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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

LOVE PHANTOM

 介護保険法の第1条、目的には「個人の尊厳を保持し」「有する能力に応じ自立した日常生活を」とあります。

 人間が自分らしさを保ち、自ら「生きたい」と思える環境とはどういうものでしょう。介護保険法の下に働く私たち福祉職は、どのように振舞い、どのような環境を整備することが求められているのでしょうか。

 先日、女性ご利用者2名とお花見に行ってまいりました。
 とっても楽しそうなお二人。
 「来年も再来年も、ずっと一緒にお花見しに来ましょうね」と言っていました。
 「あと何年くらい桜見られそう?」と私が聞くと、「何十年でも♡ ずっとそばにいてね♡」と言われました。
 「死ぬまではそばにいてあげる。死んだあとは出てこなくていいよ。怖いから」と言うと、「ずっとそばにいるわよ~」とおばけポーズをされました。
 みんなで大爆笑。こんな時間が私のエネルギーです。

 あるご利用者から「山口さんがいるから長生きしたい」と言われました。
 「私ね。家にいた頃は、もっと動けなかったのよ。今思うと、動く気がなかったのね。歳とって、楽しいことなんて何もなくて、家族や周りの人に迷惑かけて生きていたってしょうがない、って思っていたの。だから何もする気が起きなかった。いまは最高よ。みんなに親切にしてもらって、毎日楽しく過ごせて。それもこれも山口さんのおかげ」と言っていました。
 「僕のことが好き?」
 「だ~い好き」
 「じゃあ、財産全部くれる?」
 「あげちゃう♡」
 最後は冗談ですけど、こんなやり取りができるのも、いまが楽しいからではないでしょうか。
 生きていくことに理由を考えたらきりがありません。
 ただ、人は苦しいことばかりで生きていくのは辛いはずです。
 楽しいこともあるから生きていけるのです。
 好きな人がいたり、好きでいてくれる人がいることは生きる力になります。

 福祉職の皆さん。

 目の前のご利用者に健康でいてほしい、長生きしてほしいと思うなら、「あなたが必要です」と伝えてください。
 それだけで、人は生きていく力をもらえるのです。



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