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利用者の疾患・症状に関する疑問

高齢者のてんかん発作時の安全な対応方法【介護者向け】

 「てんかん発作」は、初めて見た人はびっくりしてしまうものですね。特に介護が必要な高齢者のてんかん発作となると、介護にあたる人も戸惑ってしまうと思います。

 実際に激しく発作を起こす高齢者を目の前にすると、慌てて誤った対応を取ってしまう恐れがあります。
 どのような状況でも、利用者を安心させられるよう、高齢者にてんかん発作が起きたときの対応方法を学びましょう。

やってはいけない2つのこと

 まず、やってはいけないことが2つあります。①タオルなどを口の中に入れる、②からだを激しくゆするです。

①タオルを口の中に入れる【×】
 痙攣しているときには、「舌をかまないように、タオルなどを入れるとよい」と聞いたことがあるかもしれません。
 しかし、無理に口をこじ開けようとしたり、タオルや物を口に詰め込むことは、かえって口の中を傷つけてしまう恐れや、窒息してしまう危険があります。


②からだを揺すること【×】
 からだをビクビクさせ、動きの大きいてんかん発作が起こると慌てて「○○さん!大丈夫ですか!」と激しくからだを揺すり、声をかけてしまう人がいます。

 しかし、これもかえって危険な行為です。
 てんかん発作の際には、脳への刺激をしないようにすることが大事。そのため、強い衝撃を加えたり、からだを激しくゆすったりしないようにしましょう。

緊急対応 5つのポイント

 医師や看護師が近くにおらず、医療的な対応ができない場合、高齢者のてんかん発作時に介助者がまず心がけるのは「落ち着くこと」「むやみに高齢者を押さえつけないこと」です。
 そのうえで、次の5つのポイントを押さえましょう。

① 周囲が安全か確認する
 てんかん発作は、道路上など、危険な場所で起こることもあります。また、発作により周囲の障害物にからだをぶつけてしまいケガをするリスクもあります。
 したがって、まずは周囲の安全を確認し、安全でなければ、場所を移動したり、周りのものを整理したりして、安全な環境を確保します。

 例えば、そばにある家具やぶつかった際に落ちてきそうな食器類などを動かしたり、メガネをかけている場合は、はずしたりします。

② からだを揺さぶらず、楽な格好になってもらう
 発作を起こしているときは、からだを激しく揺さぶったり、押さえつけたりするのではなく、衣類のボタンをはずしたりベルトを緩めるなどの対応が必要になります。

③ 下あごを軽くあげる
 苦しそうにしている場合は、可能であれば、気道を確保するため下あごを軽くあげるようにします。

④ 顔を横に向け、見守る
 顔を上に向けていると、もし気持ち悪さなどから嘔吐した際に嘔吐物が気管につまり、誤嚥性肺炎が起こる可能性があります。そのため、顔を横に向け、嘔吐物が口外に流れ出るようにしましょう。

⑤ 意識が戻れば、意識の回復具合や手足の麻痺の状態を確認する
意識が戻れば、声をかけたりするなど、回復具合を確認し、医療職へ報告するようにします。


高齢者本人の状態も観察する

 後々、医師や看護師に報告する際に効果的な報告ができるよう、痙攣の継続時間意識消失・呼吸停止した時間そのときの高齢者本人の様子を観察しましょう。

 発作中は呼吸が一時的に止まってしまうこともありますが、呼吸は通常、痙攣が終了し、からだが弛緩したときに戻ります。また、もうろう状態は10~20分ほどで回復するので、それまで落ち着いて見守ることが基本です。
 その場合の観察ポイントは、唇や爪の色がピンクになっているかどうかです。ピンクになっていれば呼吸が回復しているサインです。

痙攣は長く続かないので落ち着いて対応する

 てんかん発作による痙攣は動きも激しいため、そばで見ていてもびっくりしてしまうこともあるかもしれませんが、実は通常、一分以内でおさまる場合が多いのです。そのため、慌てることなく、ここで見てきたポイントを押さえつつ、症状を観察しましょう。
 また、てんかんの持病をもつ人は抗てんかん薬などの薬を服用している場合が多いため、高齢者の服用している薬は、常日頃から確認しておきましょう。

 

 発作のたびに病院へ駆け込むのではなく、最低限の対応をしたうえで、状況を正しく伝えられるようにしましょう。特に、てんかんの持病がなく、初めて痙攣の発作が起きた場合や5分以上発作が続く場合は、医療職への報告は必須です。

本文監修:先崎章

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このページの内容は、先崎章監修・安西順子編著『ステップアップ介護 よくある場面から学ぶ疾患・症状への対応』からテーマを選定し、Web掲載に見合う形に編集したうえで転載しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。

監修:先崎章
編著:安西順子
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