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スタッフの定着・成長を支える
リーダーシップとマネジメント

 今、介護をはじめとする福祉の職場では、新人スタッフの定着と成長が課題となっています。例えば介護職員などは、入職後4割が半年で辞めるという統計もあり、高い離職率が問題となっています。また、離職の背景として、給料や休みなどの労働条件の他に、職場の理念や運営方針、将来の見通しがたたない、人間関係などが指摘されています。
 この連載では、コミュニケーション論、人間関係論、集団・組織論がご専門の諏訪茂樹先生に、これらの問題をわかりやすく説明していただき、さらには具体的な解決策についても触れていただきます。福祉の現場でのリーダーシップやマネジメントの基本を学んで、あなたの職場のスタッフの定着と成長を支えていきましょう!

けあサポ編集部

諏訪茂樹(すわしげき)
著者:諏訪茂樹(すわしげき)

人と人研究会代表、東京女子医科大学統合教育学修センター准教授、立教大学コミュニティー福祉学部兼任講師。著書として『対人援助のためのコーチング 利用者の自己決定とやる気をサポート』『対人援助とコミュニケーション 第2版 主体的に学び、感性を磨く』(いずれも中央法規)、『コミュニケーション・トレーニング 改訂新版 人と組織を育てる』(経団連出版)、他多数。


第12回 非指示的ではなく、うまく指示を出すこと

指示を改善すれば業務は大幅に改善

 入職したばかりの新人には、うまく指示を出すことが求められます。ところが、極めて不適切で乱暴な指示を、見聞きすることがあります。20世紀の終わりに起きたカウンセリングブームや21世紀初頭のコーチングブームでは、「非指示的」とか「ティーチングはダメ」という極端な考えが広まりました。その結果、指示についての学習と改善が疎かになっているのでしょう。日ごろ行っていることはブームにならず、目新しいことばかりがブームになります。しかし、ブームでスタッフを育てることはできません。指示は基本的なかかわり方の一つであり、実際にスタッフや利用者に対して「……して下さい」「……しましょう」と頻繁に指示を出しています。指示なしで業務は成り立たないほどであり、そのために指示の出し方を改善すれば、業務は大幅に改善するのです。


堂々とした態度で具体的に

 初めての業務を行うときは、誰でも不安を抱くでしょう。スタッフが不安を抱いているのに、指導者まで自信のない態度で指示を出せば、スタッフはさらに不安になります。指示を出すときには迷いを見せず、頼りがいのある堂々とした態度で臨むことが大切です。また、たとえば「そのうちに、やっておいて下さい」という、さまざまな受け取り方ができる曖昧な表現は避けましょう。「今週中にお願いします」などと、受け取り方が一つしかない具体的な表現を使う必要があります。さらに、「これをやった後、あれをやって、あれをやった後、それをやって下さい」と、一度にたくさんの指示を出すのもやめましょう。一つの指示が伝わったら次の指示と、指示は一つずつ出すのが基本です。

質疑応答を交えて納得してもらう

 読者の皆さんも管理職や他職種から、納得できない指示を受けたことがあるでしょう。その時に、やる気になったでしょうか? 仕方がなく指示に従っただけだと思います。仕方がなく指示に従っても、よい結果は出ません。スタッフに「じゃあ、そうしよう」と思ってもらわなければならず、そのためには納得してもらうことが大切です。そして、納得してもらうためには、「なぜ、そうするのか」という理由を説明しなければならないのです。また、指示を出すときも一方通行ではなく、質問に答えながら双方向で行います。「わからないことがあったら何なりと質問して下さい」と伝えて、質問しやすい雰囲気を作ることも忘れないようにしましょう。「つべこべ言わずに、言われた通りしなさい」という、まるで人を家畜扱いするような乱暴な指示が、スタッフのやる気を損なうのです。


指示トレーニング(カード版)

 指示の出し方を訓練する方法があります。スペード、ハート、クラブ、ダイヤのうち、いずれか1種類のカードを13枚用意し、誰かと2人一組でテーブルに着席します。自分は13枚のカードをかき混ぜて、すべてを束ねた状態で相手の目の前に置きます。相手には目隠しをしてもらいます(あるいは目を閉じてもらいます)。そして、自分は「……して下さい」「……しましょう」と指示を出し、目隠しをした相手にカードをエース(1)からキング(13)の順に並べてもらうのです。自分は手を出さず、言葉だけで指示を出します。ストップウォッチを使って完成するまでのタイムを計り、どうすれば早くできるかを振り返りながら、時間短縮に繰り返しチャレンジするとよいでしょう。適切な指示を自ずと理解し、身につけることができます。1)2)

表 指示トレーニングによる気づきの例

●迷いを見せず、堂々とした態度で指示を出す。
●曖昧な表現ではなく、具体的な表現を使う。
●すべての指示を一度に伝えず、一つずつ伝える。
●納得してもらうために理由を説明する。
●一方的ではなく、質問に答えながら双方向でコミュニケーションをはかる。
etc.
文献:
1)諏訪茂樹『対人援助のためのコーチング』中央法規出版、2007、p103
2)諏訪茂樹『看護にいかすリーダーシップ 第3版 ティーチングとコーチング、チームワークの体験学習』医学書院、2021、p79