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今月のケアマネジャー

ケアマネジャー

介護専門職の総合情報誌『ケアマネジャー』最新号の内容をご紹介します。

“やりがい”が生まれる! “チーム力”が高まる!
ワーク・エンゲイジメント入門

『ケアマネジャー』2024年1月号から、特集(“やりがい”が生まれる!“チーム力”が高まる! ワーク・エンゲイジメント入門)の内容を一部ご紹介いたします。

 ワーク・エンゲイジメントとは、仕事に対する熱意、没頭、活力が満たされた状態です。
 ワーク・エンゲイジメントに着目したケアマネジャー育成のポイントを伝授します。


ワーク・エンゲイジメントとは?

 多くの課題があるケアマネジャーの育成には、ワーク・エンゲイジメントへの着目が必要です。
 まずは、ワーク・エンゲイジメントの基本的な内容について解説します。

ワーク・エンゲイジメントとは

 ワーク・エンゲイジメントとは、「仕事に誇りをもち、仕事にエネルギーを注ぎ、仕事から活力を得ていきいきしている状態」のことを指します。
 ワーク・エンゲイジメントは、活力、熱意、没頭という3つの要素で構成されます。また、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的な感情・認知です。
 世界では1990年頃からワーク・エンゲイジメントという言葉が使われるようになりました。日本で体系的に紹介されたのは2012年です。まだ10年程度しか経過していない比較的新しい概念なので、聞いたことがない人も多いかもしれません。

 ワーク・エンゲイジメントが登場した背景には、産業保健心理学における「ネガティブからポジティブへ」という流れがあります。
 従来、労働者の健康対策では、精神的・身体的なストレスなどネガティブ要因への対応が中心でした。それが2000年前後から、ネガティブ要因ではなくポジティブ要因に着目した対応が広がっていきました。
 日本でも、職場におけるメンタルヘルス対策としてうつ病などの予防が行われています。まだポジティブな側面に着目した対応は多くありませんが、生産年齢人口の減少に伴う人材不足をふまえると、ワーク・エンゲイジメントに着目した取り組みは今後ますます重要になってくるでしょう。
 すでに『令和元年版 労働経済の分析(厚生労働省)』ではワーク・エンゲイジメントに着目した環境づくりが検討されています。

ワーク・エンゲイジメントと関連する概念

 ワーク・エンゲイジメントは、バーンアウト(燃え尽き症候群)の反対の概念といわれています。
 バーンアウト以外にも職務満足感やワーカホリズムがワーク・エンゲイジメントと関連する概念とされています。この4つの概念の関係性について、「活動水準」と「仕事への認知・態度」という2つの軸で整理したものが下の図です。

1 バーンアウトとの関係

 バーンアウトは、心身ともにしんどくても仕事を頑張りすぎてしまい、最終的に燃え尽きてしまう状態のことです。
バーンアウトの状態になってしまうと、仕事を否定的にとらえ、活動水準も低くなっています。また、自信をなくしており、十分に仕事をすることはできません。
 一方、ワーク・エンゲイジメントは仕事を肯定的にとらえ、いきいきと仕事をしている状態です。この2つの概念はまさに対の関係にあるとわかります。
 バーンアウトを予防し、ワーク・エンゲイジメントを目指すことが重要といえるでしょう。

2 職務満足感との関係

 職務満足感とは、自分の仕事を評価した結果生じるポジティブな情動です。
 ワーク・エンゲイジメントが「仕事をしているとき」の概念であるのに対して、職務満足感は仕事に対する感情・認知を意味します。
 どちらも仕事に対する認知や態度は肯定的ですが、ワーク・エンゲイジメントは活動水準が高くなっているのに対して、職務満足感では低くなっている点で異なります。

3 ワーカホリズムとの関係

 ワーカホリズムは「仕事中毒」と表現される場合もありますが、過度に一生懸命かつ強迫的に働く傾向を意味します。
 活動水準が高いという点でワーク・エンゲイジメントと共通ですが、ワーク・エンゲイジメントが仕事への態度が肯定的であるのに対し、ワーカホリズムでは仕事への認知・態度が否定的です。
 つまり、ワーク・エンゲイジメントでは“楽しんで”“やりがいをもって”仕事をしているのに対して、ワーカホリズムでは“強迫的”に働いているのです。

ワーク・エンゲイジメントに着目した
ケアマネジャー育成の4大ポイント

ケアマネジャーの仕事特性に基づくワーク・エンゲイジメントに着目したケアマネジャー育成の全体像

 ワーク・エンゲイジメントは仕事にも私生活にもよい影響をもたらします。とりわけ、職場へのコミットメントや仕事のパフォーマンスを向上させ、離職意向を低減させるという効果は、まさしくChapter1で確認したケアマネジャー育成の難しさの解消につながるものといえるでしょう。今後はワーク・エンゲイジメントに着目したケアマネジャー育成が必要です。それでは、どのようにすればケアマネジャーのワーク・エンゲイジメントを高めることができるのでしょうか。
 ワーク・エンゲイジメントに関するこれまでの研究成果から、ワーク・エンゲイジメントを高めるさまざまな仕事の資源と個人の資源がわかっています。ただし、そのままケアマネジャーに当てはめることはできません。ケアマネジャーの仕事や働き方の特性を考慮する必要があります。
 ケアマネジャーの仕事や働き方の特性を整理してみると、以下の点が挙げられます。

  • ・ケアマネ個人の資質による影響が大きい
  • ・職場の同僚と支え合う必要性があまりない
  • ・上司がサポートしづらい業務体系となっている
  • ・同僚や上司から仕事が見えづらい
  • ・成果を評価しづらい仕事内容である
  • ・職場外で支援チームを構成する

 上記の特性をふまえると、ワーク・エンゲイジメントに着目したケアマネジャーの育成として「ケアマネジャーの資質向上」「職場内での支え合いの確立」「仕事を適切に評価できるシステムの構築」、そして「地域づくり」という4つのポイントが挙げられます(図表5)。それぞれのポイントについて確認してみましょう。

ポイント1 ケアマネジャーの資質向上

 ケアマネジャーの資質向上とは、先行研究において個人の資源として挙げられている楽観性や自己効力感といった心理的資源の改善にとどまりません。本当の意味でのケアマネジメントを実施し、ケアマネジャーという仕事にやりがいや面白さを感じられるようになるための専門職としての資質向上が重要になってきます。

ポイント2 職場内での支え合いの確立

 個人業務が基本というケアマネジャー業務の特性は、仕事の資源の得づらさにつながります。そこで、ケアマネジャーのワーク・エンゲイジメント向上には、職場内での支え合いを確立することがポイントとなります。お互いが支え合うことで、仕事の資源を増やすことが大切です。

ポイント3 仕事を適切に評価できるシステムの構築

 高齢者や障害者へのケアマネジメントは、その支援の評価がとても難しくなります。それはつまり、ケアマネジャーの仕事の評価の難しさも意味しています。ケアマネジャーが頑張って仕事をしても適切に評価されない、評価が待遇に結びつかない状況では、ワーク・エンゲイジメントを高めることはできません。ワーク・エンゲイジメントの向上につながる評価システムが必要です。

ポイント4 地域づくり

 ケアマネジャーは利用者支援に地域のチームで取り組みます。このチームメンバーはケアマネジャーにとって重要な仕事の資源となります。そこで、チームメンバーとのかかわりがワーク・エンゲイジメントの向上につながるような地域づくりがポイントになってきます。

各ポイントの詳しい解説は、本誌(ケアマネジャー2024年1月号)をご覧ください。
執筆:畑 亮輔
北星学園大学社会福祉学部社会福祉学科 准教授

以上は、『ケアマネジャー』2024年1月号の特集の内容の一部です。ぜひお手に取ってご覧ください。


特集

Chapter1
ケアマネジャーの育成事情と難しさ
Chapter2
ワーク・エンゲイジメントとは?
Chapter3
ワーク・エンゲイジメントに着目した
ケアマネジャー育成の4大ポイント
Chapter4
ワーク・エンゲイジメントの実践例

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