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精神保健福祉士におすすめの本・映画

精神保健福祉士国家試験の受験を終えた方に向けて、これから仕事で役立つ本など、毎回テーマを決めて紹介していきます。


第4回 【養成校教員が選ぶ!】精神保健福祉士に読んでほしい本②

養成校で精神保健福祉士を目指す学生を教えている教員がおすすめする本や映画をご紹介します。これから精神保健福祉士として現場に出ていこうとされている方にぴったりの作品を厳選していただきました。

★推薦者:
 青木聖久先生(日本福祉大学福祉経営学部)

 精神保健福祉士が国家資格化される10年前の1987年、私はPSW(Psychiatric Social Worker)に憧れ、気付けばPSW35年生。なお、約2年前からはPSWに代わり、MHSW(Mental Health Social Worker)という略語が用いられています。そんな私が大事にしていることは、当事者(❶精神障がいがある本人・❷家族)から学ぶ姿勢と、❸現実への対峙。このような視点のもと、選んだのが以下の3点です。

『自閉症の僕が跳びはねる理由』

 世界30か国以上で出版されている名著です。人は固有性が大切、と言いながらも、自然と社会の標準にならってしまったりします。また、他者の行動にだけ注目し、その背景や思いに目が向かないこともあります。そのような中、本書は、中学生(当時)の東田氏が、自身の体験と感性によって、58個の「なぜ」の想定質問をつくり、それにこたえています。抜粋として、「表情が乏しいのはどうしてですか?」に対して、東田氏は、緊張したり、恥ずかしかった時には固まるだけで、感情を表出しづらいと言い、そのうえで、「僕たちは、美しい物を見たり、楽しかったことを思い出したりした時、心からの笑顔が出ます」と。本書は、支援者の姿勢について、原点回帰の機会を与えてくれる貴重な1冊です。

『おかあちゃん、こんな僕やけど、産んでくれてありがとう』

 人は誰しも、自らの人生の主人公。ところが、精神障がいがある人の家族は、これまで支援者から、自身の人生の主人公として捉えられることが少なかったといえます。そのような中、本書は、著者(手前味噌ながら私)が精神保健福祉士の視点から、家族自身を人生の主人公に据え、『月刊みんなねっと』(家族会の全国団体が発行する雑誌)に掲載した15編のノンフィクション物語に、用語解説、つながりのあり方等を加えた内容になっています。とりわけ、本書のタイトルは、第1話に登場する家族からお聞きし、私が講演で200回以上紹介している言葉です。また、人は遭遇した事実もさることながら、そのことをいかに解釈したか、こそが重要。本書を通して、他者の人生を追体験できる精神保健福祉士の魅力を感じていただけると幸いです。

『不安の正体』

 ご紹介をするのは、川崎市でつい最近起こった施設コンフリクトについて、生々しく撮影したドキュメンタリー映画です。ただし、この映画は、一方的に反対派の住民を非難したものではありません。むしろ中心は、グループホームで暮らしている精神障がいがある人たちの描写。また、本映画では、長らく精神障がいがある人の人権擁護に取り組んできた、本映画の企画者である池原弁護士が、法的な観点から、鋭く問題に迫っています。加えて、いのちの授業をはじめ、多くの社会事象に取り組んできた飯田監督のインタビューによる引き出し方が絶品。そして、「社会において本当に不安なこととは」に迫っています。社会の現実に対峙する精神保健福祉士には、ぜひとも観ていただきたい作品です。