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ルポ・いのちの糧となる「食事」

下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

食べること、好きですか? 食いしん坊な私は、食べることが辛く、苦しい場合があるなんて考えたことがありませんでした。けれどそれは自分や身近な人が病気になったり、老い衰えたりしたとき、誰にも、ふいに起こり得ることでした。そこで「介護食」と「終末期の食事」にまつわる取り組みをルポすることにしました。

プロフィール下平貴子(出版プロデューサー・ライター)

出版社勤務を経て、1994年より公衆衛生並びに健康・美容分野の書籍、雑誌の企画編集を行うチームSAMOA主宰。構成した近著は「疲れない身体の作り方」(小笠原清基著)、「精神科医が教える『うつ』を自分で治す本」(宮島賢也著)、ほか。書籍外では、企業広報誌、ウェブサイト等に健康情報連載。

第146回 公開された「日本人の食事摂取基準」
策定検討会報告書(案)に学ぼう

はじめに

 食支援に携わる方なら「日本人の食事摂取基準」を利用している人も多いことでしょう。筆者も健康関連記事を書く上で、よく参考にしています。
 先日、2020年の改訂について報告書のとりまとめが終わったことが報じられました。今回はその策定検討会報告書についてご紹介します。

日本人に必要な栄養は?
次回改訂ポイントが学べる資料

 「日本人の食事摂取基準」とは、厚生労働省が「国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示すもの」として策定している基準です。
 1969年から5年ごとに改定されていて、現在利用されているのは「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」です。
 先日、2020年~2024年に使用される「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会がまとめた資料『「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書(案)PDF 』が公開されました。
 改定のポイントのひとつとして、高齢者の低栄養・フレイル予防を視野に入れて検討がなされたということで関心をもち、初めて資料を開き、全文を読んでとても重要な文献だと思いました。

 先にも述べた通り、筆者は記事で「必要なエネルギー」や「栄養素の摂取量、目標量」について述べる際には必ず最新の「日本人の食事摂取基準」を確認しています。
 しかし、この基準がどのように決められたのか、という点にはこれまであまり関心をもていませんでした。いつも数値ばかりに目がいっていたので、反省しなければならないと思います。
 同様に、管理栄養士さんではなくても食支援に携わる方で、適切な食事についてアセスメントや支援を行う際、この基準を活用しておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなみなさんは「基準が定まった経緯」等をご存知でしょうか。

 厚生労働省のウェブサイトで公開され、誰でも無償でダウンロードすることができる資料『「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書(案)PDF 』には、

  • 基準を出すために世界のどのようなエビデンスが利用されているか
  • なぜ栄養素によってそれぞれ「目標量」や「耐容上限量」などと示し方を変えているのか
  • それぞれの栄養素や栄養バランスと疾患の関係についてどう見ているか
  • さまざまな診療ガイドラインとの関連はどうか
  • 各栄養素の基準を示す上で今後の課題は何か

 などが、ていねいに記されています。
 読んだとはいえ、筆者に全てが理解できたわけではもちろんないですが、資料は栄養に関する智慧の泉だと思いました。

 全498ページと大変なボリュームで、難しい部分もあるけれど、ゆっくりでも読んでいくと、栄養バランスよく健やかに生活をしていくために、またそれを人に伝えるために大切な知識を得ることができます。
 「日本人の食事摂取基準」が示す数値の大切さを感じることができ、食支援スキルアップの一助ともなるでしょう。ぜひダウンロードして活用することをおすすめします!