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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第41回 知人に騙されているおそれのある老夫婦への支援を考える
(2002年6月号(2002年5月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Kさん(居宅介護支援事業所(病院併設)・ソーシャルワーカー)

事例の概要

 夫91歳、妻83歳の二人暮らし。子どもはいない。夫はきょうだいがおらず、妻のきょうだいも他県に住んでいてあまり交流がない。
 夫は、平成12年3月に肺炎で当院に入院するまでは、病気らしい病気をしたことがなかった。平成12年5月に退院し、退位後は当院が居宅介護支援事業者として毎月のケアプランを立て、週2回デイサービスを利用することになった。順調に在宅生活を送っていたが、平成12年7月に腰を痛めてN外科に入院する。ここで、B氏(60代前半)と知り合う。
 平成12年9月にN外科を退院し、再びデイサービスの利用を始めるが、平成13年2月に腰痛を訴え、当院入院となる。4月に入って退院の話が出始めたころより、妻の口からB氏のことが話題に上るようになる。
 その後、B氏は頻繁に妻と行動をともにするようになった。ソーシャルワーカー(SW)は、妻からB氏とのかかわりについての話を聞き不審に思うようになるが、有効な手だてを見つけることができずにいた。そして、ついに8月には、一生面倒を見てくれるという約束で老夫婦の土地(200坪)をB氏に譲渡する(登記)という話まで出るようになり、手続きが進んでいる状況である。
病歴(夫)
 慢性C型肝炎、完全左脚ブロック、右腎嚢胞、老人性痴呆、神経因性膀胱(自己導尿中)
生活歴等
 夫34歳、妻26歳のときに結婚。
 夫は、20代は石炭関連の会社で働いていたが、28歳のとき、人に使われるのが嫌で中国・北京に渡る。そこで商売を営んだ後、34歳のときに帰国する。
 帰国後は、夫婦で畑をつくったり、ヤギやニワトリを飼ったりしながら生活してきた。
経済
 年金と貯蓄。結婚したとき、夫にはかなり貯えがあった。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。