問題である【住居】と【生活費】の問題が解決したのち、速やかに取り組む(中長期的な)問題であると言えます。その場合、生活保護受給者等就労自立促進事業や生活困窮者自立支援法による生活困窮者自立相談支援事業などを活用して、就労支援を行なっていきます。

 そこで、この事例問題のFork In The Roadを列挙してみると、「生活保護制度」「生活福祉資金貸付制度」「生活困窮者自立支援法」に関する[制度や法令など知識]を理解していたか? ということになります。
 まず、「生活保護制度」については、原理や原則をもとに、Cさんが生活保護の対象であるかを考える必要があります。生活保護の原理・原則では、生活保護法第4条に「保護の補足性原理」が定められており、これは他法や他政策、稼働能力などの活用が優先されることとなっています。このことから、生活保護に申請する前に、他の法律・制度の利用や、Cさんの稼働能力の可否を検討する必要があります。
 Cさんの稼働能力については、仕事が見つからないものの稼働能力があることがわかります。つぎに、生活保護に優先される他法や他施策がないかについては、「生活福祉資金貸付制度」や「生活困窮者自立支法」が候補となってきます。前者の「生活福祉資金貸付制度」とは、Cさんのように、緊急かつ(就労までの)一時的に生計の維持が困難となった場合に少額の貸付制度があります。後者の「生活困窮者自立支援制度」とは、離職により住居を失った者(家賃の支払いが困難になった者)に、就職を容易にするため住居確保のための給付金を支給制度があります。この知識を知っていたか、が分岐点となりました。

 ここまで来ると、選択肢2の「生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金の利用」や、選択肢3の「生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金の利用」が適切な支援であることがわかります。そうなると、選択肢1の「生活保護の申請を勧める」ということが不適切な支援であることがわかります。同様に、選択肢4は、救護施設は生活保護法に基づく「身体上または精神上著しく障害があるため日常生活を営むことが困難な要保護者」を対象とする施設であるため、こちらも不適切であることがわかります。また、選択肢5の無料低額宿泊所については、「生計困難者のために、無料や低額な料金で簡易住宅の貸付や宿泊所等を利用させるもの」「当面の住まい確保」であり、Cさんのように、中長期的に生活や就労の拠点とする場合は、前出の生活困窮者自立支援法の生活困窮者住居確保給付金のほうがより良い支援と言えます。よって、解答は【2と3】となります。

Gさんのニーズと母子生活支援施設を理解できたかが分岐点

 問題137は、〈(妊娠中)のGさんが出産後に母子で居住する場〉や〈婦人相談員(社会福祉士)が現時点で利用を勧める施設〉を問う事例問題ですね。
 【キーワード】としては、「暴力を受けている夫から逃げたい」「子どもは自分一人でも育てる」「(親族との関係が断絶しており)実家に戻ることができない」「生活設計(就労支援を含む」などが挙げられるのではないでしょうか。つまり、【夫からの暴力の恐怖のない状況下で、生活計画(就労支援を含めた)の支援を受けながら母子が生活できる施設】はどこか? ということになります。
 よって、この事例問題のFork In The Roadは、「生活計画(就労支援含む)支援を受けながら母子が安心して生活(保護)できる入所施設」に関する[施設や制度に関する知識]を理解していたか? ということです。つまり、この事例問題では、この【キーワード】から、Gさんの状況やニーズを的確に理解できたかということが重要となります。

 ここで選択肢を見ていくと、答えは一つしかありません。選択肢1の母子生活支援施設となります。母子生活支援施設とは、「配偶者のない女子またはこれに準ずる事情にある女子およびその監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のための生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の助言を行う」であり、Gさんの抱える問題に対して婦人相談員が現時点で利用を勧める施設として、最も適切であることがわかります。ここからは、この他の施設を見てみると、入所施設といった意味では、選択肢4の乳児院が挙げられますが、「(母子を分離して)乳児を入院させ、養育する」施設であるため、「子どもは自分一人でも育てる」といったGさんのニーズから不適切であることがわかります。次に、母子・父子休養ホームは、文字通り、ひとり親の一時的な休養を目的とする施設であるため、本事例では母子の生活拠点の確保がまず優先されます。最後に、児童に関する相談施設として、選択肢2の児童家庭支援センターや選択肢3の産後ケアセンターがありますが、どちらも現時点のGさんに優先される施設ではありません。よって、解答は【1】となります。

「ありがとう」を伝える

 合格した方も、不合格だった方も・・・ 合否の結果が出た直後は、自分のことばかりだったと思います。でも,どうでしょうか? 少し時間が経ち、周りの状況が見えてくると、自分の努力もさることながら、周りの方の支えや協力を感じませんか。ぜひ、合否の報告とともに、「ありがとう」の言葉を添えてみてください。

 国家試験なので、もちろん合格することが目的ですが、私は、こういった過酷な試験などを乗り越えるなかで、他者への感謝を常に忘れない心を養ってほしいと思っています。そして、この感謝の気持ちを、いつまでも忘れないでほしいと思います。
 今日一日を、この一週間を、自分の周りにいる方への感謝の一日、一週間にしてみてはいかがでしょうか。感謝ができると、驚くぐらい生活が変わりますよ。私もまた、読者のみなさんに、そしてこのような機会を作ってくださった中央法規出版に感謝しております。

 合格された方は、素敵な社会福祉士になってください。そして、研修会や現場でお会いした際には、「けあサポ」の読者であったこと共に、社会福祉士入りのお名刺をくださいね。その日を楽しみにしています。

16年間ありがとうございました!

 最後になりましたが、16年続きました私の本講座ですが、今回をもって終了となります。
 長年ご愛読いただきました教員の皆さま、現場の皆さん、受験生の皆さんありがとうございました。そして、17年前の発刊当初からご担当いただいた中央法規出版の編集担当者さん、現担当者さん、各地で開催されました集中講義などでお世話になりました中央法規出版の営業の皆さんに感謝いたします。

 「社会福祉士になりたい~露木先生の受験対策講座」をご愛読いただきました皆さんの健康と今後の活躍を祈願いたしまして、結びとさせていただきます。

令和5年3月吉日
社会福祉士 露木信介

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【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】
本講座とは直接関係性はありませんが、私のメールマガジン【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】があります。こちらの講座では、勉強方法やマル秘話、独学や勉強時間がない方を対象に開講しています。4月からは第36回社会福祉士国家試験に向けた講座がスタートします。気になる方は、チェックしてみてください。

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