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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

能登半島地震の支援に入った仲間から

 全国各地から令和6年能登半島地震支援に入ってくださっていますが、仲間から現地リポートが寄せられました。
 実際に支援に入ってみなければわからないことだらけですが、ここから学べることもあろうかと思いますので、ご本人の了承を得て概要をアップさせていただきます。

 支援に入ったのは、金沢市内に設けられた1.5避難所(体育館の中にテントが多数配備されている)で、被災地一次避難所から二次避難所へつなぐ避難所での夜間帯対応勤務でした。

 20時から勤務開始でした。リーダーはどこかの団体が取りまとめているわけではなく滞在期間が長い方がその任に当たり、日中帯から夜間帯へのリーダー間で申し送りされ、その後、夜間帯リーダーから自分たちに申し送りされました。

 避難所は感染が蔓延しているようでビブス・インカム・N95マスク・その上に不織布マスクを着用で「THE支援者」
 といういで立ちです。
 館内は、コロナウイルス・ノロウイルス・コロナ+ノロ等の感染者多数で、テントについている名札にシールで色分けされ、わかるようになっていましたが、館内を歩いている方が感染されている方かどうかはわかりませんので、自分たちが自己防御するしかありません。

 避難者は、介護の必要な方のみならず、そうでない方、小さい子供とお母さんなどもいました。
 ただ、半数以上が要介護状態にある方で、うち3分の2に当たる方々が排泄に介助が必要な方でしたので、夜間帯での支援は排せつ支援と眠れない方への対応でした。飲酒は禁止ですが、飲み物などは自由に飲むことができるため眠れない方が集まって談話をしていました。

 毎日のように避難所への入所・退所が繰り返され又、自分たちがかかわる時間も少ないため、避難者の顔と名前、それに滞在するテントを一致させることが難しかったです。

 夜間帯は、介護チーム・看護チーム・県本部職員の体制となっており、基本は介護チームがラウンド対応し、医療的な処置が必要な場合に看護へつなぐことになっていました。介護チームと看護チームの「申し送り」はありませんが、必要な時にコミュニケーションをとっているようです。
 感染が広がっているため嘔吐が多く、嘔吐で汚染された衣類は本人の承諾を得て廃棄処分しますし、マットレスや毛布類はそのまま袋に入れて外に3日以上置いておくようです。

 夜間帯の事故で多いのが圧倒的に転倒でした。体育館内の設営されているテントの中は狭くて歩行器や車いすを入れることが難しく、そのためテントの外に止めてテント内は歩くしかなく、多くがテントのへりにつまずいて転倒され又、壁や柵などがないため寝返ってベッドから転落されるケースが多いようです。

 体育館全面にテントが張ってあるため歩き回り、日中・夜間共にスタッフの平均歩数は30000~35000歩となり、介助量の多い方はすでに高齢者施設に移っているため介助は難しくはないのですが、とにかく歩き回らなければならないことの負担が大きかったです。

 また体育館を想像してもらえればわかると思いますが、トイレが角々にしかなく、排せつ時の誘導に相当時間がかかりました。
 当然ですがギャッチアップできないベッドからの移乗支援、転倒リスクの高い方は床からの立ち上がり支援、車いすの方、歩行器の方、歩行付き添いの方、嘔吐処理、ガウンテクニック、排便処理等を暗闇状況下で行いました。
 普段介護事業所内では当たり前のことが避難所では当たり前ではなく、毎回色々考えながら、工夫しながら、助けを呼びながら、日勤と夜勤で引継ぎ合いながら支援し合うのですから、まさに「チームケア」でした。
 大きなルールはあるものの、決まっていないこと・決められないことなどが避難所開設して3週間経っていてもあり、その日、その日で決めごとを作り上げていっている感じでした。

 そんな状況の中でも、お茶を飲みながらの井戸端会議、朝新聞を読む、体育館内を散歩する、好きな飲み物を飲むなど日常も垣間見えました。
 夜間のみの支援だったので日中の活動(入浴や日中の過ごし方)はわかりませんが、療法士等のチーム(JRAT)も入っており、機能訓練やマッサージなど、活動量が下がらないように支援していました。

 DWAT(災害時に福祉支援を行う民間の福祉専門職で構成するチーム)が調整していましたが、1日目12名いた介護チームは2日目6名となっており、人数にばらつきが出ないよう、かなり苦労されている様子がうかがえました。
 隣接するサブ体育館にも医療依存度の高い方50名が避難しており、支援者確保から支援者配置まで相当なご苦労だろうなと思いました。

 仲間から寄せられたリポートを読んで、大規模災害時の体制は、想定できない事態が多々起こることが全体になるので、これから求められている事業継続計画の難しさを感じました。

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 メイプル超合金のメンバー「安藤なつ」さんが「介護現場歴20年」という本を出版されました。出版前から反響が大きく、すぐに重版されたそうです。
 実は、この本の出版に当たり僕も少々お手伝いさせていただいた経緯から、ご紹介させていただきます。
 この本は、安藤さんの経験や考えていること等を漫画で紹介するとともに、僕を含めた介護現場の方との対談で構成されていますので、とても読みやすく安藤さんの人柄のみならず「介護・介護業界・介護従事者」への思い入れに触れることができ、なんかあったかくなる本に仕上がっていると思いました。ぜひ、ご一読ください。

 著書名:介護現場歴20年
 著 者:安藤なつ
 出版元:主婦と生活者
 定 価:1650円

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