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介護福祉士のしごと体験記

介護福祉士を取得し、これから新たに働くという方、もう働いているけれども有資格者として新たな1歩を踏み出すという方。
それぞれにいろいろな不安があると思います。


そこで、みなさんよりも一足早く介護福祉士になられて現場で活躍されている/キャリアアップされた方々にお話を伺いました。
ここでのお話を参考に、新たな職場・キャリアでのイメージを膨らまし、不安解消に役立てていただければと思います!


特別養護老人ホームで働く介護福祉士、梅田さんのしごと体験記

 第1回は特別養護老人ホームで介護福祉士として高齢者の生活支援のしごとをされている梅田佳奈さんにお話を伺いました。

 「梅ちゃん」と慕ってくれる利用者さんとの心温まる話やそのような利用者さんとの「信頼関係の作り方」など、興味深いお話満載です。

私と介護

 「私の将来の夢は、ヘルパーになることです。私の笑顔で、誰かが笑顔になってくれたら嬉しいなと思います」

 私が小学校6年生で書いた卒業文集の将来の夢のページにはそんなことが書かれています。ヘルパーになりたいという夢は、中学校の卒業文集では

 「介護福祉士になって福祉の仕事がしたいです」

 という言葉に変わり、専門学校を卒業後、介護福祉士として特別養護老人ホームで働き始めました。

 今私は、特別養護老人ホームで生活をされている高齢者の生活全般の支援をしています。
 認知症やその他の病気,加齢によってできること・難しくなったことは人それぞれですが、起床・整容・食事・入浴・排泄・口腔ケア・就寝など人が生活をするうえで当たり前に行っている、1日の生活行為全てにかかわりを持っています。

生活を支える仕事とは

 私たちの仕事の1つに、食事の支援があります。
 食事は、管理栄養士が、個人のし好やアレルギーに合わせた献立を考えて、一人ひとりの状態にあった食事が提供されます。

 利用者の身体状況・嚥下・口腔内の状態に合わせた食事形態の工夫がされており、私の施設では普通食・刻み食・超刻み食・ミキサー食やムース食の4段階に分かれています。

 その他に個々に合わせてさまざまな工夫がされており、メインの魚や肉が一口大にカットされていたり、ご飯が箸でつまみやすいようにおにぎりに握ってあるなどの対応がされています。

 このように利用者さんにおいしく食べてもらうためにはどのようにしたら良いかについて、日々、栄養士・歯科衛生士・機能訓練指導員・看護職員・ケアマネジャー・介護福祉士等の多職種で話し合いを毎月行っています。

 私たちは日頃から普通にしているご飯を食べるという行為ですが、動作を細かく分析すると目で食べ物を認識し、口にご飯を運び、咀嚼して飲み込むといった一連の動作になります。

 しかし、認知症により、食べる方法や口を動かすことなど、食べるといった行為を忘れてしまう方もおられます。そのとき、どのような工夫をすると食べてもらうことができるのかと考えることも私たち介護福祉士の仕事です。

 食器の色や形・席の高さなどで見えている景色は変わり、日本人なら昔から使い慣れた箸を持つことでスプーンを使うより、手をしっかりと動かし食べてくださる方もいます。
 高齢だからと柔らかい食事ばかりを提供するより、口の中で食べ物と認識できる硬さのものの方が、口をしっかりと動かし食べられる方もおられます。

 当たり前のことも、しっかりと観察し工夫をすることで、その人にとっての食事の時間が楽しく、美味しくなり、さらにはできることも増えていきます。
 どんな小さな発見や気づきでも、利用者にとって必要なことを見つけることができると、何年この仕事をしていても嬉しくなります。

「梅ちゃん」と慕ってくださるAさんとの出会い

 働いていると、多くの人との出会いがあり、たくさんの思い出ができます。
 私が印象に残っている利用者の中に、よくハーモニカを吹いてくださる男性利用者のAさんがいらっしゃいました。

 「聴きたい歌があったら、いつでも吹いてあげるから」

 とよく言ってくださっていました。また、職員や他利用者の名前をしっかりと憶えられており、私のことは「梅ちゃん」と呼んでくださっていました。

 ある日の外出行事で、Aさんは100円ショップで、写真たてを買って帰られました。なんの写真を入れて飾るのかと、楽しみにしていましたが、何日経ってもその写真たてに写真が入ることはなく、空の写真たてがお部屋に飾られていました。

 気になった私は、なんの写真を入れるのか尋ねると「あんたの花嫁姿の写真を入れようと思って」と笑顔で話をされました。
 私に、結婚の予定はなく…いつか来るかもしれない、そんな日を楽しみにしているとのことでした。
 とは言え、いつまで待っても、空の写真たてがかわいそうになり、Aさんと私のツーショット写真を入れさせてもらいました。

 「わしの宝じゃ」、「けどいつかは別の写真も頼むぞ」と満面の笑顔で言われたのを今でも覚えています。

 Aさんはブラックコーヒーが好きな方で、朝起きる頃にコーヒーを提供するのが私の夜勤明けの日課でした。
 ある朝、私がコーヒーを持っていくとAさんはまだ眠られていたため一言お手紙を添えて、いつもの机に置いておきました。

 数分後、Aさんは事務所まで来られ、「さっきはコーヒーありがとうね」、「後で見てや」と言い、私に手紙の返事をくださりお部屋に戻られました。
 その手紙には、「私の幸せと健康を願う」、「PS、少しならいいけど、お酒は飲み過ぎないように」という内容の文章が書かれていました。

Aさんがくださった実際の写真

 夜勤明けの朝から、疲れが吹き飛び気持ちが温かくなるお手紙で、今でも私の宝物になっています。

異動になった後もかかわりは続き…

 私がフロア異動になったため、Aさんとは会う頻度は減りましたが、会うと「梅ちゃん、元気か~」といつも声を掛けてくださいました。

 その後月日が経ち、Aさんは、肺の持病により入退院を繰り返すようになりました。会うたびに痩せ細っていき、声が出にくくなり、得意だったハーモニカも吹くことが難しくなっていました。

 ある日、お部屋に会いに行くと変わらない笑顔で「梅ちゃん、元気か~」「会いたかったよ」と私の手をぎゅっと握ってくださいました。昔と違っていたのは、笑顔だけじゃなく目を潤ませ涙を流されていたこと。
 「また明日来ますね」とさよならをした、その翌日にAさんは施設で息を引き取られました。

 お部屋には、私と一緒に撮ったツーショットの写真があの時のまま飾ってありました。
 写真の中のAさんも、最後に会ったAさんの姿も、いつもと変わらない笑顔でした。いつも私に笑顔と元気をくださり、人を労わる気持ちを教えてくださいました。

私なりの利用者さんとの「信頼関係」の築き方

 私が昔から思っていた、「私の笑顔で誰かに笑顔になってもらいたい」。
 そんな単純な思いは、働き始めて14年経った今でも変わらず心の中にあります。この時の思いに加わったのは、「どのように信頼関係を築き、安心して過ごしてもらうか」という思いです。

 そのために私は日頃から、利用者さんの観察をよくするようにしています。よく着ている服や、一番に食べるおかずなどでも好みがわかり、会話のきっかけにもなります。
 相手のことを知るだけでは、ただの情報収集になってしまうので、会話の延長で私のことも伝え、私を知ってもらうことで、信頼関係を築くことにつながるのではないかと考えています。

 また、利用者さんの言葉や表情など、目に見えているものだけが本当の気持ち・思いではないことも多くあり、「何かがいつもと違う気がする」という、単純なモヤモヤとした気持ちを、他職員に伝える事で発見される病気や体調の変化もあります。

 日頃から日常生活に多くのかかわりを持っている介護福祉士だからこそ気が付くことのできる視点ではないかと思います。

介護福祉士会で出会った同年代の「仲間」

 介護福祉士として働き始めて、私には多くの仲間ができました。職場での仲間はもちろんですが、広島県介護福祉士会に所属することで、若者会“絆”と出会い、職場以外でも、頑張って働いている若者がとても多くいることを知りました。

広島県介護福祉士会の「介護の語り場大発表会2019」での一枚

 月1回程度ですが、若者会“絆”の勉強会で、みんなで日々悩んでいること、楽しかったことなどの話をすることで、「自分は1人じゃない、みんな一緒なんだな」と感じると共に、みんなが頑張っている姿を見ると、「もっと私にもできることがあるのではないか」と前向きに考えることができます。

「介護の日」イベント会場での一枚

 笑顔は伝染します!
 今は、新型コロナウィルス感染症の影響で、仕事上での活動や私生活において制限も多くある生活です。
 それでも私には支えてくれる仲間がいます。笑顔の大切さを教えてくれた、Aさんの笑顔に負けないように、少しでも利用者さんに笑顔になってもらえるように日々の仕事に取り組んでいきたいと思っています。

いつも、笑顔で。利用者さんとともに。

特別養護老人ホーム 光清苑
梅田 佳奈
(所属・肩書は取材当時のものです)