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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

2025年問題より、2016年大問題

 ここ数年、介護業界で言われ続けてきた『2025年問題』。今では、国全体の問題として、新聞などのメディアでもよく目にするようになりました。

 2025年に向けて、介護人材の確保、50万床の施設整備などと言われています。
 正直今のままでは、2025年を迎える前にこの国の介護の質は崩壊してしまうと思います。大事なのは、質です。「長生きした甲斐があった」「頑張って生きてきた甲斐があった」そう思えるような介護を実現することこそ、2025年問題に向けた取り組むべき課題ではないでしょうか。

 今、介護を必要とする方にとって、2025年に団塊の世代が後期高齢者になろうが、50万床の施設が整備されようが、知ったこっちゃない。それよりも、今日安心して生活できること。明日笑って生きられること。目の前のことが大事なのです。

 昨年から今年にかけて、介護業界を根底から揺るがすような大事件が起きました。今、施設で介護を受けている人、大切な家族を預けている人は、不安が募ります。そして、イメージの悪くなった介護業界には、人材が集まらなくなります。人手不足が続き、介護職員達は心身ともに余裕がなくなる。高齢者は質の高い介護が受けにくくなる。まさに負のスパイラルです。

 人が人の手によって亡くなっているのです。ここで現実逃避したり、隠ぺいしていくかのような話題のすり替えをしていては、2025年問題どころではありません。大事なのは今。こんなことが起きてしまった2016年をどのように歩むか。
 いろいろな知恵を持った人がいるはずです。口や心を閉ざさず、その知恵を出し合い、みんながこの国の未来を創造する時だと思います。

 私は、自分の得意分野である『人材育成』が大事だと考えます。それも、リーダー役を担う人の育成です。
 今は、人材確保…というより、頭数の確保のために、違う分野にいた方などに助成金を出したりして、引き込もうとしています。資格を取るためには、研修を受けます。これから介護職員として現場に出る前の方たちに対し、介護の理念や倫理など、大切な話をたくさん伝えます。しかし、実習に出たり、実際に就職した時、「研修で聞いてきた話と違う。理想と現実は違う」そう思う現場であっては、これまでの教育が無駄になってしまうのです。

 だからこそ、リーダーを担う方たちに教育の場を。そして、それを現場で実践、指導できるだけの待遇を。リーダーには、介護職員配置の1ではなく、配置から外して指導に専念できる体制整備を。私はそれが必要だと求めていきます。

 リーダーを担う人には、介護のスキルだけでなく、人材育成とは?マネジメントとは?そういった知識や技術が必要です。介護現場の未来は、リーダーたちが創っていくのです。