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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

全てはつながっている

 歴史学者のデビッド・クリスチャン氏のプレゼンテーション「18分でたどるビッグヒストリー」というNHKの番組を視聴し、宇宙の誕生から現在まで、全てのつながりを説明する、その独創性に驚きました。

 さらに感服したのは、MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏は、『現在の子どもたちは、数学、化学、物理学など、縦割りで学んでいるが、本来これらは「ひとつのサイエンス;one science」として、全てつながっている。だから、子どもたちがそのことを知れば、もっと楽しく勉強できると思う』という趣旨の解説をしていたことです。

 「全てはつながっている」という視点は、社会問題や施設など組織の問題を考えるうえで、とても有用だと思います。

 というのも、解決策を検討するときは、とかく「既存の区切り」を前提に考えがちなので、どうしても蛸壺状況に陥りやすくなるからです。

 「全てはつながっている」という視点に立てれば、「既存の区切り自体を見直す」ような発想が生まれて、建設的なアイデアを沢山得られそうです。

 虐待問題に関わりのある社会問題に限ってみても、数多く存在します。たとえば、人口減少、少子高齢化、医療と介護の連携、新しい貧困、障害者雇用、社会福祉法人のあり方などです。

 いずれも難問ですが、これらを建設的に検討できるなら、「全てはつながっている」という視点の有用性は、極めて大きいと言えます。

 「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」で有名な藩主、上杉鷹山のもと、総力を挙げて破産状態から立ち直った米沢藩のあり方は、その好例だと思います。

 「既存の区切り」に囚われず、藩自らの来し方行く末を見つめ、身の処し方がキチンと考えられていたからです。

 当時の米沢藩が行った、倹約にせよ意見集約にせよ教育にせよ、既存の区切りである「既得権」や「身分」に囚われていません。

 もちろん、抵抗勢力もいたでしょう。しかし、事実の公表により、皆が「破産状態」にあることを受けとめ、農業開発や殖産興業に創意工夫を凝らし「成果」をあげることで、前進していきました。

 何しろ、「全てはつながっている」のですから、誰かの利益は巡り巡って、いずれ皆の利益になるわけです。

 そして、飢餓に備える「かてもの」の配布や、農業用水の整備など、最もダメージの大きい層の人々への配慮にも、抜かりはありません。

 現代の社会に当てはめるなら、制度やサービスの間に取り残される人が出ないように、「皆が幸せになる」ような身の処し方であり、それゆえ、藩は全体として連帯し昇華できたのだと思います。

 「破産状態」という危機だったからこそ、連帯が「なれ合い・もたれ合い」に陥らずに済んだ、と言えるのかもしれませんが、少なくとも、私たちは歴史上の先達から学べるのですから、「破産状態」という最悪の現実を突きつけられる前に、連帯して社会を昇華させていきたいものです。