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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

第133回 「防災と補助犬~障害インクルーシブ防災から学ぶ~」報告(2)

 2016年5月20日、補助犬議連主催 第4回【ほじょ犬の日啓発シンポジウム2016】「防災と補助犬~障害インクルーシブ防災から学ぶ~」が無事に終了いたしました。今年も、多くの方にご参加賜り、非常に有意義な会となりましたこと、心より感謝申し上げます。前回に引き続き、シンポジウムの報告をさせていただきます。

ユーザーさんがお勉強中、
補助犬たちは、大切なお仕事(爆睡中)

 第二部は、日本動物福祉協会 特別顧問 山口千津子先生より、「補助犬同行避難について~防災の観点から~」の講演がありました。
 以下に、抜粋してご紹介いたします。

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 実際に、複数の災害現場で被災動物の支援活動に携わってこられた経験から、各災害時の状況報告がありました。大島の噴火災害、兵庫県南部地震、新潟地震、東日本大震災と、20年の経過を見ていると、ペット同行避難が進んだことが伺えました。

環境省
「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」平成25年6月
の中でも、「原則ペットとの同行避難」が明記されています。これは大きな進歩です。
 この流れは2005年のハリケーン・カトリーナから多くの教訓を得ました。当時、ペット同行避難が拒否されたため、人々はペットを置き去りにして自分たちだけ安全な場所に避難することを拒む人が続出しました。その結果、アメリカ連邦政府はPETS法の施行に踏み切り、大規模な災害や緊急時の州や地元の緊急避難対策計画には、個人のペットやサービス動物のニーズについての対応を含むことを保障することとなりました。

 「同行避難・動物救護はなぜ必要?」ということを考えたとき、「命ある動物のいのちを守る」ことは当然ですが、それと同時に「動物を助けることは人を助けること」なのです。また、地域社会にとっても、重要な意味があります。例えば、
  • ・ 残された動物が多ければ多いほど、救護には多くの人手と時間と費用がかかる
  • ・ 災害時の放浪・徘徊動物は疾患伝搬や人に対する危険・迷惑の可能性
  • ・ 死体放置等による公衆衛生上の問題

などです。
 同行避難・動物救護に関しては、飼い主との絆を大切にした動物救護活動が重要視されています。同行避難→避難所→残された動物の救護活動→仮設住宅→シェルター→復興住宅それぞれのステージでの対応が必要になります。

 そして、何より大切なのは、『災害時の準備は普段の適切な飼育管理』からです。
適切な飼育管理とは
  • ・ 動物たちの基本的ニーズを満たす
  • ・ 動物福祉の確保(肉体的・精神的に十分健康であり環境とも調和している状態)
  • ・ 飼い主責任の遂行

 また、絶えず基本にあるのが、【5つの自由(動物福祉の国際的概念)】です。
  • (1)飢えと渇きからの自由
  • (2)不快からの自由
  • (3)痛み・怪我・病気からの自由
  • (4)恐怖や抑圧からの自由
  • (5)正常な行動をする自由

 動物福祉は動物の生命の質に関係しているのです。

 災害時の心得として、よく、「自助、共助、公助」という言葉があります。まず、何よりも自助が先決、その後、共助、そして最後が公助です。これは、災害時の人間に対する支援でも、動物に対する援助でも言えることです。

 補助犬だけでなく、動物を家族に迎え入れている飼い主として、普段からしておくべき責務は
  • ・ 健康管理 (狂犬病予防接種、ワクチン接種、駆虫、病気の治療、健康手帳、不妊去勢手術等)
  • ・ 飼育管理 (登録、動物のニーズを満たした飼育管理、個体識別(マイクロチップ)、しつけ(クレートトレーニングも)等)
  • ・ 動物用避難袋、人用避難袋の準備

 そして、特に補助犬ユーザーだからこそ、しておくべきことは、
  • ・ 普段から居住地域の自治体、社会福祉協議会や避難所運営者に補助犬使用者がいることを伝え、避難した時の受け入れ準備をお願いする。
  • ・ 一般ペットとは異なり、身体障害者補助犬法及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)に基づいた受け入れであることの周知徹底。
  • ・ 補助犬育成団体は、自治体、社会福祉協議会、避難所運営者、地域の獣医師会等に避難所での補助犬受け入れ準備の指導、支援をする。(対応マニュアルの作成等含む)

 ということです。

 普段からできることとして、
  • ・ 近所とのコミュニケーションを良くする。
  • ・ 自分の地域にはどんな緊急災害の危険性があるのか調べ、その対応を考えておく。
  • ・ 避難所の場所やルートを確認し、補助犬と共に実際にやってみる。
  • ・ 家族全員の防災対策
  • ・ 地域防災計画(同行避難を基本-市区町村の理解)の確認
  • ・ 人と動物双方の専門部局(医療・獣医療・公衆衛生・人及び動物の福祉・防疫等)や消防・警察等との連携・チームワーク → 平時からのコミュニケーション
  • ・ マニュアルを作成し、関係者全員でのシミュレーション。
  • ・ 平時からの対策・準備(公的機関や公益団体、避難所運営体、自治会等)
  • ・ ボランティアの登録と教育・トレーニング
  • ・ 市民啓発<健康管理(人と動物の共通感染症を含む)、適切な飼育管理、固体識別、同行避難及びその準備>

が挙げられます。
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 過去の事例に基づき、ペットとの同行避難に関して学ぶことができました。「補助犬はペットとは違う」のですが、しかし、補助犬のことを周囲の人に知っていただくためには、まずは「ペットの犬」たちがどのような扱いになっていて、どういう課題があるのか? を知っておかなくては、補助犬に関する主張も通らないと思います。だからこそ、一般のペットの同行避難の状況や課題を知っておくことで、その上で「ペットと補助犬は違うので、補助犬の機能が果たせる同行避難の在り方」を考えることができるのだと思います。

 そして、私自身、新しい発見だったのは、「ペットの同行避難」というのは、「危険な場所から逃れて安全な場所まで避難しましょう」というアクセスの過程を指しており、その先の『避難所』等の公共の場所に、ペット同伴で入れるかどうかは、各避難所や自治体のマニュアル次第となっている事実を知ることができました。そういう意味では、補助犬の場合は「同行避難」というよりは「同伴避難」という言葉の方が良いのかもしれませんね。

 一部の、藤井先生による「障害インクルーシブ防災」のお話と、二部の山口先生の「補助犬同行避難」のお話、テーマは違うように思えましたが、とても多くの共通点がありました。それは、『地域社会とのコミュニケーション』です。人を守るためにも、犬を守るためにも、まずは地域との良好なコミュニケーションを取り、自らの存在を正しく理解してもらうこと。そしてその上で、必要な支援だったり、逆にこちらが提供できる支援の在り方などが話すことができる関係作り、全てはそこから始まるのだと感じました。

 皆さんも今一度、ご自身のコミュニティの中に、どんな方々がおられるのか? また自身がコミュニティに対して知っておいていただきたい情報は何なのか? そして、自身がコミュニティに対して提供できることがないか? 平時から考えてみては如何でしょうか。

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
 皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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