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障がい者福祉を知って高みを目指す!

松崎 匡 (まつざき ただし)

介護職として高みを目指すなら、高齢者福祉も障害者福祉も知っておきたいところ。この2つの現場を経験した松崎さんだからこそ言えるそれぞれの違い。それらを知り、介護職としてあらためて「福祉ケア」について考えていきましょう。

プロフィール松崎 匡 (まつざき ただし)

この4月より「合同会社M&Yファクトリー」代表社員。
元アルファ医療福祉専門学校教務主任。福祉関連事業所の開業、業務改善などのコンサルティング、研修講師、市民向けの介護講座などのほか、青少年の更生、フリーター、ニートの就職支援などを手掛ける新たな福祉への関わりを中心に活動中!

第13回 『セルフケアプランを作ろう!(2)』

 5月29日で45歳になりました。

 30歳を超えてから40歳になるまでは、「あー、歳はとりたくねえな」と歳をとることに対してネガティブでした。しかし、41歳になる前に「がん」を発症して入退院を繰り返していると、誕生日を迎えるたびに「今年も無事に誕生日を迎えられた」とホッとするなど、歳をとることをポジティブに感じられるようになってきました。小さな目標や些細な喜びを積み重ねていくことってすごく大切なんですね。

 皆さんの周りの利用者も、このポジティブな積み重ねを繰り返していくことで、本当の意味でのQOLの向上が図れるのではないでしょうか? その小さな積み重ねを演出すること、それが我々の大事な仕事だよなって思う今日この頃です。

課題分析の副産物

 前回、私の介護職時代を例に、セルフケアプランの元となる課題整理(アセスメント)をしてみました。今回は、この取り組みを行ったことによる効果をご紹介します。

 まず、一人でアセスメントしてみることで、自分の仕事が「見える」ようになってきます。当然、克服すべき課題も見えてくるのですが、それとともに自分の目標が見えてくるという点が、もともとのこの取り組みの主旨です。

 私の研修では、こうして抽出した課題を小グループで発表し合います。すると、参加者から次のような意見をもらいました。(以下、研修の振り返りより)

  • 「何でもできるように見える先輩でも、もっと向上したいという課題を持っていたんだ」(新人)
  • 「こいつ、こんなところで悩んで苦しんでいたんだ」ということがわかった。(先輩)
  • 「手を抜いているんじゃないか? と疑っていたけど、どうしていいかわからなかったんだ」(先輩)
  • 「もっとこうした方がいいと的確にアドバイスしてあげればよかった」(先輩)
  • 「なんで、自分の課題や悩みを言えなかったんだろう」(新人、先輩多数)

 要するに、本人に直接言い辛かったり、話すだけでは「愚痴」で終わってしまったりするところを、書面に書き込んだものをもとに話すと、同僚との相互理解が進み、個人の課題をみんなで解決しようという空気が生まれたのです。

 先輩後輩関係なく同じ書式を使っているので、同じ立場で意見が言えるし、自分が考えた対応策だけではなく、他の同僚の意見ももらえるため、対応策の欄にどんどん付け足す事項が増えて「明日から頑張ろう」という思いになる人が続出しました。

しかし…ケアプラン書式に落とし込むと…

 さて、私の課題分析をケアプラン(第2票)に落とし込んだものがこれです。前回の課題分析の表と比べて印象はいかがでしょう?

 書いてみた私の感想ですが「なんか違う…俺がおむつ交換日本一になりたいという熱い思いは、全然この書式だけを見ても誰にも伝わらないくらいチープなものになってしまっている」

 …何だか、書式に合わせて簡潔に書けば書くほど、実際の思いとかけ離れてしまう感覚でした。自分のプランですから、より多くの人に理解されるように書いているはずでも、何だか伝えきれないもどかしさを感じました。

 気付いて欲しいのは、利用者との本気の関わりをもっと充実させないと利用者の本当の思いの50%も書式に落とし込むことができないということ。そして、最初の課題分析をポジティブに取り組むことがとても大切であるということ。そのためには、思いを言葉で発するだけではなく、文章化するトレーニングが必要なこと。それらをポジティブに積み重ねていくことが、「ステップアップすること」だということです。

 ケアプランをよりよくするのも、ありきたりのものにするのも、普段の利用者との関わりをどのように形に残したいのか、その思い次第です。ケアプランを作られる利用者の立場を体験するためにも、職場で一度やってみてください。

 私もこの連載で、思いを文章化する実力の無さを痛感しております(とほほ…)なので、実際に研修の題材として使っていただけるのであれば、ぜひ呼んでください。