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井上眼科病院の実践から学ぶユニバーサルデザイン

身の回りにある「見えづらさ」に気づく


 東京は御茶ノ水にある井上眼科病院は、133年の歴史をもつ眼科専門の病院です。目の治療などで外来に訪れる患者は、1日1000人を数えます。

 同病院の外来は、患者数の増加を要因として、空間の広さやデザイン、利便性、安全性に問題を抱えていました。そこで、御茶ノ水に点在していた外来部門を集約し、2006年に新たにクリニックを開設した際に実践したのが、院内のユニバーサルデザインです。

 本書では、井上眼科病院で実践しているユニバーサルデザインのしくみや工夫を具体的に紹介しています。

 「見えづらさを抱えた患者の安心と安全を第一に考えよう」という理念のもとに、患者に配慮したデザインや工夫を院内の各所に取り入れていますが、井上眼科病院のユニバーサルデザインを語る際に、忘れてならないことの一つが、患者の声(意見)をユニバーサルデザインの実践に取り入れているということです。施工側の視点だけで進めるのではなく、実際にアンケートをとり、検討・検証を重ねることで、現在もオープン当時の姿を保つことができています。詳しくは、本書の第4章をご覧ください。院内のマップの色やピクトグラムの形がどのような経緯で採用されたのかがわかります。



 また、本書ではユニバーサルデザインの考え方をお伝えするだけでなく、「目に見えづらさを抱えた人たち」が周りには多数いるということ、その人は日常生活を送るうえでどのようなことに困難さを感じているのかという特徴、本人が日常生活で行っている工夫、ケアのヒントをわかりやすく解説しています。

 「見えづらさ」は、視力が下がるばかりではありません。視野の一部が欠けたり、ぼやけたりすることもさします。眼鏡をかけても視力が十分に上がらず、見えづらさによって生活に困難が生じる状態を、眼科ではロービジョン(低視力)という言葉で表現します。

 どんな人でも、加齢による視機能の変化は避けることはできません。日本の超高齢社会では、加齢による見え方の困難に誰もが直面する可能性があります。高齢になって見えづらくなれば、移動の不安、情報伝達の困難、その他さまざまな問題はより深刻に生活にふりかかります。

 白杖を持っている人とは違い、「見えづらさ」は、他の人にはわかりにくいものです。そのような人を支援するといっても、「何をしたらいいかわからない」と感じる人も多いと思います。しかし、「見えづらさ」が「もし(未来の)自分だったら」と想像してみると、実は身の回りにさまざまなヒントがあるのだと、本書を通して気づいてもらえたら幸いです。

(中央法規出版 第1編集部 渡邉賢治)

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